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四度目の精神魔法薬
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「厄介なのは、リカットが回帰してる事は分かっていて逃げていると言う事だ」
チタワン公爵は騎士団にそう告げた。
「ホース子爵を拷問していますが、裏にいる者が掴めない事には」
団長のキャンサは答えた。
聖者の力で回帰している、と言われても普通なら信じないと思うのだが、王室騎士団は疑う事なく、チタワン公爵の言葉に従っていた。
私、ライフィットは王宮の一室に軟禁状態で拘束されていた。
地下牢ではない理由が公爵家だからではなく本来なら私も回帰の記憶があるはず、という事だと言われた。
「トライル公爵、ホース子爵からリカット様をどのようにするか、具体的に指示されたことはありませんか?」
「改めて聞かれると、全ての事がハッキリと思い出せない」
私は、何をしてしまったのだろうか。
リカットが聖者の生まれかわりとは、確かに聞いていた。
縁談が来たときは、リカットの可愛さに心が躍った。
おかしい。
サンドリオンとは、町のカフェで出会った、はず、だ。
おかしい。
いつ? 出会いを思い出そうとすると頭に靄がかかったように、その瞬間を思い出せなかった。
おかしい。
「リカットとの婚姻式の日は、すでに、破婚を、破婚を、?」
「公爵はリカット様とのご縁談に、喜んでおられました」
騎士団長のキャンサは質問をしている団員を横目で見ながら、私を射るように睨め付けた。
「サンドリオンとの出会いが、思い出せない。
言葉には出来るのだが、その場面を思い出す事が出来ないんだ」
何度も繰り返される同じ質問に、最初はハッキリと答えられていた。
だが、一日のうち数時間、もしくは数分おきに聞かれていると、疑問を覚えるようになった。
カフェって何処のカフェだ?
そもそも、公爵である私が市井のカフェに行くことはないはずだ。
子爵と顔を合わせるとしたら、公式な社交界でしかあり得ない。
サンドリオンを? リカットがいるのに?
「公爵、貴方がホース子爵との関わりが始まったのはいつですか?」
「いつ、だろう」
連日、決まった時間に聴取を受け、少し質素だがしっかりとした食事を与えられて、有り余る時間の中で反芻をしていた。
そんな日が七日も過ぎたころ、急に覚めたように記憶がはっきりした。
婚姻式の宴会をリカットは初夜を迎える準備のために席を外した時、ホース子爵からグラスを渡されて、警戒していたのに肘の辺りをチクっとした痛みが走ったのを最後に、言動や気持ちがおかしくなったのだった。
「リカット! 私はなんてことを!!」
少しずつ鮮明になる記憶に死にたくなった。
「まただ!」
頭を抱え、床を殴り始めた私を、騎士の一人が押さえつけ、キャンサ団長が漸くか、と呟いた。
「精神支配薬を最初に盛られたのでしょう。
その後は定期的に摂取させられていたはずです」
「まさに、不甲斐ない。
四度目なのに、毎回違う方法で」
一度目は飲み物であっさりと、二度目は警戒していたが屋敷の使用人を抱き込まれた。
三度目は宴会の場でサンドリオンが私に飲み物の中身をぶちまけて皮膚から摂取してしまい、四度目の此度は全てに警戒していたところで、毒針を使われた様だった。
これだけ回帰してれば先手を打って、ホース子爵を処刑したい所だが、その罪を犯す前なのでそれも難しかった。
そしてどうやら、リカットが死ぬと私たちもその場から退場する様に回帰させられ、分岐点に戻されていた様だった。
四度目なのに、止められない。
「ライフィット公爵! 記憶がもどったのだな!」
駆け込んで来たチタワン公爵に誠心誠意頭を下げた。
「はい、此度も。
申し訳ない」
「いや、回帰する度に分かっている事を避けても違う動きが始まり対処が遅れてしまう。
破婚は毎回必ず起きるのに、行動が制限されているかの様に阻止ができない」
そうだ。
何故なんだ?
裏にいる黒幕がそんな力を持っているのだろうか?
いや、魔族なら?
単純な話とは思えなかったが、ホース子爵が魔族と繋がっているのでは? と、一様にそう考えていた。
チタワン公爵は騎士団にそう告げた。
「ホース子爵を拷問していますが、裏にいる者が掴めない事には」
団長のキャンサは答えた。
聖者の力で回帰している、と言われても普通なら信じないと思うのだが、王室騎士団は疑う事なく、チタワン公爵の言葉に従っていた。
私、ライフィットは王宮の一室に軟禁状態で拘束されていた。
地下牢ではない理由が公爵家だからではなく本来なら私も回帰の記憶があるはず、という事だと言われた。
「トライル公爵、ホース子爵からリカット様をどのようにするか、具体的に指示されたことはありませんか?」
「改めて聞かれると、全ての事がハッキリと思い出せない」
私は、何をしてしまったのだろうか。
リカットが聖者の生まれかわりとは、確かに聞いていた。
縁談が来たときは、リカットの可愛さに心が躍った。
おかしい。
サンドリオンとは、町のカフェで出会った、はず、だ。
おかしい。
いつ? 出会いを思い出そうとすると頭に靄がかかったように、その瞬間を思い出せなかった。
おかしい。
「リカットとの婚姻式の日は、すでに、破婚を、破婚を、?」
「公爵はリカット様とのご縁談に、喜んでおられました」
騎士団長のキャンサは質問をしている団員を横目で見ながら、私を射るように睨め付けた。
「サンドリオンとの出会いが、思い出せない。
言葉には出来るのだが、その場面を思い出す事が出来ないんだ」
何度も繰り返される同じ質問に、最初はハッキリと答えられていた。
だが、一日のうち数時間、もしくは数分おきに聞かれていると、疑問を覚えるようになった。
カフェって何処のカフェだ?
そもそも、公爵である私が市井のカフェに行くことはないはずだ。
子爵と顔を合わせるとしたら、公式な社交界でしかあり得ない。
サンドリオンを? リカットがいるのに?
「公爵、貴方がホース子爵との関わりが始まったのはいつですか?」
「いつ、だろう」
連日、決まった時間に聴取を受け、少し質素だがしっかりとした食事を与えられて、有り余る時間の中で反芻をしていた。
そんな日が七日も過ぎたころ、急に覚めたように記憶がはっきりした。
婚姻式の宴会をリカットは初夜を迎える準備のために席を外した時、ホース子爵からグラスを渡されて、警戒していたのに肘の辺りをチクっとした痛みが走ったのを最後に、言動や気持ちがおかしくなったのだった。
「リカット! 私はなんてことを!!」
少しずつ鮮明になる記憶に死にたくなった。
「まただ!」
頭を抱え、床を殴り始めた私を、騎士の一人が押さえつけ、キャンサ団長が漸くか、と呟いた。
「精神支配薬を最初に盛られたのでしょう。
その後は定期的に摂取させられていたはずです」
「まさに、不甲斐ない。
四度目なのに、毎回違う方法で」
一度目は飲み物であっさりと、二度目は警戒していたが屋敷の使用人を抱き込まれた。
三度目は宴会の場でサンドリオンが私に飲み物の中身をぶちまけて皮膚から摂取してしまい、四度目の此度は全てに警戒していたところで、毒針を使われた様だった。
これだけ回帰してれば先手を打って、ホース子爵を処刑したい所だが、その罪を犯す前なのでそれも難しかった。
そしてどうやら、リカットが死ぬと私たちもその場から退場する様に回帰させられ、分岐点に戻されていた様だった。
四度目なのに、止められない。
「ライフィット公爵! 記憶がもどったのだな!」
駆け込んで来たチタワン公爵に誠心誠意頭を下げた。
「はい、此度も。
申し訳ない」
「いや、回帰する度に分かっている事を避けても違う動きが始まり対処が遅れてしまう。
破婚は毎回必ず起きるのに、行動が制限されているかの様に阻止ができない」
そうだ。
何故なんだ?
裏にいる黒幕がそんな力を持っているのだろうか?
いや、魔族なら?
単純な話とは思えなかったが、ホース子爵が魔族と繋がっているのでは? と、一様にそう考えていた。
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