2 / 4
四度目の真実
しおりを挟む
今回は馬車ではなく馬を手配して、途中の町で乗り捨てた。
三度目は辻馬車を使って遠い町へ行ったけど、領主に捕まった。
実家からの追手だったから仕方なかったのかもしれないけど、足跡を残さないためには移動手段をいろいろ使って他国へ行くのが一番だろうと思った。
「魔法道具を買える店は近くにありますか?」
馬を引き取ってもらう店で聞いた。
「魔法道具なら、値は張るけど長靴の看板を出してる店に行ったらいいよ」
陽気な店主がそう答えた。
「ありがとう」
多分追手が来るなら当然聞くだろうから。
長靴の店で移動用の魔道具を二つ買って、次に呪術を扱う魔族の店へと行き、買った魔道具の一つに使用後次に使うときは行き先が魔獣の巣になるよう一種のトラップである呪いをかけて貰った。
「さて、ここから前回の領主の町へ行って、この道具を置いてくるか」
小さな宝石箱を開くと、移動の魔法陣が現れて僕を生贄にした領主の元へと移動した。
「ふぅ、あの禿の寝室に置いといてやるか」
欲だらけの領主なら、必ず開くと踏んで置いておいた。
「すぐ復讐できると思うけど」
結果を待っていたら逃げられないので、すぐさまもう一つの魔道具で移動した。
「国王陛下、ご報告いたします。
私ライフィット・トライルはリカットと破婚し、こちらのサンドリオン子爵令息と再婚いたします」
国王との謁見の場に二人で赴くと、その場にはリカットの実家であるチタワン公爵家の当主がいた。
「またもや、か。
ライフィットよ、一体どう言うことなのか説明をしてもらえるか?」
陛下も理解して下さっているのか、別段驚いた様子もなく聞かれた。
「はい、サンドリオンとは未来を誓った仲でしたが、リカットとの縁談によりそれも叶いませんでした。
ですが、この度、破婚を申し渡したところ、やっと受け入れましたのでご報告に上がりました」
チタワン公爵は顔をしかめ、陛下にすがるような表情を見せた。
私はやはり同じ血筋だと思った。
「そうか、ではトライル公爵家は今代限りの家門になるということなんだな」
「は? 陛下、何をおっしゃって」
「ライフィットよ、年々子供が減っているのは理解しているであろう?
チタワン家は貴族の中で唯一王族の血筋を保っている家系であり、最も王位に近い家であることも理解しておるな?
そして、リカットは隣国の王族からも縁談を望まれている希少な子なのも知っているであろう?」
陛下が言わんとしていることは理解できるつもりだが、子を成せるのはリカットだけではなく、サンドリオンだって成せると子爵家からは報告を受けていた。
それ以外に何があると言うんだ、と私は相手が国王陛下だというのに、苛立ちをそのまま言葉にした。
「サンドリオンの生家であるホース子爵家から、子を成せると報告を受けています」
「だが、平民奴隷出の血筋を公爵家とするわけにはいかん。
家門を降格させ子爵位にするしかない。
この国の法律はそう定めておる。
公爵、侯爵、伯爵まではその血筋が確かであることとし、公爵家は必ず王家の血筋を一代おきには残すことを義務とすること、それは昔、聖者様の子孫を守るための法律であった。
また簒奪が起こらないように、聖者様が望んだ平和であり貴族としての公平さを保つためでもある」
「陛下、リカットを追跡させておりますが、未だ発見出来てません。
こやつの手のものを数人捕らえましたが、街道沿いの盗賊は失敗していたようで、足取りが掴めません。
不幸中の幸いは、ホース子爵らも掴めていたないと言うことだけで」
チタワン公爵が焦り気味に話を遮った。
だがそれより、陛下が発した言葉のほうが気になった。
「平民奴隷とは、いったい」
「そこな子爵令息だ。
子爵家は血筋に縛りはないからな」
高位貴族と下位貴族の区別があった。
そして、下位貴族にはここまで詳しく血筋の話は出ていなかった。
「まさか、サンドリオン?」
「違います、違うの、僕だってホース家の息子です!」
平民奴隷でもサンドリオンを愛す自信があった。
「大丈夫だ、サンドリオン。
私はお前がどんな血筋でも」
「ダメ! だって公爵家がなくなるなんて、僕は日陰者でもがまんするし、愛してるのは僕だけでしょ?」
抱きしめようとすると、スッと避けられた。
「そこの、茶番は結構だ。
ホース家の悪事は露呈している、すでに家門は取り潰しは確定しておる」
「え、そ、んな」
崩れ落ちたサンドリオンを支えようとすると、私も王室の騎士たちに囲まれた。
王族の騎士が数名サンドリオンを立ち上がらせ、私は剣を突きつけられてサンドリオンが後ろ手に縛られるのを見ていることしかできなかった。
「何をする!!
私が何をした!」
「リカット・チタワン令息暗殺計画に加担疑惑がある」
騎士の一人がそう告げた。
「は?」
寝耳に水としか言いようがなかった。
「貴殿はそこの者に利用されていたのだ」
「私は加担などしていない!
サンドリオンもリカットから嫌がらせをされた仕返しをしただけで!」
「リカットに破婚を持ち掛けるように唆され、その裏も理解せずことを起こしてしまったのは十分加担しておるわ!
まして、勅命を反故にするなど反逆とされてもおかしくない!
なぜここまで把握しているか分かるか?
聖者様のお力のおかげだ!
お前も本来なら四度目のはずだ!」
そこまで言われても、何が何だか理解できなかった。
「愚かにもほどがある。
毎回出遅れおって、一度目は幽閉されていたため分からなかったが、二度目は盗賊に拉致され奴隷として殺され、三度目はチタワンがリカットをどれだけ大切にしていたか理解した上で、魔獣への生贄にされた。
リカットの聖者様の生まれ変わりと言われるほどの聖力が、どれほど貴重だと思っておるのだ!
そして、今この時でさえリカットの命が狙われているというのに!」
陛下は立ち上がって、総力をあげてリカットを保護しなければと、騎士たちを動かしていた。
意味が分からなかった。
「聖者様の血を継ぐからこそ、リカットと同じように回帰しているんだ」と言われても分からなかった。
三度目は辻馬車を使って遠い町へ行ったけど、領主に捕まった。
実家からの追手だったから仕方なかったのかもしれないけど、足跡を残さないためには移動手段をいろいろ使って他国へ行くのが一番だろうと思った。
「魔法道具を買える店は近くにありますか?」
馬を引き取ってもらう店で聞いた。
「魔法道具なら、値は張るけど長靴の看板を出してる店に行ったらいいよ」
陽気な店主がそう答えた。
「ありがとう」
多分追手が来るなら当然聞くだろうから。
長靴の店で移動用の魔道具を二つ買って、次に呪術を扱う魔族の店へと行き、買った魔道具の一つに使用後次に使うときは行き先が魔獣の巣になるよう一種のトラップである呪いをかけて貰った。
「さて、ここから前回の領主の町へ行って、この道具を置いてくるか」
小さな宝石箱を開くと、移動の魔法陣が現れて僕を生贄にした領主の元へと移動した。
「ふぅ、あの禿の寝室に置いといてやるか」
欲だらけの領主なら、必ず開くと踏んで置いておいた。
「すぐ復讐できると思うけど」
結果を待っていたら逃げられないので、すぐさまもう一つの魔道具で移動した。
「国王陛下、ご報告いたします。
私ライフィット・トライルはリカットと破婚し、こちらのサンドリオン子爵令息と再婚いたします」
国王との謁見の場に二人で赴くと、その場にはリカットの実家であるチタワン公爵家の当主がいた。
「またもや、か。
ライフィットよ、一体どう言うことなのか説明をしてもらえるか?」
陛下も理解して下さっているのか、別段驚いた様子もなく聞かれた。
「はい、サンドリオンとは未来を誓った仲でしたが、リカットとの縁談によりそれも叶いませんでした。
ですが、この度、破婚を申し渡したところ、やっと受け入れましたのでご報告に上がりました」
チタワン公爵は顔をしかめ、陛下にすがるような表情を見せた。
私はやはり同じ血筋だと思った。
「そうか、ではトライル公爵家は今代限りの家門になるということなんだな」
「は? 陛下、何をおっしゃって」
「ライフィットよ、年々子供が減っているのは理解しているであろう?
チタワン家は貴族の中で唯一王族の血筋を保っている家系であり、最も王位に近い家であることも理解しておるな?
そして、リカットは隣国の王族からも縁談を望まれている希少な子なのも知っているであろう?」
陛下が言わんとしていることは理解できるつもりだが、子を成せるのはリカットだけではなく、サンドリオンだって成せると子爵家からは報告を受けていた。
それ以外に何があると言うんだ、と私は相手が国王陛下だというのに、苛立ちをそのまま言葉にした。
「サンドリオンの生家であるホース子爵家から、子を成せると報告を受けています」
「だが、平民奴隷出の血筋を公爵家とするわけにはいかん。
家門を降格させ子爵位にするしかない。
この国の法律はそう定めておる。
公爵、侯爵、伯爵まではその血筋が確かであることとし、公爵家は必ず王家の血筋を一代おきには残すことを義務とすること、それは昔、聖者様の子孫を守るための法律であった。
また簒奪が起こらないように、聖者様が望んだ平和であり貴族としての公平さを保つためでもある」
「陛下、リカットを追跡させておりますが、未だ発見出来てません。
こやつの手のものを数人捕らえましたが、街道沿いの盗賊は失敗していたようで、足取りが掴めません。
不幸中の幸いは、ホース子爵らも掴めていたないと言うことだけで」
チタワン公爵が焦り気味に話を遮った。
だがそれより、陛下が発した言葉のほうが気になった。
「平民奴隷とは、いったい」
「そこな子爵令息だ。
子爵家は血筋に縛りはないからな」
高位貴族と下位貴族の区別があった。
そして、下位貴族にはここまで詳しく血筋の話は出ていなかった。
「まさか、サンドリオン?」
「違います、違うの、僕だってホース家の息子です!」
平民奴隷でもサンドリオンを愛す自信があった。
「大丈夫だ、サンドリオン。
私はお前がどんな血筋でも」
「ダメ! だって公爵家がなくなるなんて、僕は日陰者でもがまんするし、愛してるのは僕だけでしょ?」
抱きしめようとすると、スッと避けられた。
「そこの、茶番は結構だ。
ホース家の悪事は露呈している、すでに家門は取り潰しは確定しておる」
「え、そ、んな」
崩れ落ちたサンドリオンを支えようとすると、私も王室の騎士たちに囲まれた。
王族の騎士が数名サンドリオンを立ち上がらせ、私は剣を突きつけられてサンドリオンが後ろ手に縛られるのを見ていることしかできなかった。
「何をする!!
私が何をした!」
「リカット・チタワン令息暗殺計画に加担疑惑がある」
騎士の一人がそう告げた。
「は?」
寝耳に水としか言いようがなかった。
「貴殿はそこの者に利用されていたのだ」
「私は加担などしていない!
サンドリオンもリカットから嫌がらせをされた仕返しをしただけで!」
「リカットに破婚を持ち掛けるように唆され、その裏も理解せずことを起こしてしまったのは十分加担しておるわ!
まして、勅命を反故にするなど反逆とされてもおかしくない!
なぜここまで把握しているか分かるか?
聖者様のお力のおかげだ!
お前も本来なら四度目のはずだ!」
そこまで言われても、何が何だか理解できなかった。
「愚かにもほどがある。
毎回出遅れおって、一度目は幽閉されていたため分からなかったが、二度目は盗賊に拉致され奴隷として殺され、三度目はチタワンがリカットをどれだけ大切にしていたか理解した上で、魔獣への生贄にされた。
リカットの聖者様の生まれ変わりと言われるほどの聖力が、どれほど貴重だと思っておるのだ!
そして、今この時でさえリカットの命が狙われているというのに!」
陛下は立ち上がって、総力をあげてリカットを保護しなければと、騎士たちを動かしていた。
意味が分からなかった。
「聖者様の血を継ぐからこそ、リカットと同じように回帰しているんだ」と言われても分からなかった。
12
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説
婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました
ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。
愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。
*****************
「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。
評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。
※小説家になろう様でも公開中です。
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…
東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で……
だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?!
ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に?
攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!
囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息
蔑まれ王子と愛され王子
あぎ
BL
蔑まれ王子と愛され王子
蔑まれ王子
顔が醜いからと城の別邸に幽閉されている。
基本的なことは1人でできる。
父と母にここ何年もあっていない
愛され王子
顔が美しく、次の国大使。
全属性を使える。光魔法も抜かりなく使える
兄として弟のために頑張らないと!と頑張っていたが弟がいなくなっていて病んだ
父と母はこの世界でいちばん大嫌い
※pixiv掲載小説※
自身の掲載小説のため、オリジナルです
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる