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別室で国王陛下が指示をして、僕らが通されたのはかつて婚約者だった、故第三王子の接見室だった。
伯父様のグラウト侯爵も含め三人、つまり護衛として人を連れてこれなかった。
「この部屋、あの頃は何も考えず、ただただ嫌って気持ちしかなかったけど、今考えると何度か殺されかけてたよね……、パパが秘密裏にロッシ家の護衛を付けてくれてたんでしょ?」
「ロッシ家の生業を知らない貴族はいないが、その主を知る者は殆どいないからね」
ロッシ家当主のセバスチャンを知るものがいない、と言う意味と、そのロッシ家当主が主と決めた者が誰かを知らない、と言う二つの意味だった。
「彼がその護衛?」
僕はその時、お茶の支度をして部屋に入ってきた侍従に向かってそう言った。
「あぁ、そうだ。
王弟へと寝返ったようだがな」
茶器を乗せたワゴンを押す手が震えていた。
「セバスは広間だしな……、では事後に報告を聞くしかないな」
伯父様は侍従を後ろから拘束し、口を無理やり開かせた。
「く!」
パパはその手を侍従のワゴンへ伸ばし、その侍従の口へとお茶を流し込んだ。
「うぐっぁぁ!」
すぐにその口から血を吐いて死に至った。
「これは、アデレイドが盛られた毒と同じか。
もはや隠すつもりもない、と言うことか」
「まったく呆れるな。
陛下も同じ穴のムジナだったか……、私かレイラントか、もしくはラグの誰か一人でもといったところか」
「いや、ただの警告だろう。
こんな事で私たちを殺せるとは思ってないだろうし、大体こんなお粗末な仕込みで殺せるはずがないって」
パパと伯父様は軽口を交わすように、相手の出方を言いながら侍従の死体を隅の方へと押しやった。
「まだいろいろな国で復興できていない箇所があるというのに、この国の王族は本当に情けない」
世界樹が枯れたことで大地が落ちたりといろいろあった。
それはこの世界のすべてに影響を出していた。
そして、その原因は僕だ。
「あ、兄上、その、件については」
「伯父様、えっと」
僕が蒼月の瞳だって言ってなかった。
「レイラントもラグも……、他の国で天変地異を経験してきたんだろうから、余計にこんな王族はどうかと思わないか?」
この世界の天変地異を招いてしまったのは僕だ。
「伯父様、僕が」
「ラグ! お前のせいじゃない」
僕の言葉を遮ってパパが発した言葉に、伯父様は何かを感じ取った。
そりゃそうだ。
僕のせいじゃないって言ったら、僕がやったって言ってる様なものだ。
「パパ、それじゃ言ってるようなもんじゃん」
「え、あ!」
こんな死体が転がってるような緊迫したタイミングで、頭を抱えるしかなかった。
パパって緑頭要素があるのかよ!
伯父様のグラウト侯爵も含め三人、つまり護衛として人を連れてこれなかった。
「この部屋、あの頃は何も考えず、ただただ嫌って気持ちしかなかったけど、今考えると何度か殺されかけてたよね……、パパが秘密裏にロッシ家の護衛を付けてくれてたんでしょ?」
「ロッシ家の生業を知らない貴族はいないが、その主を知る者は殆どいないからね」
ロッシ家当主のセバスチャンを知るものがいない、と言う意味と、そのロッシ家当主が主と決めた者が誰かを知らない、と言う二つの意味だった。
「彼がその護衛?」
僕はその時、お茶の支度をして部屋に入ってきた侍従に向かってそう言った。
「あぁ、そうだ。
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「く!」
パパはその手を侍従のワゴンへ伸ばし、その侍従の口へとお茶を流し込んだ。
「うぐっぁぁ!」
すぐにその口から血を吐いて死に至った。
「これは、アデレイドが盛られた毒と同じか。
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「まったく呆れるな。
陛下も同じ穴のムジナだったか……、私かレイラントか、もしくはラグの誰か一人でもといったところか」
「いや、ただの警告だろう。
こんな事で私たちを殺せるとは思ってないだろうし、大体こんなお粗末な仕込みで殺せるはずがないって」
パパと伯父様は軽口を交わすように、相手の出方を言いながら侍従の死体を隅の方へと押しやった。
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そりゃそうだ。
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「パパ、それじゃ言ってるようなもんじゃん」
「え、あ!」
こんな死体が転がってるような緊迫したタイミングで、頭を抱えるしかなかった。
パパって緑頭要素があるのかよ!
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