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しおりを挟む真正面の壇上の玉座には国王が座り、その両隣に王妃と王弟が座っていた。
その座る位置って正しいのか? と余計な事を考えながら膝をついて礼を取った。
裾が広がる花びらのような裾と、羽根の蒼い刺繍が床にふわりと広がると、ため息が漏れた。
「王国の太陽にご挨拶いたします」
パパが僕がしなければいけない挨拶を先取りしてしまった。
それって大分不敬だと思うんだけど。
「我が息子は病弱な為遅くなりました事、申し訳ございません。
未だ病弱なため、ご挨拶が済み次第引上げさせていただきたいと思います」
あー、それが言いたかったのね。
「う、うむ、そうか。
だが、第三王子の婚約者だった事もあるのだ、知らぬ仲でもあるまい。
王宮に泊って行けば」
「いいえ、この子の飲む薬は簡単に手に入る物でもありませんし、また、保存がきかないのです。
この子の成長した姿を見て頂き、アデレイドの面影を感じて頂ければ」
国王は母上が毒殺された事は当然知っているはずだし、その犯人が王弟じゃないかって事も本当は分ってるんだろうって言うこちらの推理なだけで、取り敢えず母上に似てる僕が国王たちを揺さぶるつもりでいた。
「レイラント・デ・ドアイスが嫡男、ラグノーツ・デ・ドアイスがご挨拶いたします。
長い間療養していた為、田舎者ですのでこのような華やかな場は、気後れしてしまいます。
どうか、ご容赦ください」
敢えて、嫡男、と宣言した。
「ラグノーツ令息、お兄様方を差し置いて」
「既に各々が爵位を頂いておりますし、ドアイスの名も継いではおりませんので、嫡男で正しいと存じますが。
御王弟殿下」
長男がいなくなったから、次男が格上げされて長男になった、みたいな言い方をパパがしたけど、戸籍みたいな家系図に、従兄弟たちは入っていなかった。
しっかり、王弟殿下の血縁として記載されていたのは、将来王弟が国王になった時、王太子とかその辺りに引き立てる為だろうけど。
貴族の家系や王族の家系は王宮で管理されるから、王弟なんかが絡むと抹消だろうが何だろうか勝手にできちゃうって事で、こんな穴だらけなんだと容易に想像出来た。
「な! 不敬だぞ! レイラント卿!」
「はは、何をおっしゃってるのですか? 王弟殿下。
そういえば、元兄嫁がお世話になってるとか、大変申し訳ありません。
あの方は実家へ帰らせましたので、今後はグリウス伯爵家はリチェル・パーマー令嬢との婚姻無効を宣言いたします」
このデビュタントと言う大舞台で、婚姻無効を宣言した。
「それはそちらの事情だろうが、このような場で無効などと、子供がいる以上無効ではなく離婚では無いか」
白い結婚ってやつで争ってる訳じゃないからねぇ。
「最初から不貞を働いていた上に、不義の子を産んだとなれば、離婚ではグリウス家に傷が付きます故」
聞き耳をを立てるまでもなく、大広間に響き渡るパパの声は居合わせた諸侯全員が聞くはめになった。
「不貞に、不義の子?
相手は?」
「先ほど、王弟にお世話になってるって」
「私、先日王宮にいらっしゃるのを見かけましたわ」
「頻繁にいらっしゃるって侍女が言ってたわね」
そこで導き出された答えは、「王弟殿下の子」だった。
本来なら御落胤で一応僕たちより立場が上になるけど、今回の場合貴族の家系としてグリウス家に記載がある以上書き直したとて、不義の子である事と同時に既に王弟殿下の血縁として従兄弟たちがいるから、言い換えれば不要な子達だった。
「他の方々のデビュタントを台無しにしてしまい申し訳ない。
後日、レイラント家とグリウス家で改めてお詫びの会を開きますので、その時をデビュタントとして頂く事もよいかと」
伯父様が緊迫する王弟殿下とパパの間に割って入って、置き去りになってしまったデビュタントの子らに宣言した。
確かに、グリウス家なら王宮よりは小ぶりだけど、十分な広さに庭園も素晴らしいのでそれも良いかもしれないと思った。
「パパ、走りすぎだって」
「すまん、顔見たらどうにも許せなくてな」
伯父様の指示でデビュタントは解散、これって王宮の催しなのになぜかグリウス侯爵主導で収拾を付けていた。
「レイラント辺境伯、別室で話し合おう」
緊張した表情ともいえるが、どこかスッキリした国王が僕たちを別室へと促した。
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