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しおりを挟む未了魔法に声を上げたのはグリウス伯父様以外の大人たちだった。
お婆様までが僕を抱きしめながら、「あの女」と呟いていた。
「もし、伯母様が魅了魔法を使えたとしたら、まずはパパに使うんじゃないですか?」
王弟はお母様が邪魔だった、伯母様はパパをどうにかして伴侶にしたかった、なら、何をおいてもパパに魅了魔法を使うと思うんだ。
「魅了魔法って、そんなに簡単じゃないのよ。
条件がいろいろ必要なはずなの。
廃れていった魔法って言うのかしら、例えば数か月とか数年を要するなら、誰も使わなくなると思わない?
その間に相手は他へ行ってしまう可能性のほうが高いもの」
「魅了魔法ってそんなめんどくさいの?」
「あぁ、そうだ。
掛ける者によっては条件も多少変わるし、不確かなものであるとしか言えない。
だが、今回のグリウス兄上の様子を見ると魅了魔法だろうと思う」
パパがそう言うけど、伯父様は自分が好きでそうやってる気がしなくもないけどな。
「伯父様は伯母様の事を愛してるんですか?」
「私は、リチェルが、あ、あ、」
本当に魅了魔法にかかってるなら、解呪ができるのではないだろうか、と。
「やってみるけど、解呪を」
僕はイメージをして、魅了魔法から解放されるグリウス伯父様を想像した。
派手なエフェクトがあるわけじゃなかったけど、伯父様の表情がびくびくしたような、自信の無いさっきまでの表情とは一変していた。
「グリウス、どうだ?」
お爺様が恐る恐るその肩手を置いて、振り向かせた。
「父上、母上、レイラント、それにラグノーツ、今まで何かの劇を見ているようだった」
言葉を、いや、その情景というか記憶を辿るように、靄がかかったように生活していたことを順に話し始めてくれた。
「お前との婚姻を求められて、私が代わったあたりはまだ、何とも無かったんだ。
彼女が出仕している私に会いに、王宮へ来るようになった辺りから、判断が曖昧になって行った気がする」
ぽつり、ぽつりと話す表情は疲れたような、諦めたような、何とも言えない表情だった。
「王宮へ来るものじゃない、と何度も注意していたんだ。
私の職場ではあるが、王族もいる、高位貴族も多く働いている、そんな中で、彼女が礼儀を弁えてるとは思えなくて、かなり強く注意をしたんだ。
その時あたりから、どうも判断が怪しくなっていったと思う」
王宮に出入りしている口実がなくなるのが嫌だった?
「それに、王宮に来ればレイラントが騎士として訓練をしているから、偶然を装って接近するのではないかとも思っていた」
「それは、出入りしてる間に王弟と接触した可能性があるな」
そうだ、接点が見えて来なかったけど、これなら王弟が伯母様に魅了魔法か洗脳みたいな魔法を教えたのでは、という仮定が成り立った。
「リチェルも、もしかしたら王弟に操られて」
「そこは自発的だと思うぞ!」
パパがかぶり気味に否定した。
それほど、嫌な人なんだ。
「まぁ、そうだな。
かなり、ひどかったし」
「私たちだって、あの生垣事件で傷が出来なければ嫁になんて考えなかったわ!」
「息子の子供だと思って、我慢しておったが孫、嫌どこの子供か分からんあの子らにはほとほと手を焼いておるしな」
托卵の可能性が高すぎて、不満しか出なかった。
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