モブですけど!

ビーバー父さん

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「まさにその通りだ」

 力なく笑う伯父様にちょっとだけ申し訳なく思った。
 パパとお母様の為にしてくれた事ではあるから。

「何でそのリチェル伯母さんを排除しなかったんですか?」

 確信をついて聞いてみると、呆れた貴族の事情だった。
 それこそ、僕の第三王子との婚約破棄の反対版。

「えーっと、小さい頃から侯爵家へ出入りしていたリチェル・パーマーって男爵令嬢が、パパを追いかけ回してるうちに転んで行方不明になった、と。
 まぁ生垣の中に転がって出て来れなくなってたって事だけど、敷地が侯爵家だったから、侯爵家にキズモノになった責任を取れと。
 嫁になるならパパの嫁が良いと。
 だがしかし、パパは既に騎士として家を出る事が決まっていたので、パーマ男爵の申し入れは受け入れられず、侯爵家長男である伯父様に話が流れた、ところがリチェルはそれを良しとはせずパパを追いかけて、近づく人たちへ嫌がらせ果ては犯罪まがいの事が起きた、と。
 ツッコミどころ満載だけどさ。
 だからって何で伯父様がそこで嫁に貰っちゃうんだよ」

「可愛い所もあったんだよ」

「思い通りにならないからって嫌がらせしたり、自分悪くないって発想がもう終わってるでしょ」

 そう言うと、すっかりしょげた所に、更にさっきの毒の話をすると手が震えていた。

「ちょっと治癒魔法掛けるね」

 僕が魔法を使うと、やはり微量の毒が蓄積していて、言葉がしっかり出せなくなっていたり手が震えるようになっていたのが、すっかりなくなってしまった。

「そう、か。 
 毒を盛るまで私が憎かったのか」

「その前に人としてだろ」

 パパもツッコんだ。

「でもさ、今日はパパが来るから家にいたかったんじゃないの?」

 パパを未だに追い掛け回してるなら、絶対待ち構えてそうなんだけど。

「あ、ラグ様。
 その事でしたらこちらの使用人が全て教えてくださいました。
 まずはこちらの侯爵様を毒殺し、旦那様を犯人に仕立て上げた所で、侯爵夫人が救世主の様に現れて恋に落ちると言う寸法だったそうです」

「なんだ、その陳腐な筋書きは」

「一度は排除できたけど、その座には収まれなかったとも言っていましたね」

 その言葉を聞いて、パパと僕の顔色は変わった。

 もしかして、王弟がリチェルに絡んではいないだろうか?
 従兄弟にあたるのは、王弟の子では無いのだろうか? と。

「僕、怖い想像しちゃった」

「あぁ、パパもだ」

 僕たち二人の様子が一転したのを訝し気に見る伯父様が、まさか、と口をついて言葉が漏れた。

「アシッド、セバスに毒の解析をさせてくれ。
 アデレイドが使われた毒かどうか」

 蓄積される毒。
 だけど一度に大量に使えば、当然痕跡が残る。
 
「兄上、もしかして。この家には王弟が来られたことがおありですか?」

「い、いや、来たことは無い」

 だが、とその後に言葉が続いた。

「私が出仕している時、頻繁に王宮へリチェルが足を運んでいた。
 私への面会だと思っていたが、その後、王弟と会っていた可能性はなくもない」

「それはいつ頃から?」

「上の子が出来てからはその頻度は少なくなった」

「上の子って、いくつですか?」

「今年十三歳になる」

 お母様が無くなったのは僕が二歳くらいの頃だったはずだ。

「僕が二歳になる頃って事だよね」

 誰が手引きをしたのか、誰によって盛られたのか。
 誰がお母様を亡き者にしなければならなかったのか。
 ここにきて、漸く手がかりが掴めたのだった。



 
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