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しおりを挟む「ラグ、ごめんねぇ」
うわーんって口で言いながら、オネェの神様は僕に抱きついてきた。
「うーん、良いからさ、取り敢えず神様してよ」
「了解、ちょっと油断しただけだから!」
ハートが飛んでいそうな声音で、どう油断したらこんな事になるんだと思いながら、またねん、と消えて行った。
「あ、あの、ラグ様、アレは一体」
「ん、ああ、一応この世界の神様。
ユグドラシルの犠牲者かな」
それだけ告げると、思考が追いつかないらしく誰もそれ以上の言葉を発する事はなかった。
腹に穴が開いた赤ん坊は枯れ木の姿へと変貌して、野ざらしにされ自然の中で朽ちて行った。
「ほんと、これで最後にしてくれ」
多分パパの実家の侯爵家の領地だとは思うけど、何かあっても嫌なので取り敢えず地中深く埋めてしまう前に、ちっかり枯れ木を焼いて二度と復活出来ない様にした。
「さぁ、休憩は終わり。
パパたちには内緒にしてね」
セバスチャンにもアシッドにも、緑頭にも箝口令を敷いた。
白亜のお城、と言うかお屋敷が見えると、パパは先にセバスチャンを向かわせて実家への帰還を知らせた。
「ラグ、もしかしたら、無いとは思うけど、嫌な思いをしたら言ってくれ」
僕を膝に乗せて、馬車の揺れの中でそう言った。
「えっと、お爺様とお婆様はパパとうまく行かない感じ?」
「違うよ、既に長男である兄上が侯爵家を継いでいるし、その子供達も優秀だと聞いている。
ただ、兄上は私がアデレイドと一緒になって公爵家を作ったことが、気に入らないと思うんだ」
「でもそれはお母様の家がそうだっただけで……」
「うん、公爵ではなく伯爵とか、もっと下位の貴族ならって思わなくはないんだ」
「だって、それは、王弟があんな兄上たちを」
「そうだ、アデレイドは王室の犠牲になったんだ。
でもね、私はラグが生まれてくれて、本当に幸せだったよ」
なんか変なフラグが立ちそうだから、そんなこと言わないで欲しい。
「デビュタントでデビューしたら、パパはどうするの?」
既に辺境伯にはなってるけど、領地が無いって事は流浪の民みたいじゃないか。
「もちろん、ラグとずっと一緒さ」
満面の笑顔で言ってるけど、僕一応ゲオルグと結婚する予定なんだけど?
「あの、結」
「君の為にまずはデビュタントでデビュー、そして辺境伯の令息としての地位の確保、そこから王弟のバカ息子どもに鉄槌を、って言うのがパパの生活設計」
いやいや、それ生活設計じゃないから!
「僕も、お母様を死に追いやった犯人を捕まえたいし、従兄弟たちを許したくない」
結構酷い事をされて来た。
第三王子の婚約者だった時は、王子の前で泥を投げられたり転ばされたり、破棄してからは顔の傷をバケモノだと囃し立てられた。
傷は自分で治さずにいたから良いんだけど、食事に虫を入れられたり、毒はどうだったんだろう?
セバスチャンが僕を黒魔法で守っていたからもしかしたらセバスチャンには影響があったのかもしれない。
そうやって考えてるうちに、門の前に立つセバスチャンが見えて来た。
「? どうして門の前?」
普通なら開門して迎え入れるはずなのに。
「兄上がするとは思えん。
奥方か、その子供らか」
「歓迎はされてないみたいだね」
「いや、父上と母上は数日前に出した手紙の返事にも、物凄く会いたがっていたから、そんなはずはない」
セバスチャンが馬車に駆け寄って来ると、僕たちに辺境伯としての訪問なら受けいれるという返事で、セバスチャンとしてはパパの実家だからと僕たちに判断をして欲しくて待っていたようだった。
「辺境伯として、か」
要するに、実家じゃないからね、滞在とかしないでね、的な返事。
うーん何だか面倒な事になりそうだった。
応援ありがとうございます!
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