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しおりを挟む「僕の魔力では生きられないって言っただろ。
もう質が違ってるから、お前の中に取り込めずに流れ出てるんだよ。
かろうじてあった残りカスの様な世界樹の魔力で生きてるって理解しなよ」
やっと思い当たったのか、ユグドラシルのジジイの顔色が変わった。
「ラグ様、緑頭が!」
「大丈夫、今僕の魔力を通す」
意識を覚醒させながら、緑頭が体をふらつかせた。
「ラグ、私は」
「大丈夫だよ、僕らをユグドラシルから守ってたんだろ?」
微笑みながらそう言うと、緑頭はホッとした表情で僕を見上げて、倒せなかったと呟いた。
「精神操作されてしまっていたみたいだな」
「そうだ、赤子を守れと強く言われ、でも、違うと抗っていたが難しく、アレを外に出さないようにするしかできなかった」
緑頭は自分を犠牲にして赤ん坊のユグドラシルを守っていたんでは無くて、むしろ結界を作って引き止めていた訳だ。
「問題いないよ。
アレは魔力が無くて、もう虫の息だ。
それも気づいていなかったみたいだから、精神操作に持ってる魔力を注ぎ込んだんだろうな」
細々と生き永らえる計画だったら、僕らの前に姿は出さなかっただろう。
頭悪いな。
「さ、ほっといてもこいつは枯れるだけだから、行こう。
お前の好きなナッツのお菓子もつくってあるから」
ナッツと聞いて急にしゃっきりした緑頭が、ユグドラシルの事など微塵も気にしていなかったかの様に、勢いよく飛びあがった。
「ラグ! ラグ! 早く!」
まったく、中身は相変わらずだな。
「わしは世界樹じゃぞ!
世界樹が無くなれば困るのはこの世界じゃぞ!
あ奴も逃げたのだ! 神は死んだのだ!
この世界を統べるは、この世界樹であるユグドラシルただ一人じゃ!!」
去ろうとした後ろから、ジジイの顔をした赤ん坊が不愉快な妄言を吐いた。
振り返りながら、怒気を乗せて睨み据えた。
「神が、死んだだと?」
「そ、そうじゃ、わしが食い尽くしてやったわ!」
ピンクの髪色はオネェの神様のだったか。
「神様は元々肉体がある訳じゃなかったんだから、食い尽くしたって事はお前の中にいるってことだよな。
魔力が吸えないのも、神様の抵抗があるからだろ?」
なんだってオネェの神様はこいつに取り込まれちゃったんだろうか?
まぁ、アイツの一部から出来たみたいな話はしてたから、抗えない何かがあったのかもしれないけど。
見たくも無いけど、ジジイの魔力の流れをスキャンしてみると、明らかに異質な力の流れが渦巻いていた。
あー、これがそうか。
「んー、ちょっとばかし穴を開けさせて貰おうか」
体の中心部、丹田とかそんな感じで力が集まる部分、つまりお臍に鋭く練った魔力のキリで穴を開けた。
ジジイは案の定、抵抗出来る魔力もなく簡単に穴が開いた。
「ぎゃぁぁぁ!!」
まぁ、それなりに痛いよね。 多分。
そして開けた魔力をそのまま中に侵入させて、異質な力を引きずり出した。
ズルズルズル!
「やめ、やめろ!」
「抵抗もできてないじゃん。
お前はやり過ぎたんだよ」
「死にたくない、しにたくないんだ!」
世界樹に死ぬって観点があるとは驚きだった。
「ほら、神様、ちゃんとしてよ」
引きずり出した異質な力はイメージカラー通りのパステルピンク。
それが徐々に形になっていった。
「え? ラグ様、神様が?」
セバスチャンとアシッドは今まで何してたんだってくらい、蚊帳の外だったのに神様の形が出来始めると語彙力もいつもの冷静さも失くなっていた。
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