モブですけど！

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「あれ、もしかしてパパの実家の侯爵邸じゃないかな？」

　急に開けた場所に出ると、まだまだ距離はあるけど、白亜の建物が見えた。
　育った家に比べると、すごくシンプルな作りと言うか機能的な作りの白い壁とタイルで作られた、お屋敷と言う言葉が正しいと思えるものだった。

　建物の建っている場所まではまだ大分距離がありそうだったど、森を抜けたところで後続を待つことにした。

「待ってる間に、コカトリスを調理しちゃおうかなぁ」

　ミワがゴクリと喉を鳴らした。

「ラグ様、久しぶりに食べられるのですね」

「うん、最近作って無かったからねぇ」

　エリは僕の周りをウロウロしながら、期待に満ちた目で見て来るし。

「竈を作って、煮炊きできるようにしておこうか」

　インベントリには鍋とかも入ってるけど、火が熾せるところが無いと何も始まらないし。
　火力調整も出来るようにして、大きめの竈を二個ほど作ると、コカトリスを出して先ずはスープを取るためにゆで始めた。

　出汁を取るためにはあまり沸騰させずに、余計な脂や灰汁を丁寧に取り除いて、白濁したスープが出来上がると、香辛料として、棗を投入し塩で整えたりとなんちゃって参鶏湯を作った。
　棗が無ければ無かったで、特に問題は無いんだけどね。
　だって元々なんちゃってなんだもん。
　
　次にゆでたコカトリスを部位に分けて、半分を塩を軽く振り、残りの半分を数分程度タレに漬け込む。
　こちらで見つけた醤油と砂糖、それにショウガにニンニク、そして、ちょっと手間だけど、ニラを使うんだ。

　串にさして焼き鳥を完成させるけど、タレに漬けたお肉を焼き鳥状に串に刺して、その上から肉をニラで巻いていく。
　これ昔、うなぎ屋さんで食べたんだ。
　背ビレをニラで巻いて、うなぎのタレで焼いたのは、酒のつまみに最高だった。
　それが美味しくて、鶏肉でもやってみたんだ。
　そうしたら、うなぎとは違うけど、ニラで巻いたお肉が旨くて、ビールがすすんだ。

　素人でも刺しやすいように、一度茹でておくと楽だし、火加減が難しければ、一度火が通してあるからそこまでこだわる必要が無い。
　少しだけ焦げ目がつけば立派な焼き鳥になる。

　それだけじゃぁただのつまみだから、しっかり満たせるようにさっき取った出汁スープにマイマイを投入して雑炊を作っておく。
　鶏出汁で作る雑炊はさっぱりしたレモンを少し加えておく。

　強行軍で一気に森を駆け抜けて来るから、体に優しいけどタンパク質をたっぷり摂れるものにした。
　本当ならお酒でも出したいところだけど、ここがパパの実家の領地なのか分からない以上は、長居も出来ない。
　
　マイマイは移動途中でも食べられるように、おにぎりの分も焚いて鶏のほぐし身をワサビ醤油で和えた物を具にしたり、漬け込んでおいたタレを一度沸騰させてから、焼きおにぎり用に塗って焼いた。

「う～ん、野菜がないなぁ。
　でもここで野営するわけじゃないから、夜まで我慢してもらうか」

　炭水化物と鶏肉ってどこのアスリートだよ、って自分にツッコミを入れてしまった。




　大体の支度が終わるころ、パパたちの乗った馬車や騎士団や船長たちを乗せた馬、それに緑頭と赤ん坊を乗せた馬車も到着した。