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しおりを挟む口やら目やらに入った土や埃なんかをペッペッてやりながら、エリを止めて僕は風と水魔法を混ぜ合わせて皆んなの体と服を綺麗にした。
「エリはドラゴンだったって思い知ったよ」
初めて見た時は出来の悪いエリマキトカゲから、名付けてからの変化があっという間の人化だったから忘れてたけど、コウモリっぽい羽根を持ってたって言うのを今更思い出した。
「マスターのおかげでアースドラゴンになれましたから」
照れくさそうに笑うエリに、そういやそうだったと告げてからヒューゴにはこれで道が出来るな、と向き直った。
「ラグ、ここは他の領地になるから、勝手に道は作れないよ」
「え、パパそれってここの領主にとっても良いことなんだし、道を作った方がお互いにとっても利益にしか」
「無償で道を作るのかい?
事業として隣り合う領地の者たちが考える事だ。
それに交易と言う意味でも、勝手に道を作ってはダメだ。
人が出入りしやすくなると言う事は、それだけ良くない人も入り込むと言う事なんだよ」
そっか、警備の面で防衛がどれだけ出来るか分からないのに、出入りしやすい道を作ったらダメなんだ。
「ならば、私たちが通った後は同じように戻すようにしましょう。
旦那様のご実家の侯爵領の方は道を作りますが、この領地との境には結界を作ってはいかがでしょう?
あからさまな塀などは余計な警戒心を産みますが、結界で幻術をかけてしまえばそこまで気にしないのでは?」
エリが至極真っ当な意見を言った。
「マスターならそれが簡単にできるではないですか」
ドヤ顔まではいかないけどすっごく得意げにエリが言うと、周りはぬる温かい笑顔で見守っていた。
「エリ、分かったけどなんでそんなに胸張ってるんだよ」
「だってマスターですよ? マスターが出来ない事なんて無いし、私のマスターなんですよ!」
理屈が分からん。
「あー、まぁエリの言い分としては、ラグを自慢してるって事だろ?」
ヒューゴが苦笑いしながら付け足すと、違うと言ってさらに胸を張った。
「言い分では無いです。
事実ですから!」
フンスって感じで鼻息荒く言い切ってるし。
「エリの提案でやってみよう」
森の奥に感じる気配もきっとエリが先に見つけてくれるだろうし、道を作りながら行き通りながら壊すって言うのも面白そうだしね。
一時間程休憩した後、設営した時と同じく手際よく片していった。
隊列を組んで出発準備をしている所で、僕とエリは先に道を作るべく一足先に飛び出した。
軽々と僕を抱えて空を、いや地面すれすれを縫うように飛ぶエリに今までにはない頼もしさを感じながら、残して来たミワとアモの事を考えた。
ミワならば鋭い嗅覚で何かを見つけたり察知することも出来るだろうけど、エリとアモが感じてる気配は辿れないだろうし、アモは僕が名づけをしなかった事でニーズヘッグになれなかった分、ミワよりその能力が若干劣っているように感じた。
それは本人も思っている部分らしく、時々苛立ちと焦燥感でエリを避けミワを避ける事があった。
たまに緑頭がその様子を僕に知らせたりもしてくれたけど、どうにもならない部分で本人が折り合いをつけてくれることを願っていた。
それはエリも同じだった。
「マスター、もし、この先にいる者が同じドラゴンだとしたら、また名付けますか?」
灌木の間を飛びながらそんな話を振って来た。
「いや、ドラゴンが世界樹であるユグドラシルを気にする必要はもうないだろ?
なら自由に生きれば良いと思ってる。
守護者はあくまで守護者で監視する者ではないからな」
「アモが今の立場に焦りを感じているようなので、もし他のドラゴンがマスターに名づけを希望したら……」
「それはアモに対しての気持ち?
それとも、他のドラゴンに対してのけん制?」
「そんな! そんなつもりは」
「僕は全能でもなければ、全知でもないよ。
ドラゴンがこの世界の守護者だったことは理解したけど、その存在が必要かと聞かれたら今は必要ないと思ってるからね」
世界樹が滅びた時に、そのシステムは無用なものになっていたから。
「さぁ、道を作りながら、壊さないといけないんだからね。
それこそアースドラゴンとしての真骨頂じゃないか。
アモの事は本人の気持ち次第じゃないかな。
ニーズヘッグとしての役割はもう必要ないんだし、それが力の源だとは思えないしね。
本当に何かを求めてるなら、きっとその努力が出来る奴だって、僕は信じてるよ」
アモが求めるのが力なのか、プライドなのか、それこそ本人次第だ。
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