モブですけど!

ビーバー父さん

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 森からの気配を僕は感じなかったけど、エリもアモもそれにミワまでが何かを感じ取っていた。

「同種って事はドラゴン?」

「ドラゴンに近い何か、としか……」

「正確に言うなら、ユグドラシルの波長に似ている何かだ、エリ」

 アモが神経を集中させてその何かの存在を探ろうと表情を硬くさせていたが、ユグドラシルと聞いてまさか復活とか小枝が残っていたなんて物語にあり得そうなシチュエーションを思い浮かべた。

「狡猾なあの爺さんのことだ、あり得ない事ではないかもしれないが……」

 ゲーム補正なのか?
 どうしてもゲオルグを魔王化させる方向へ行こうとさせているのか、ここに来て終わったと思っていた蒼月問題がまた浮上して来た。

「ラグ様、新たな者でしょうか?」

「ミワは世界樹であるユグドラシルから生まれたけど、僕の眷属として繋がりが絶たれちゃってるもんね。
 んー、僕としてはあの時爺さんをぶっ潰したから、アレじゃないと思うんだよね。
 似てる波長ってちょっと気になるけど、まさかの神様って事はないよねぇ、ははは」

 最初の蒼月であるオネェ神様がどこへ行ったのか、あんまり会えなくなるって言ったっきりあれから出て来てくれなくなっていた。

「マスターは神にお会いしたことがあるのですが?」

「うーん、神様的な存在って言うのが正しいのかな?
 ユグドラシルに取り込まれた、過去の人がその力を得て、神様になったって」

「ラグ様の前の蒼月、ですね」

 アモが察しの良い答えを出して来た。
 だからと言ってそれが正解がどうかは定かではないけどね。

「でも二つの存在なんだろ?
 気にはなるけど、敢えて探したりはしたくないな、正直、厄介なことに巻き込まれそうだし」

 そうそう、あの時オネェ神様もセカンドステージがあるって言ってたしな。
 ボス戦を何回したらクリアになるんだよ。

「エリもアモも、ミワだって面倒な事は嫌だろ?
 今は緑頭がいないだけマシって言うかさ、パパたちの献立を考える方が忙しいからね」

 緑頭はすぐお菓子をねだるしな。

「私もマスターのご飯、美味しいから好きです。
 この前、緑頭殿が食べていたなっつのからめるそーすがけ、というのがとても気に入りました」

 大人気だな、アレ。

 エリが少し手遊びをしながらモジモジと好みを言う姿が、ここにもマッチョオネェがいたな、と再認識していた。

「なら行く道中で木の実が採れたら、また作ってあげるよ。
 森の中ならあるんじゃないかな?」

 不安そうだったエリや、警戒心丸出しのアモに、思案顔のミワが嬉しそうに笑ったのが印象的だった。

 そうそう、食は人の心を豊かにするのよ。

 一人でうんうん、と頷いているとヒューゴが休憩用のテントから僕らを呼んで、工程の確認をすることになった。





「天気はこの先崩れる一方だと思うが、一気に駆け抜けたいところだ……。
 馬車は車輪が一つはイカレても大丈夫なように二重にはするが、多分、途中から使えなくなる。
 悪路とはいえこの辺りは轍はあるが道としては広い、しかし領境辺りは整備もされていなから仕様をまた変えるために旦那様とラグには防水コートを着て馬で行ってもらう事になる。
 途中、盗賊が出る可能性も高いが、大丈夫だよな?」

 ヒューゴが説明している中で、道が整備されてない場所が結構あると言う事が分かった。

「ねぇ、ならさ、エリと僕が先に馬で向かうから道を作って行くって言うのはどうかな?」

 アースドラゴンだし、僕も地脈を使えるようになってるし、どうよ?

「マスター、それなら馬じゃなくて私が抱えて飛びます」

「え!?」

 一斉にエリの方を向いた。

「エリ、ドラゴンになったらだめだよ!」

「いえ、羽根だけ出します。
 そしてマスターを抱えて木々の間を飛べば、周りからも見られません」

 そんなことできるの? てっきりあのエリマキトカゲみたいな姿になるのかと思ったよ。

「はい、それにサイズも変えられます」

 そう言うとエリは小さめの羽根を出して羽ばたいて見せた。
 
「ちょ、ちょっと! ブフォ! ゴホッ!!」

 エリの羽ばたきは結構な風圧で、テント内の土埃やら石ころやらを巻き上げた。


 




 
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