モブですけど!

ビーバー父さん

文字の大きさ
上 下
188 / 219

187

しおりを挟む
 なかなかに予想とは外れるものだと思っていたのに、悪い事ほど的中してしまうものだった。

 僕達は一気に決着をつけようと地脈を使って奇襲をかけると、そこにいたのはミッドと神官達だった。

「やはり、な」
 
 パパが予想していた通りの状況に、僕らはほんの少しだけ落胆した。
 モアレティの気持ちがどこまでなのかを計知ることは出来ないけど、弟と言う存在がミッドのどこかにあれば良いと思っていた。




「くくっ、どこぞへ逃げたはずの生贄に、なんだその黒い奴は?」

 ミッドが目を眇めてモアレティを睨め付けた。

「ミッド兄様……、改めて、モアレティです。
 ラグノーツ様より名前を頂き、こちらの眷属になりました」

 え? 眷属? え? ええ?
 獣神の眷属って事は想像したけど、僕の眷属って何!?

「ミッド殿、モアレティ様をうちの者にしてしまい、そこだけはお詫びいたします。
 ですが、扱いに困ってあのような仕打ちをしていたのでしょうし、事後承諾ではありますが連れて行く事にします。
 そして、我が息子ラグノーツを拉致し生贄にした罪を償って頂きたい」

 パパが静かにミッドを見据え、モアレティの扱いと僕を拉致した事へ言及した。

「はっはっは!! そこのガキは我が国に必要ないわ! どこへなりとも連れて行くがいい!
 但し、サリエル殿下の体を元に戻さねば、貴殿らを処刑する!!」

 ん~、確かのこの国は僕らにとっては外国だけどさ、辺境伯で一応僕は皇族に近い血が流れている訳で、それなりに高貴な諸侯の一員なんだよね。
 それを拉致して生贄とか言ってるあんたらの方がおかしいでしょ。
 しかも処刑とか。
 法律が違うって言っても公式訪問してるんだから、国際問題だよね? 最初から。

「サリエル殿下はそのままの方がいいんじゃないですか?
 この国の血筋を考えれば、王族ではないみたいですし……」

「何を」
「これ、この日記に書いてありましたよ?」
「まさか、でたらめを」
「読みますね、

  獣神紋は無かった。
  これは王族の子ではない、と言う証拠になってしまう。
  陛下との交合は決まった日にしか……。
  あの人の子だ」
「やめろ!!」
「あの人って誰でしょうね?
 そう言えば、ミッド殿って豹紋に見せかけてますけど、それ、傷跡ですよね?
 宰相兼教育係でしたっけ?
 年齢的には父親って言ってもおかしくないですよね?
 今病床にいる国王様とサリエル殿下って似て無くないですか?
 むしろ、貴方に似ている、その豹紋と言う傷が無ければ、とてもね。
 モアレティ様より、サリエル殿下と兄弟、いや親子と言った方が合ってる気がしますよ?
 ねぇ? ミッド殿」
「憶測だろうが、不敬である!
 サリエル殿下は皇太子であるのだ!」

 ミッドが力押しとも言える行動に出ようとした。

「この辺で諦めませんか?
 モアレティ様の本当の御父上は、国王ですよね?
 獣神紋と言うより、神の代弁者である聖女と国王という正当な血筋を持った、何よりも尊いお方ではないですか?」

 周りにいた神官や信者たちからどよめきが上がった。
 獣神教の信者としては、国の王族こそが一番獣神に近くそして、神の親族とさえされていたのに、サリエルがどこの誰とも知れない王族ですらないかもしれないのだから、動揺と猜疑心は膨らむばかりだった。

しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートの威力はすさまじくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 時々おまけのお話を更新しています。

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。 人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください! チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!! ※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。 番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」 「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 独自設定、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、新たな人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

処理中です...