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しおりを挟む「ここには誰もいないみたい。
!っ 急いで出なきゃ!」
もしこの場に今追って来てる連中がこの惨状を見たら、確実に僕達を疑うだろう。
そしてそれを覆すには状況が悪すぎて、冤罪だと主張しても意味がない事を悟った。
「ラグ、地脈を作れ!」
「うん!」
パパが一早く判断をした。
地龍のエリの様にはまだいかないけど、床が盛り上がり地中へと続く道が出来た。
「みんな、早く!
モアレティ様も!
ヒューゴ、先頭を!」
僕が最後に地中への入り口を閉じた時、屋敷の扉が勢いよく開かれる音を聞いた。
間一髪だったと思う。
一気に地中の割と深いと所まで降りてから、ゆっくりと気配のする方へ進んだ。
なんの気配かと言うと、悪意のだ。
一番分かり易い悪意が強い場所に、サリエル派というのだろうかそう言った奴らが集まっていると思われたからだ。
「ミッド殿の気持ちを知りたかったのだが、あれでは彼もどうなっているか」
パパもあの惨状は異常だと言い、ミッドの姿が無かった事に疑念を抱いていた。
僕は、もしかしたらミッドもこの計略に本当は加担していたんではないだろうか? と考えるようになっていた。
最初の拉致を、まるでサリエルが計画し、脅しているかのように言っていたけど、そうさせたのはミッドだったのでは? と。
「モアレティ様、お兄様がもし、もし貴方を」
「大丈夫です。
ミッド兄様は最初から僕を捨て置いた人ですから。
ラグ様が心を痛める必要はありません。
僕のこの黒い体に、黒い獣の姿が不吉だと言い、あの暗い場所でひっそりと死を待つだけでしたから」
そうか、やっぱりそうだったのか。
「ミッド様は貴方の本当の兄上ではありませんね?」
「さぁ、どうなんでしょう?
僕は生まれてすぐに母とここから遠い場所で生活していました。
森の奥深くで、黒い体を隠すようにして……だけど、いきなり白の兵士たちがやって来て母と僕を捉えました。
そして城へ連れて来られて、母は処刑され僕は地下牢へと入れられました」
庶子だったのか。
「お母様は一体どんな身分の方だったんでしょうか?」
アシッドが疑問に思う事を口にした。
普段はこんな事を言わないのに。
「母は、神殿の巫女だったらしいです。
聖女とまで言われたのに、誰とも知れない子を身籠り、その上黒い子を産んだ、罪深い女だと言われて処刑されました」
聖女って事は、獣神の子を身籠った可能性もあるんじゃないの? それ。
「う~ん、それ、なんか色々ありそうな気がするね」
「そうだな、聖女とまで言われた方が安易に体を許したりはしないだろう。
もし無理やりと言うなら、その場で自害でもしているだろうし……。
身籠った子をおろせない事情があった、と考えるなら、神の所存か国王の子でしかあるまい」
パパが言ってることが多分、正解だと僕も思った。
あの日記にあった子はサリエルで、獣神紋がない妊娠をした不貞の子。
国王は聖女に獣神紋を授け、モアレティを宿させ逃がしたんだと思った。
ならミッドは何者なんだ?
「物凄い悪意がすぐそこだ」
地脈が目指した悪意のある場所は、多分、瀕死のサリエルがいる場所でもあるだろう。
「そろそろ、お終いにしてラグの飯が食いたい」
「そうだな、私のラグが社交界にデビューするのが遅くなる」
「俺も! ラグの飯がたべたいぞっと!」
「モアレティ様は私のそばを離れないように」
最後はアシッドがモアレティを抱きしめるようにした。
んん、なんかあれ? なんだけど。
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