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ゲオルグが廊下を先に歩き出す前に、アシッドに隠形の魔法を使うように指示を出した。
「ここはどこに繋がって、どこに行くんですか?」
口の端を上げて、ゲオルグが笑った。
「ラグを罠にかけた元凶の部屋さ。
漏れなく大騒ぎしてるとは思うけどな」
「そう仕掛けた訳ですね」
沈黙は肯定だった。
サリエルが連れ出されてすぐに、使用人たちがバタバタと出入りを繰り返した。
惨状になってるベッドを片付ける者、ゲオルグ人形の動きを止めるように破壊して運び出す者、そして血まみれの敷物や家具、そういった物を運び出し始めた。
『早く探さないと』
『いっそ家具が無くなった方が探しやすいんじゃないか?
敷物も持って行くようだし、新しい物と取り換える前に床を探ろう』
ヒューゴの提案は尤もだった。
バタつく使用人たちにぶつからないように、床のはめ込みや違和感がある場所を探してみたけど、それらしい隠し場所は見つからなかった。
大体ここに何かあるって保証も無いんだけどね。
カーテンを外した使用人が他の棚の敷物も持って行こうとした時、ちょっと偉そうなおっさんが、そこはいい!と声を荒げてくれた。
使用人に触らせたくない、何かがあると告げているようなものだった。
『見つけたね』
『あぁ、何が出てくるのやら』
使用人が手を出そうとして止められた場所は、小さな書架に掛けられた布だった。
『うーん、人の出入りが収まるのを待つには、時間が無いな』
『ラグ、陽動作戦と行こうじゃないか』
ヒューゴとパパで手あたり次第他を破壊するから、その間に探れと言う事だった。
そう言うと隠形のまま廊下へ出て、サリエルが向かったであろう、神殿の方向とは反対方向へと走り出した。
ほんの数秒で大分離れた場所から、悲鳴やら怒号が聞こえ始めた。
すると、この部屋にいた使用人たちも顔を青褪めさせて、急いで避難するように出て行った。
いや、意外と思い通りに行くもんだな。
人気の無くなった部屋で先程の書架の布を捲ると、数冊の本や小さな木箱が置いてあった。
こんな風に布を覆っただけの書架の物が、そうそう重要だとは思わないけど、偉そうな従者は触ることを良しとしなかったのだから、何か理由があるとは思われた。
『これって……』
中身を見ると誰かの日記だった。
~獣神紋は無かった。
これは王族の子ではない、と言う証拠になってしまう。
陛下との交合は決まった日にしか……。
あの人の子だ~
~生まれた子が白かった。
良かった、きっとあの人の血の中に王族の血が流れているんだ~
~陛下が気付いているみたいだ。
どうにかしないと……~
~あの人が戦死した。
これでこの子の血筋を疑う者はいなくなった~
~ミッドだと! あんな黒い者が王族にいるなど!~
~陛下がミッドを王族として認めてしまった~
~魔虫の毒を手に入れた、これから少しずつ使えば、きっと~
サリエルは国王の子ではなかった?
ミッドが本当の血筋?
黒が不吉と言われている理由は昔からなのだろうか?
木箱の中身を確認すると、小さな鍵が入っていた。
いかにもな展開に、これってゲーム要素?補完し始めてるとかってないよね?
「誰だ!!?」
隠形をかけているから見えるはずは無いのに、入口あたりから大きな声を出された。
『相手も見えないけど、こっちの気配が分かるのか?』
僕が相手が使ってる魔法を探ろうとしたら、ゲオルグが姿を現して僕を力いっぱい抱きしめた。
「ラグ! 無事だったのか」
「ゲオルグ? どうして」
「ラグ様、地下牢で合流し、ここにミッド殿の弟君をお連れしました」
アシッドまでが姿を現して、腕の中にいる小さな獣を僕に紹介した。
「あの、僕、ミッド兄様の弟で、ロアンです」
綺麗な金色の瞳を持つ、小さくて痩せた獣はその名を口にした。
「ここはどこに繋がって、どこに行くんですか?」
口の端を上げて、ゲオルグが笑った。
「ラグを罠にかけた元凶の部屋さ。
漏れなく大騒ぎしてるとは思うけどな」
「そう仕掛けた訳ですね」
沈黙は肯定だった。
サリエルが連れ出されてすぐに、使用人たちがバタバタと出入りを繰り返した。
惨状になってるベッドを片付ける者、ゲオルグ人形の動きを止めるように破壊して運び出す者、そして血まみれの敷物や家具、そういった物を運び出し始めた。
『早く探さないと』
『いっそ家具が無くなった方が探しやすいんじゃないか?
敷物も持って行くようだし、新しい物と取り換える前に床を探ろう』
ヒューゴの提案は尤もだった。
バタつく使用人たちにぶつからないように、床のはめ込みや違和感がある場所を探してみたけど、それらしい隠し場所は見つからなかった。
大体ここに何かあるって保証も無いんだけどね。
カーテンを外した使用人が他の棚の敷物も持って行こうとした時、ちょっと偉そうなおっさんが、そこはいい!と声を荒げてくれた。
使用人に触らせたくない、何かがあると告げているようなものだった。
『見つけたね』
『あぁ、何が出てくるのやら』
使用人が手を出そうとして止められた場所は、小さな書架に掛けられた布だった。
『うーん、人の出入りが収まるのを待つには、時間が無いな』
『ラグ、陽動作戦と行こうじゃないか』
ヒューゴとパパで手あたり次第他を破壊するから、その間に探れと言う事だった。
そう言うと隠形のまま廊下へ出て、サリエルが向かったであろう、神殿の方向とは反対方向へと走り出した。
ほんの数秒で大分離れた場所から、悲鳴やら怒号が聞こえ始めた。
すると、この部屋にいた使用人たちも顔を青褪めさせて、急いで避難するように出て行った。
いや、意外と思い通りに行くもんだな。
人気の無くなった部屋で先程の書架の布を捲ると、数冊の本や小さな木箱が置いてあった。
こんな風に布を覆っただけの書架の物が、そうそう重要だとは思わないけど、偉そうな従者は触ることを良しとしなかったのだから、何か理由があるとは思われた。
『これって……』
中身を見ると誰かの日記だった。
~獣神紋は無かった。
これは王族の子ではない、と言う証拠になってしまう。
陛下との交合は決まった日にしか……。
あの人の子だ~
~生まれた子が白かった。
良かった、きっとあの人の血の中に王族の血が流れているんだ~
~陛下が気付いているみたいだ。
どうにかしないと……~
~あの人が戦死した。
これでこの子の血筋を疑う者はいなくなった~
~ミッドだと! あんな黒い者が王族にいるなど!~
~陛下がミッドを王族として認めてしまった~
~魔虫の毒を手に入れた、これから少しずつ使えば、きっと~
サリエルは国王の子ではなかった?
ミッドが本当の血筋?
黒が不吉と言われている理由は昔からなのだろうか?
木箱の中身を確認すると、小さな鍵が入っていた。
いかにもな展開に、これってゲーム要素?補完し始めてるとかってないよね?
「誰だ!!?」
隠形をかけているから見えるはずは無いのに、入口あたりから大きな声を出された。
『相手も見えないけど、こっちの気配が分かるのか?』
僕が相手が使ってる魔法を探ろうとしたら、ゲオルグが姿を現して僕を力いっぱい抱きしめた。
「ラグ! 無事だったのか」
「ゲオルグ? どうして」
「ラグ様、地下牢で合流し、ここにミッド殿の弟君をお連れしました」
アシッドまでが姿を現して、腕の中にいる小さな獣を僕に紹介した。
「あの、僕、ミッド兄様の弟で、ロアンです」
綺麗な金色の瞳を持つ、小さくて痩せた獣はその名を口にした。
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