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しおりを挟む覗きをしてみたいで、いや、事実覗きなんだけど。
続きを見るにはちょっと悲惨すぎて、顔をそむけたくなった。
幻覚と痛覚を異常変換させて快楽に変えているからか、媚薬の所為なのかサリエルの体はどんどん傷つき始めていた。
滴る血を精液と思っているのか、白い毛並みが赤く染まって行った。
「ゲオルグの旦那、本当に怒ってるんだな……」
「あぁ、彼がこれほど陰湿で残虐なやり方をするとは、思ってもみなかった。
ラグが人質に囚われてるとなると、こんな風になるんだな……」
ユグドラシルとやり合ってた時のゲオルグの状態を考えると、きっとこれ以上の感情でこの世界を潰してしまいたかったはずだ。
ほぼ、魔王化してたんだし。
「ゲオルグはどこにいるんだろう?
この城自体に妨害魔法が掛かってるみたいで、色んな事がイマイチうまく行かない気がするんだ」
「確かサリエルも最初は魔道具を使っていたしな」
「それに、こちらの会話なんかも聞かれているみたいだ、意外とここの情報網も侮れないかもしれない。
ロッシもうかうかしてられないね、これじゃ」
笑いながら、ここにセバスチャンもアシッドもいなくて良かった、とつくづく思った。
「これだけ探してもいないのは、!、アシッドか?」
ゲオルグが魔力を感知したのはアシッドの様だった。
地下に突然現れたアシッドの魔力に、漸く合点がいった。
この城中を索敵し、今は隠形で気配ごと隠したまま動き回って、ラグを探していたが見つからない理由に歓喜したのだった。
「ラグたちは地脈にいるのか……、それなら安全だ」
どこの地脈にいるのかまではゲオルグでは分からないため、アシッドと合流することにした。
地下への移動は床をそのまま、持っていた剣で貫いた。
ゴォオオン!!!
魔力を纏わせた愛剣は、ゲオルグ一人分の穴を簡単に開けて、アシッドの頭上へと繋げた。
それこそ物理的に壊したせいで、隠形の意味を成さなくなってしまったために、アシッドがいた地下牢が騒然となってしまった。
「ちょっと! ゲオルグ先生!!! あんたバカですか!!!」
「アシッド! ラグは地下牢にいるのか?!!」
状況を全く考えないゲオルグにアシッドは遠慮なく怒りをぶつけ、レバーパンチをお見舞いした。
だが、ゲオルグの手の平で受け止められ、怒りの鉄拳は不発に終わってしまった。
「マジで!! 空気読んで! ホント、ラグ様からの任務が失敗したらどうしてくれんだ!!!」
「いや、それは、すまなかった。
で、どんな事するんだ?」
「あー鬱陶しい! 静かにして、ってほらぁ!! もう、あっちのお客さんは頼みましたよ」
お客さんとは、この城の獣人兵で一斉に矢を放って来た。
キン!! カン!
剣で矢をはじきながら、アシッドが目指す地下牢へと移動して行く。
それでも鬱陶しくなったゲオルグは、剣を大振りに振り下ろすとその場にいた兵士が全員切り捨てられた。
「ここまでになったら、国際問題とか言ってられないな」
「一応考えてたんですね」
アシッドの皮肉を受け流して、目指す牢を見つけると鍵を壊して入ろうとしたが、魔道具の所為なのかアシッドの魔法では開けられなかった。
「ふん!!!」
ガシャン!!
ゲオルグが一振りした剣先は、いとも簡単に破壊した。
「魔道具とか、生意気ですね。
さて、と」
重い金属の扉を押し開けると、埃臭い空気に混じって異様な匂いが立ち込めていた。
「うっ!!
これは」
ひゅー、ひゅー
暗闇で肺に異常があるような息遣いが聞こえて来た。
「だぁれ?」
藁を敷いただけの床に、小さな黒い獣が首を擡げた。
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