モブですけど！

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　だからって、ちょっと許せないけどね！
　ゲオルグと終わったと思った時の死にそうな気持、無気力で何も考えたくなくて、それでも入ってきた情報で家族を作ったゲオルグを想像すると、どこまでも落ち込めたあの時間を考えると、許したくなかった。

「パパじゃなかったら、僕、許せないと思う。
　でも、パパだから、許すよ」

「ラグ！　ごめんね。
　パパが身勝手だったよ……、君の気持ちを知っていたけど」

「うん、パパ。
　僕は蒼月でもしかしたら死んじゃっていなくなるかもしれなかったんだから、こんなに大事にしてくれてたパパの気持ちを僕も考えてなかった。
　ごめんね」

　相変わらずのバカ親子っぷりを周りに見せつけながら、ギュッと抱きしめ合って許し合った。

「ま、お二人さん、まずはこれからどうすんの？」

「それ、アシッドの方でも何かいい案がある？」

　アシッドは組んだ腕をほどきながら、顎と頬に指を当てて残してきたゲオルグがどうなってるか、その情報が有ればと言って来た。

「ちびっ子たち、ゲオルグと繋がれる？」

＜ラグさま、ゲオルグ様はあの白い獣人といます。
　お話はお一人になられてからの方がよろしいかと＞

　お、賢い子がゲオルグ側にいたのか。
　白い獣人は間違いなくサリエルだろう。

「映像出せたよね？
　気づかれないように、映像だけこっちにつなげてくれる？」

＜畏まりました。
　そちらの空間が多少歪んでいるため、はっきりした映像ではありませんが＞

　そういわれながら、こちら側のちびっ子が集まって、まるでプロジェクターの様に壁に映し出してくれた。
　音声は聞こえて来ないけど、ゲオルグが怒ってる様子が分かった。
　そして、あろう事かサリエルはゲオルグに抱きついて、無理やりキスをし始めた。

「え、ね、あれはどういう事かな？」

「ゲオルグ先生は、ラグ様の体を知って調子づいてるのでは？
　とりあえず、殺しましょう！」

　アシッドが本気で殺す算段をしている横で、ヒューゴが無理やりだしノーカンでしょ、と能天気に言うとパパが破断でいいんじゃないかな？　と笑って言い出した。

「去勢でいいと思います。
　私が間違いなく、食いちぎって来ますからご安心を」

　ミワが物凄い紳士な感じで、去勢とか食いちぎるとか、すごいこと言っちゃってるよ！

　映像の先で、ゲオルグは特に抵抗した様子もなく、サリエルにされるがままになっていた。

「いや、あり得ないわ、あり得へんでしょ！
　せめて、僕が盾に取られてるとかの仮定があったとしてもだよ！　抵抗しろよ！」

「ノーカンって言いきれなくなってんな、こりゃ。
　なんか洗脳されちゃってる？」

「いえ、ゲオルグは僕の記憶操作の魔法ですら自力で解除できる人なんです。
　これは同意でしょ」

　握った拳の関節が痛くなってきた。
　漫画とかで手の平に爪が食い込むほどとかってあるけど、そこまで爪伸ばしてる奴ってきっとオナニーしかしない奴だわ。
　相手がいる人とか風俗通いの人は、爪切るもんな。
　だから、僕は怒りで握った拳の中で爪が食い込むなんて事は無かった。

　されるがまま、それは体を触らせてサリエルがハァハァ言っちゃってる感じ。

「婚約破棄で話しを進めてもらうよ、ラグ。
　これは決定事項だ、いいね？」

「パパ……、今すぐゲオルグに話を聞きたい
　それからじゃないと、納得できない」

＜ラグ様、音声を繋げます。
　聞いた方がよろしいかと、判断いたしました＞

「うん、繋げて」

　まるでスピーカーをオンにしたかのように、唐突に会話が聞こえて来た。

『ゲオルグ様、私は貴方にずっと、こうやってずっと抱きしめてもらうのを夢見て来ました』
　
　副音声にハァハァという変態じみた息遣いが入ってくるのが、気持ち悪かった。

『ラグはどこにいるんだ』

『あぁ、彼は丁重に信徒たちが治療をしている所ですよ。
　それに、明日の祭祀を楽しみにされていましたし、きっと今は苦しみの中にいらっしゃるかもしれませんが。
　私を抱いて解毒をして欲しがるくらい、苦しんでいらっしゃるのです。
　ですから、抱いて私に獣神紋を授けてください』

『お前を抱けば、ラグの体にある毒を解毒してもらえるのだな？』

『えぇ、獣神紋、すなわちお子を私に授けて頂ければ』

　獣神紋ってなに？
　僕が毒に苦しんでるから、抱けば解毒する？
　そして、子供を作る？
　獣人はオス同士で子供ができるの？

「ねぇ、そこの邪教の信徒たち。
　獣神ってのはオス同士で子供を作れるの？　子供が出来ると獣神紋ってのが出来るの？
　どういう事？」

　怒りを通り越すと、笑いしか出ないんだな。
　頭にくると言うより、血が下がってより冷静にそして冷徹になれる自分を自覚した。