モブですけど!

ビーバー父さん

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 食材もだけど、獣人の国だけあって、服飾関係は結構独特だった。
 コスプレの極みと言うか、なんかネットニュースとかで見かけたのをそのまま、現実で見てる感じだった。

 そうなると、この国の服飾に興味が出た。




「身体的特徴をカバーするための機能的な服が多いですね」

 アシッドが感心するような表情で、服の機能性を確認して、組織でも制服として取り入れようとか言ってた。

「確かに、ここの服って伸縮性が高いし、僕らが着る服より運動能力を最大限生かせる作りをしてるね」

「えぇ、この素材もですが、縫製も研究されてます」

 既製品を出してる所謂、庶民向けの装飾店で僕たちは袖を伸ばしてみたり、パンツの裾に入ってるスリットの意味を考えたりしていた。

「裾にスリットが入ってるのは、色んな種族の足に合わせてるってことかな?」

「そうでしょうね。
 獣人でも色々なタイプの者たちがいましたし、そういう意味でも履きやすさなんかを重視してますね」

 途中で搾れるようになってるから、スリットがヒラヒラしていても形を合わせられるようになっているし、素材の伸縮性がそれを更に機能的にしていた。

「これは、立派な交易の対象になるだろうし、この縫製技術が門外不出と言うなら、かなりの価値が生れるだろうな」

 パパもこの素材だけでは成り立たないことを、触りながら確認していった。

 店に入った時から、店員がソワソワと僕たちを目で追っているのが分かっていたけど、アシッドが数種類のデザインの服を手に取ると、待ってましたと言わんばかりに声をかけて来た。

「お客様、試着されますか?」

 貴族社会では既製品なんてほとんど無いから、試着ではなくサイズを測って仮縫いの時に合わせるってのが通常だけど、こういう既製品のお店では試着が当たり前だった。

「試着、ですか?」

「そうだよ、アシッド、着てみないと合わないところがあったら買っても無駄になっちゃうでしょ?」

 前世では試着も当たり前だったけど、世界が違うからねぇ。

「多分、ある程度のサイズで着られるように、何種類かのサイズが置いてあるはずだから、アシッドのの体だとこのあたりじゃないかな?」

 ハンガーごとアシッドに合わせてみると、いや、コスプレ見てるみたいだった。
 こう、闇の組織のヒーローの普段着みたいな、開襟シャツにラフなジャケットを着て腰ベルトが!! って萌えたわ。

 軍服系が好きだって自覚はあったけど、これはこれでイケる!!

「ラグはこんな服を着たらどうだ?」

 ゲオルグが出してきたのは、ヒラヒラのスカートだった。
 しかも、しっぽ穴がお尻あたりに空いてるやつ!!

「ゲオルグ、僕、男だって分かってて、これ出してきてる?」

「いや、その、ほら、ここに穴というかスリットが入っていて、ちょうどお尻だから夜着にどうかと思ってだな」

 は!? え、まさか、それってエロ目的!!

「ゲオルグ殿、私は言いましたよね?
 節度を持ってと!! 確かに、相愛の者同士ならそれも致し方無いと目を瞑りますが、ラグはデビュタント前なんですよ? 変な色気をもって出席したら困るのは貴方自身なんですよ? 分かりませんか?」

 パパがギロッと睨みながら、ゲオルグが手に持っていたスカートをひったくる様にして、ヒューゴへ戻すように言っていた。

「もう、ゲオルグのバカ」

「ラグに着て欲しかったんだが」

 僕に変な色気とやらが有るかどうかは別として、エスコートはパパだし誰も近づいては来れないと思うけど、結婚するまでは、ね。

 アシッドが試着室から出てくると、体の線がバッチリ出てるスウェットスーツみたいなのを着ていた。
 あぁ、闇の組織が任務中って感じで!
 
「すごい! カッコいいね、アシッド!!」

「これだと、動きに無駄が出ませんし、格闘になった際も良いかと。
 ただ、暗器を仕込む場所がないので、改良をしなくてはいけませんね」

 いやいや、庶民の普通の装飾店で暗器仕舞える作りの服なんて、売ってないし!!

「そこはオーダーするしかないね」

「私も、これに類似したのを一着作って貰おう。
 店主、どのくらいで仕上がるか?」

 店員さんは店主だった?んだ。

「うちは既製品を卸してもらってるだけなので、直接工房で依頼されてみてはいかがでしょう?」

 店主が言うには工房自体は町から大分外れた場所にあるらしく、今からだと夜になってしまうと言う事だった。

「明日、こちらに工房主を呼んでおきますので、改めてではいかがでしょう?」

「では明日、もう一度伺わせて頂きます」

 店主にとって、お店を通した方が何かと利益になるだろうし、僕たちがいきなり訪ねても不審者になるだけだと思って、パパもそれで納得していた。






 お城に戻るとサリエルが門前でウロウロしながら待っていた。

「おかえりなさい、どうでしたか?」

 嬉しさ半分、緊張半分と言った表情で、僕らに街での出来事を待ちきれずに尋ねて来た。

「良い物を発見できました。
 明日、もう一度街へ行きます」

「そうですか! 良かった。
 嫌な目にあったりとかしませんでしたか?」

 矢継ぎ早に聞いてくるので、僕らは苦笑しながら取り合えず部屋で着替えてから、と言うと顔を赤らめてすみませんと頭を下げて、従者たちに荷物を運ばせるように指示を出すと、僕たちにテラスでお茶を用意しておきます、と告げて別れた。

「サリエル殿も、余程気にされていたんだな」

「そうですね、私たちも思いがけず良い物を見つけられて良かったじゃないですか」

 ゲオルグとパパがその後姿を見て、表情を柔らかくしていた。
 
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