モブですけど!

ビーバー父さん

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 朝の騒動が終わって懲りた僕は、治癒魔法で体の痛みや傷を治して、普通に歩いて移動をした。

「ラグ、気にする事なかったんだ」

「ゲオルグ、いかにもって感じはさすがに僕も反省したんだから」

 サリエルがロアルド共和国の案内をする、と興奮気味に言ってきたけど、さすがに公務の方が忙しいでしょうから、と辞退した。
 できればサリエルの姿が見えないところで、この国の良い所や悪い所を知りたかった。

「では、護衛だけは付けて下さい。
 下町は荒くれ者もいます。
 獣人が全て凶暴な者ではありませんが、その獣性を抑えられず犯罪を犯す者もおります」

 サリエルの助言はもっともだと思われたが、うちにも最強の旦那様がいるんだ。

「市井を見るだけなので、我が家の護衛達で十分です。
 獣人に人間が混じるのはあまり無いことかもしれませんが、むしろ素の国民感情が分かって良いと思います」

 パパは丁寧に断りを入れ、尚且つ、差別意識を持たれても仕方ないと言った様なものだった。

「ですが、」
「良いところばかりでは無いのは、どの国でも当たり前です。
 それを見せるのも、貴方の誠意ではないか?」

 その言葉にサリエルはグッと口を引き結んで、頷いて見せた。

「それに、僕達は強いです。
 ゲオルグはSSですしね」

 僕が自慢したら、アシッドが、サイズですか? と余計な一言を挟んで皆が引き攣った笑いを浮かべる事になった。

 いや、うん、SSなら問題なかったのにね。
 って、大アリだわ!!

「アシッド、後でお仕置きね」

「! ラグ様!
 お仕置きしていただけるのですか!?
 でしたら、もっと、」
「ストーップ!!」

 ご褒美だったわ、これ!

 




 セバスチャンとほかの護衛騎士たちを船に向かわせ、僕たちは船長も含めて城下町へと繰り出した。

「船長! 珍しいものがいっぱいだ!」

 船員で一番下っ端のロミオが、目を輝かせてはしゃいでいた。
 年も僕とそんなに変わらないし、そばかすの顔がヤンチャな弟キャラを作っていた。

「ロミオ! 旦那方の前で無礼だぞ! ちゃんとしろ!」

 いかにも船長と言った風情で、ロミオの頭に拳骨を振り下ろした。

「ちぇー!! だって、船長はお城に泊ったけど、オイラは船の中でずーっと掃除と野菜の皮むきばっかだったんだぜ!! やっと船を降りて街を見られるんだから、少しくらい楽しんでも罰は当たらないとおもうんだけどなぁ!!」

 口を尖らせて不満を大いに垂れ流すロミオに、また拳骨を振り下ろした。

「無礼の意味が分かってないのか? あぁん?!」

「ったー!!!」

 頭にゴツッと鈍い音をさせて、ロミオが痛がった。
 
 う~ん、確かにこれが僕たちや、ほかの国でなら不敬モノですぐ処罰されてもおかしくないんだよね。

「ロミオ、僕達で敬語や作法の練習をしようよ。
 国へ帰ったら、僕もデビュタントが待ってるから、礼儀作法はもっと厳しくなるし、どうかな?」

「ラグノーツ様、ありがたいことです。
 私どもでは、敬語をなんとか使えても、作法は教えきれません。
 ロミオがこの先貴族との交渉事や、将来の仕事の選択肢が増えて、こんな稼業とは離れてくれたら良いと思っております」

 船長が、少し下がった後ろから、そんな話をしてくれた。
 ロミオをこのまま船員で終わらせたくない、と言う船長の言葉に本人は目を大きく見開いて驚いていた。

「や、だ、 オイラ、やだよ!!
 オイラ、ずっと船長たちと船でいろんな国へ行って、世界を相手にするんだ!!」

 船長はロミオの将来を考え、ロミオは船長を思っている、そんな図式だった。

 船長の補佐をしているらしい賢そうな青年が、やれやれ、と言ったように肩をすくめて見せた。

「まぁ、知識とかは荷物にならないから、身に着けておいて損は無いと思うし、大好きな船長の助けになることもあるんじゃないかな?」

「オイラが勉強したら、船長が助かる?」

「そうだな、私だけじゃなく、船にいる奴ら全員がロミオを尊敬するだろうな」

 船長はロミオが可愛いと言った笑顔を見せて、たんこぶになっている頭を撫でた。

「痛い、オイラ、きっとこれでバカになってる」

「最初からだろ? ロミオはやればできる子なんだから、ラグノーツ様に教えて頂けるなんて、物凄く光栄なことなんだ、しっかり勉強して船長から褒めてもらえ」

 補佐の青年も加勢の言葉を贈った。

「ラグも、ロミオに負けてられないな。
 特に、貴族の礼儀作法は独特だしな」

「でも、ラグ様はボンクラとは言え第三王子の婚約者だったんですし、一応土台はあるのではないですか?」

「アシッド、幾つの時の話しだと思ってるの?
 子供のころのほんの数年だよ? 可愛いわねぇ、ほほえましいわ~で済まされる年齢の時の作法なんて、無に等しいんだから!!」

 大体、作法も何も、アイツに呼ばれて行っても、応接室でさんざん待たされて、お茶して帰るとかそんなんばっかりだったわ。
 思い出し怒りが沸いて来ていた。



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