モブですけど!

ビーバー父さん

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 獣人国で僕の正体ではなく、この国の王太子殿下サリエルがあまりにもバカだと言う事が露呈した。
 僕たちは彼のおかげでまた巡り合えたけど、それでも対価としては余りにもお粗末なものだった。

「サリエル王太子殿下、貴方が軽率にも起こした行動は、明らかな条約違反です。
 ですが、悪意の中の偶然が息子たちを結びつけたのも事実です。
 交易は改めて協議する事とし、私たちのことを口外しないようにお願いいたします」

「サリエル殿下、しっかり謝罪をしてください。
 私も貴方の教育係としても非常に恥ずかしく思いますから、良いですね?」

 豹紋の男は教育係でもあったらしく、かなりきつくサリエルに謝罪をするように迫っていた。

「わかってる!! 
 ドアイス辺境伯殿、此度は私サリエルの浅はかな行動と言動で、貴国の尊厳及び至宝を傷つけてしまい申し訳ありませんでした。
 どうか、当分、この国で過ごし本来の好い所を見て行って貰えないでしょうか?
 改めて交易をお願いしたいのです」

 跪き、パパへ最上の礼をとって懇願する姿は、一応一国を担う者としてはかなりの勇気がいった事だろう。

「分かりました。
 こちらも、息子の社交界デビューの対策を考える必要があるので、少しの間情報と言う強力をお願いします」

「はい!
 では、狭いですが王宮へお越しください!!」

 顔を上げ、明るく返事をするサリエルに、豹紋の男も胸を撫でおろしていた。







 王宮の中で待ち構えていたのは、病床でほぼ寝たきりの国王だった。

「此度は愚息のしでかした事、心より申し訳なく思っております。
 またその怒りをおさめ、再度、チャンスを頂けたことうれしく思います。
 このような姿でお目汚しでございますが、どうか、お許しください」

 バカ息子のために、必死に体を起こして謝罪する国王が哀れでならなかった。

「父上!
 私が、強者を従者につければうまく行くと考えたのが浅はかでした。
 申し訳ありません」

 この国にも後継者問題や、政治的な問題が山積みのようだった。

「では、王太子殿下、貴方のこの国の誠意を見せてくださいね」

 パパはその一言で締めくくって国王との謁見を終わらせた。




 僕達に与えられたのは、貴賓室がある階すべてだった。
 幾人かは交代をさせるように、船に見張りとして残した者たち以外、船長も含め全員がこの貴賓室を与えられたからだった。
 船乗りたちは王宮への滞在を興味津々で喜ぶ者もいれば、堅苦しいのを嫌って船に残りたがった者もいた。
 今ここにいるのは、その堅苦しさを我慢して滞在するロッシの精鋭たちだった。


「ゲオルグ・カスターノ殿、今は、婚約を認めよう。
 正式に、レイラント・デ・ドアイスが認める。
 ただし、ラグノーツは貴族として社交界へデビューしてから、婚姻の準備をするように。
 十八歳の誕生日を迎えたその日を、結婚式としようではないか」

 パパが、初めてゲオルグを伴侶として認めてくれた。
 だけど、社交界デビューは必須になってしまった。
 
 ゲオルグと別れてしまったから、相手を見つけるとかいう理由があった気がするけど、もうデビューする必要がない気がするんだけど。

「ラグ、王弟やその息子の悪事を詳らかにしなくてはいけない。
 今回のゲオルグ殿の事も、お前に関りがあるからこその悪意だと思うんだ」

 今度のボスは王弟とその息子たちって事か。

「社交界へ僕が出ることが、罪を認めさせる事になる?」

「いや、アイツらが気にするのは、自分の地位だけだ。
 だがな、私の妻、お前の母は、私と結婚するために、たくさんの思いを捨てさせてしまったんだ。
 そして、外で作った兄の子供を育てるために利用され、お前を授かってからも成長を見ることも出来ずにこの世を去った。
 だからこれはパパのエゴだ。
 私と妻の息子がこんなに綺麗な子に育って、素晴らしい伴侶と結婚すると言う事を見せつけてやりたいんだ。
 そうすれば、自ずと這いずり出てくるさ」

 パパが黒い。
 真っ黒だ。

「う、うん、そうだね。
 ゲオルグが僕の伴侶だって言いたいし」

「私もだ、ラグ。
 こんなに綺麗で可愛い子を私の伴侶に出来るんだ。 
 自慢しかない」

 あんまり外見の事ばかり言われるのはちょっとなぁ。

「それにな、早く手料理が食べたい。
 泥を食べてるようで、味気ないわ不味いわ、本当に飢えて死んでしまうかと思った」

「はい、そこ!
 自分たちの部屋でやってくださいよ~
 イチャイチャするのはこちらの気持ちへもご配慮をくださいね」

 ヒューゴが結構あっさり、僕らを認めてくれた。

「ご、ごめんなさい」

「いいよ、ラグ。
 お前さんが幸せそうに笑ってるのが一番だ。
 だからゲオルグ殿、もう二度とラグを泣かせないでください」

「もちろんだ」

「まぁ、貴殿がいなくなったら後に控えてる俺らがいることをお忘れなく!」



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