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しおりを挟む僕は皆を甲板から見送って、残った人達とご飯を食べるためにこの国で仕入れた食材を確認していた。
「うーん、鶏肉のつみれ鍋にしようかなぁ」
鶏肉をミンチにして、醤油、砂糖、胡椒、そして定番の生姜ではなく、レモンの皮をおろし金ですり下ろしてそれにみじん切りにした紫蘇を加えて捏ねた。
今回は豆腐も作ってみたから、それを繋ぎに使って卵と片栗粉を入れて混ぜると、ドロッとした大分緩いタネが出来上がった。
「これを、どうすればよろしいですか?」
アシッドが僕の補助をしながら、?マークを浮かべながら聞いてきた。
「これは、こうやって、スプーンを水に濡らしながら掬って軽く丸めるの」
実際に数個作って見せて、やってもらった。
「あ、あ、ラグ様! 崩れてしまいます!」
鍋に入れる奴だから、沸騰してる中に入れないといけなかった。
作り方を見せただけだったから、そりゃ戸惑うわな。
「アシッド、鍋が沸騰するまで待って。
言わなかった僕が悪い」
ホッとしたように、息を吐いて土鍋が煮え立つまでじっと見つめているアシッドが、可愛いと思ってしまった。
「野菜にキノコ、それに! 春雨!」
そう!とうとう、春雨を作りました!
時間はかかったけど、魔法で形成したりして、鍋には春雨だよね!
マロ〇ーとか、葛切りって人もいるけど、僕は春雨派です!
「グツグツして来たら、さっきの要領で間隔をあけて入れてね」
アシッドの性格だろう、掬っただけでは丸くならないのを、一生懸命丸くしようとしてなかなか進まない。
「アシッド、そんなに丸くしなくて良いんだよ。
形がでこぼこしていた方が味も滲みるし、火も通るから」
均一じゃなくても、食べながら入れて行くし、気にしなくて良いんだけどなぁ。
アシッドはそれでもなるべく綺麗に、とか言いながら悪戦苦闘していたので、もう一本スプーンを使って丸く形成して見せた。
「っ! ラグ様、凄いです!」
なんだろ、この初めてのお手伝いで興奮してる小さい子みたいなのは。
僕よりはるかに背も高くて、それこそ大人なアシッドが子供の様な表情をして、一心不乱につみれを丸めている姿は、可愛いとさえ思えた。
「さて、今船に残ってる護衛や、船員たちにも交代で食べて欲しいから、警備で立ってる人と交代する人達が先に食べて、終わったら警備を交代してあげて」
僕は船内の食堂にジワジワと集まって来てる連中に声を掛け、食べ終わって交代する人は声を掛けてあげるように言った。
「ラグ、うんまい!!
肉の独特の臭いがスッキリした風味と、口直しの様な鮮やかなあと口で、いくらでも食べられるぞ!」
護衛についてる騎士たちは、以前、騎士団の寮で食べていた人達だから、見た事もない料理でも僕を信用して食べてくれた。
「本当に? 本当にこんな魔鳥の肉が?」
船員達は、魔鳥や魔獣が毒素を持っていると思い込んでいるらしく、魚以外が苦手な様だった。
「ばぁか、このスープも絶品だ!
最後はマイマイを入れて食べるってラグが言ってんだ、絶対美味いに決まってる!
これを食べられないなんて、生きてる意味ないぜ!」
周りで食べてる護衛騎士達は、がはははと豪快に笑いながら、勢いよくたいらげていった。
「馬鹿野郎! 船の上で食いっぱぐれたら死ぬんだ! 四の五の言わずに食いやがれ!」
遅れてきた船長が他の船員の頭を張り倒した。
「ってー! でもよー、魔鳥だぜ?」
「私が鑑定しましたが、問題ありませんでしたよ?
それに貴方方も卵は食べますよね?」
アシッドが業を煮やして腕を組んで彼らを睨め付けた。
船の上での食料はとても貴重で、特に鮮度が重要な物ほど彼らには縁遠くなる。
卵は暗所で清潔に洗って藁なんかに入れて割れない様にしておけば10日くらいは持つ、貴重な食材で栄養価も高かった。
「卵は毒素が無いって」
「それ、どこ情報ですか?」
アシッドが食い気味に言えば、昔から言われてる、と言うアレです。
はい、迷信です。
「鑑定では極上肉と出ましたし、魔素によるスキルアップもでましたが、なにか?」
え!? 食べるとスキル上がるの?
「属性によりますがね」
僕の顔色を見て、アシッドが付け加えた。
残念
「ラグ様は全属性ですから、上がりますよ」
「え! 本当!?」
これからは、アシッドに鑑定してもらって、どんなスキルに効果があるか調べないと!
この所のアシッドは冗談も言う様になったし、怖いより綺麗が勝ってるイケメンになっていた。
応援ありがとうございます!
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