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しおりを挟む目が覚めて一番、重苦しい異変に気づいた。
「うあああっ!!」
「ラグ様! いかがなさいましたか!?」
アシッドが扉を開けて飛び込んでくれば、僕の隣の人物を見て殺気を放った。
「貴様! 何者だ!?」
「我が何者とは」
悠々と僕のベッドで裸の上半身を覗かせた、細マッチョな金髪に紅い瞳の超絶イケメンがアシッドを見下すように睨め付けた。
「僕のベッドにどうやって入った!?」
「子供は煩いの」
取り乱さないはずがないだろ! この状況で!!
「いや、アンタがおかしいのは確かなんだ。
大体なんで、僕のベッドに裸ではいってるんだよ!!」
騒ぎを聞いて駆けつけたセバスチャンに、ヒューゴ達、それにパパが抜き身の剣をイケメンに向けた。
「ほぅ、此奴らがお前を守る兵隊か。
しかし、力不足よの」
「ラグから離れなさい。
おいで、ラグ」
パパは誰にも認められなかったと言っていた剣を、誰よりも早くイケメンの首に刃を当てていた。
「旦那様! ラグ様!」
セバスチャンが僕らを守る様に障壁を巡らせようとした時、緑頭とエリが現れた。
「ラグ、どうしたのだ?」
「マスター、何の騒ぎ、!っ」
エリがイケメンを見た途端、ペキペキと音を立てて周囲の壁や床が変形を始めた。
「エリ、どうしたんだ?!」
僕を振り返りながら、弱虫のエリはフルフルと震えながら泣き始めた。
「名を貰いアースドラゴンになったと言うのに、相変わらず不細工だの」
イケメンのこの言葉で僕はこいつがエリをイジメていた他のドラゴンだと言う事に気づいた。
「お前がエリをイジメていたドラゴンか」
「おぉ、いいな。
その怒りの波動、魔力、あの世界樹を滅ぼしたのが良く分かるわ」
余裕綽々で僕を見てニヤニヤ笑うこいつに、エリが怯えていた。
「エリ、お前はこいつをどうしたい?」
「マスター、私は……、自分の力で嫌だと言う事を伝えたいと思います」
泣きながらも意外と冷静な答えが返って来た。
「ハッ!!
笑わせるな、お前ごときが我に勝てるはずが無かろう」
イジメたのって、エリが好きだから? と急にそんな風に思ってしまった。
好きな子をイジメてしまう奴って小学生とかにはよく居るし。
「エリ、僕が手伝う?」
「いえ、マスター。
大好きなマスターについて行くには、この位は自分で処理しないと」
「でも僕、お前を守るって約束したよ?」
「それはっ!」
エリは顔を赤くしながらゴニョゴニョと小さな声で言った。
「私は、マスターを愛していますから、頼られたいのです」
消え入りそうな声で顔を赤くして告白された。
えっと、どこにその要素があったのだろうか?
「くっ!!
お前は我の側に居れば良いのだ!
何故人の元へ、しかも名付けまでされて!」
おいおい、ビンゴじゃん。
「エリ、来て」
にっこり笑って両腕を伸ばした。
「ま、マスター」
僕の横に来ると、ぎゅうっと抱きしめてあげた。
「お前!」
「ふふふ、エリ
戦わずしてお前の勝ちだ、だろ?」
金髪イケメンを見ると、くやしげに口元を歪めていた。
「?マスター?」
エリは全く分からないといった顔をして、抱きしめている僕を見つめた。
「ほら、負けを認めろよ」
残念なエリマキトカゲのような姿でイジメられたと言っていたけど、これはエリの性格やらで結構モテてたんだろうな。
ぽやぽやしてるし、庇護欲をそそられたんだろう。
でもこれだから、必死のアピールも通じなくてイジメになったんだろうなぁ。
「誰が!
そのような不細工なドラゴン、好きじゃないわ!」
「いいのか?
エリはアースドラゴンだが、お前は未だただのドラゴン族だろう?」
人の形をとれるという事は、そのままでもかなりの強さなのが分かった。
「我とて! 名を奉じてくれれば、ニーズヘッグとしてユグドラシルを滅ぼせたさ!」
ニーズヘッグってアレだ、世界樹の根を噛んで終焉を迎えると言われてるドラゴンか!
「じゃあ、なんでエリを守ってやらなかった?
噛んだり痛い思いをさせたのは何でだ?!」
語気を強めて問いただせば、こいつもただのガキだった。
名前を貰わないとドラゴンって知能が進化しないのかよ?
「我を好きだと言わないからだ!」
「いやいや、違うだろ、それ。
噛んだり嫌な言葉を言ったりしたから、嫌われたんだろ?」
「我を嫌うようなドラゴンはいない!
我は美しく、強いのだから、愛されて当然だ!」
こいつの情操教育したの誰だよ。
「エリは、お前が怖いって。
痛い事するからいやだってよ?」
「そんな! まさか、本当に我を嫌っているのか?」
「嫌いです」
僕の方に置かれたエリの手は震えていた。
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