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しおりを挟む神社の神様みたいなのはちょっと言い過ぎかもしれないけど、せっかくこの世界があるんだからもっと身近でもいいいんじゃないかな、と思ってみた。
あのBLの神様みたいに、僕の為に動いてくれた優しいオネェ神様の様に。
「ユグドラ、その聖なるドラゴンはここへ戻ってきたりはしないの?」
「さぁ、あ奴も久方ぶりの自由だ、しばらくは戻らないのではないか?」
聖なるドラゴンってくらいだから、てっきり世界樹の何かなのかと思ったけど、そう言う訳ではなさそうだ。
「これ以上被害が出ないなら、ほっとけばいいか。
アシッド、パパ達の所へ行こう」
「はい、ラグ様」
アシッドが前を歩くのかと思ったら、抱き上げられてしまった。
「は? え?」
「この屋敷は以前ラグ様を軟禁状態にしたときに、窓をぶち壊したままですので足元が危のうございます。
それに、この役得はずっと待っていた私めにご褒美を下さったと思っていただけませんか?」
うう、それを言われたら……。
「分かった。
でも恥ずかしいから、早く下ろして」
「少しでも長く、と思いたいですが、ラグ様の嫌がることは致しません」
アシッドって僕を新興宗教の教祖かなんかにしたいんだろうか。
「そういえば、リカルドはどうしたの?
あの時ゲオルグがザクザク刺してたけど、多分自分では治癒魔法使えないんじゃないの?」
「あぁ、大丈夫ですよ。
この屋敷を使う事を条件に、私が治療致しましたから」
「そうか、それなら問題ないね」
「まぁ、多少は痛い思いをしてもらおうと、少しだけ治さずに残しましけど」
いや、それ、ダメでしょ!!
それに、アシッドの事が好きだから僕を軟禁しようとしたんだし、元々はアシッドが依頼っぽくリカルドに言ったのが発端でしょ!!
「アシッドが元々の原因なのに、それはリカルドが可哀そうすぎないかな?」
「この屋敷には温泉がありませんし、リカルド自身が力がないのが悪いのですから」
えぇー!! 言いきっちゃったよ、この人。
「いやでもさ、リカルドはそれなりに」
「ラグ様! もしやリカルドも側近に加えようと思ってらっしゃるんですか?」
「何でそうなるよ?
リカルドみたいなバカ、緑頭だけで十分だよ。
魔法もイマイチだし、剣技もイマサンくらいだし」
「ふふふ、確かにリカルドはもう少し努力をするべきでしたね」
アシッドが声を上げて笑った。
そういや、同級生だったな。
「アシッドは何か武器を使うの?」
闇魔法を使うのは分かっていたけど、あれは身体に何かしらの反動がある魔法で、殆ど呪いの様だとパパは言っていた。
「私は闇魔法と、ダガーナイフです。
あとは暗器ですね。
いろんなところに仕込んであります」
そう言ってカフス周りから、ヒュルンと音をさせて薄い金属のナイフの刃だけのような物を取り出すと、シュっと庭に向かって投げた。
ぎゅあ!
悲鳴が上がったのを見ると、魔獣? なのだろうか? 獣の様な物が転がっていた。
「あのように殺傷能力は意外と高いんですよ」
いや、僕が投げたってあんな風にはいかない。
アシッドの腕に加えて、多分、魔法でその威力を変えているんだ。
凄く繊細なコントロールで、あの1ミリにも満たない厚さの金属を、厚い毛皮で覆われた魔獣を一撃で倒せるんだ。
後でリカルドに回収させて今夜の食材にしましょう、とアシッドが言った。
「もしかして、今、この地震で食材が国民に回ってないとか?」
「それはどうでしょうか?
そこまで把握しきれておりませんが、作物は確かに厳しいでしょう」
「地殻変動があると、動物は逃げ出す習慣があるから、もしかしたらかなり深刻な食糧事情なんじゃないかな?」
じゃないとギルドや教会が炊き出しなんかしないだろう。
「後で、確認しましょう。
さぁ、ラグ様、下ろしますよ」
「ん、ありがとうアシッド」
そしてその足で、僕はパパがいる執務室へアシッドの案内で向かった。
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