モブですけど!

ビーバー父さん

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誕生日パーティーの間、ゲオルグともなんだかんだで離されていた。
 パパの許可もなくこの場でくっ付いていられる程、僕も図々しくないってだけなんだけどね。
 賛成できないって言われたら余計に、他の騎士団の人達の前でもあるし。

「ささ、ラグノーツ様!
 ここの温泉は赤茶色のお湯なんですよ」

「鉄分が強いんだね、きっと」

「鉄分?」

 ここでは鉄って鉱石の名前なんだっけ?

「アインス? だっけ?」

「アインス? 鉱山で採れる石ころですよね?」

 アインスの価値は石ころ同然だった。
 この世界じゃ魔石やら、オリハルコンやら、凄い鉱石で一杯だしな。

「ん、まあ、そうね、石ころだけど、人には不可欠な成分もあって、まあ、いいや」

 血液がとか言っても分からないだろうし。
 魔法が当たり前だと、化学とかそれ系はあまり浸透しないんだな。
 必要ないって言えば、必要ないもんな。

「ここの台所が、この温泉を出してる地底火山の熱を利用してるって、凄い仕組みだよね」

 話題を変えて、僕の少ない知識を暴露せずに済む様にした。

「この建物の作りは、表向き、つまり海側から認識できる部分は三階までですが、実際は奥にまだ未開の場所もあります。
 ここは自然の横穴を利用していた、何らかの生き物が生息していた跡に建てられたんだ」

 まるでカッパドキアみたいだな。

 全てが解明されてないのにこんな建物が建立されてたら、奥に何かいたとしても出られないじゃん!!
 それになんか怖いよ、変な生物とかいそうで。

「アシッド、もしかしたら奥の方で何かが棲んでるかもしれないじゃん!!」

「ああ、大丈夫ですよ。
 多岐に渡り過ぎているのと、はっきり言ってどこまで通じているのかも分からないんで、ロッシの敷地で地上から地下まで遮断結界が何重にも掛けられていますから、まずどんな魔獣も魔法が使える者も入り込めませんよ」

「でも! 年月と共に弱くなるとかあるじゃん!!」

 もう必死だった。
 貴方の知らない世界系とか、ナントカ探検隊系は、物凄く良く観てた。
 それこそ、会社早退したりしてでも観てた。
 録画すりゃいいじゃんって思うかもしれないけど、録画したってどうせ見ないなら、録画する必要性を感じなかったし! 何より、呪われそうで怖かったから! 録画出来なかった。
 当時はそういった録画系で映ってはいけないモノが入り込んでましたってのが多すぎて。
 なら、観るなよとよく言われた。
 正論だ、正論だけど観たいんだよ! 怖いもの見たさってやつだ。
 でも、でもだ! 現実に向かい合うなんて出来ない! だからこそ、果てをちゃんと解明したいとも思っしまうんだ。

「この国の人達に、この横穴がどうして出来たのか聞きたいくらいだ」

「それなら、明日にでも良く知る者を探して連れてきましょう。
 ラグノーツ様の知識、好奇心、何でも求めて頂ければ私が満足いく答えをご用意いたしましょう」

 アシッドのどこか死神じみた綺麗な顔が微笑んだ。

「いや、アシッド? その誰かを粛清とか殺すわけじゃないからね?
 成り立ちが知りたいなぁって、お勉強したいなぁって思っただけだから。
 この横穴って、免除資格試験にも、歴史書にも載って無かった事だから知りたいだけだよ?」

「成る程、そう言われればこの横穴は歴史にも出てきたことはありませんね」

「ここって見えない街なんてのもあったくらいだし、不思議な事とか伝説みたいなのが多そうな気がするから」

 アシッドも納得したように、では明日調べてきます、と言ってくれた。


 案内されて一階部分まで下りて横穴を進む様に建物の廊下から奥へと進むと、実際の建物はここで終わりだと言う様に一枚の扉が区切りをつけていた。

「ここからは横穴に続いている岩肌がそのまま出ていますので、足元はこちらの履物をどうぞ」

 屋外へ出たことが分かる。

「この岩肌、暖かい?」

「はい、昔の者がマグマで温められた海水の通り道を作ったようで、壁や床、台所などに利用しています。
 ですから、この距離でも暖かいままお部屋へ戻れます」

 カシリス自体、寒いまでいかなくても、平均気温は僕の育ったドアイスより数度低い。 
 だから発酵させる技術が進んだのかもしれない。
  
「この国での楽しみが増えたよ、アシッド」

 僕たちの後ろからセバスチャンにパパ、そしてゲオルグが着いて来ていて、何やら三人でも攻防が始まっている気配がしたけど、好奇心の方が勝ってスルーすることにした。

 あまり下に行き過ぎると、温泉として入れなくなるから、ほぼ同じ一階の奥に浴室が出来上がっていた。
 これ以上下に行くと、熱すぎる熱湯を建物中に回し壁や床を温め、マグマの高温を調節出来るように弁を付けて台所の火力へと回しているらしい。
 マグマでも溶けない様に魔鉱石を加工して更に強化魔法を掛け、強い鍛冶工に打たせた鋼材を使用してるそうだ。

 メンテナンスとか大丈夫なんだろうか?
 劣化とかしないのか、と気になってしまった。

「マイスターの鍛冶工が仕上げたので、魔力を流すだけで硬度を増すようになってるそうだ。
 凄い鍛冶職人が昔はいたんだよ」

 パパが付け足して説明してくれた。
 僕が不安に思ってる事を、何も言わなくても解消してくれた。

「すごいねぇ~」

 浴室の奥にも大きな洞穴状態の横穴が繋がっていたけど、目に見える先で遮断結界が張られているのが分かった。
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