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しおりを挟む「とにかく今は、ラグの誕生日を祝おう!」
パパは気持ちを切り替えたように、明るくパーティの開会宣言をした。
騎士団長達からお祝いをしてもらい、贈り物は五色の魔石が花びらの形に彩られ、ガーベラに似た花のピアスだった。
何で花? と思わなくもないんだけど。
耳たぶに絡みつく様にしっかり固定されたピアスは、騎士団長達のそれぞれのスキルを色のついた魔石がほんの少し内包しているらしい。
彼らのほんの少しが、大分な感じなのは気のせいだろうか。
「ありがとう、皆んな。
大事にするね」
ピアスを魔法で開けられた時はちょっと怖くて身構えたけど、装着されると彼らの優しさが体中を包むようにピアスから魔力が流れて来た。
「あ、ぁ、これは魔力が膜を作るように全身に流されてるんだ」
凄いなぁ。
「ラグ、お前は皆んなから愛されてるんだ。
そこをちゃんと覚えておくんだよ?」
パパは横に来て、ピアスの意味はもっと違う所にあるけど、今はその膜が僕を守ってるって感じるだけでいいって言われた。
このピアスを作るのに、多分パパも関わってるんだ。
「うん、きっとこの力が僕を守ってくれてるってちゃんと信じてるよ」
飲めや歌えの宴会で、僕も料理をした。
昼間に買っていた海鮮系の料理を出して、この国で手に入れた糠を使って魚の臭みを取った物を煮たり焼いたり、これって肉にも応用が効くから糠に塩やスパイスなんかを入れて肉にまぶして漬け込んでおくと、色々使える。
糠とスパイスが混ざった物を洗い流して、綺麗に水分を拭きとると、それを鍋に入れて出汁を取るために茹でる。
この時過剰な塩分がスープに出るから、このままシチューやスープにする。
ある程度塩分調整をした肉を鍋から出し、半分を細かく刻んでキノコなんかと一緒に煮込んで、研いだ米と一緒に入れて炊き込みご飯にする。
鶏五目だな!
半分はガーリックを加えてグリルにする。
それに野菜スティックに、味噌とマヨネーズお砂糖に七味を混ぜたソースで食べて貰う。
マヨは僕しか作ってないみたいだから、この世界では珍しい食べ物になるみたいで、騎士団の連中はマヨが食べられなくて辛かったと泣いていた。
泣くほどか!?
「肉もスパイスが良く滲みこんでるから、臭みは無い上に何でこんなに柔らかいんだ?
どんな肉も筋なんかがあって、どうやっても固い部分が出るのに!!」
「糠が発酵してくれて、スパイスや調味料を肉に浸透させてくれてるんですよ。
それにスープの出汁にするときに結構しっかり茹でましたからね、それで柔らかくなってるんですよ」
あとは僕が大好きなながらみを塩茹でして、大量な碁石みたいな巻貝をテーブルに並べると手に取って食べ方を見せたら、皆んな必死になってチマチマと大きな手で中身を引っ張り出して食べていた。
そして好きか嫌いかじゃなく、食べられないかもしれないからゲオルグにマグロとか刺身にしようと思っていた魚を鑑定してもらうと、新鮮なマグロ・生食向きとだと教えてくれた。
なので、食べやすいようにカルパッチョにしたり、僕とゲオルグは刺身が食べられるからお刺身も用意して醤油にワサビ、これを気に入った人が多くて意外と刺身にも抵抗が無かった。
「普通、生って嫌がられないかな?」
「野営の時敵がどこにいるか分からなくて、火が使えない事もあるから、生でボアを食べたりもするからな」
騎士団、ぱねぇ。
「そ、うなんだ」
お刺身に抵抗が無いのはそういう事か。
「この石みたいなやつ、癖になるな。
ちっさいけど、味もぎゅってしてて美味い」
「でしょ? 僕巻貝系が大好きなんだけど、この貝は一番好きなんだ」
食べにくいとか、小さいからってあまり売り物にならないって、かなり勿体ないって思うんだけど、人気が出過ぎて高騰してほしくないから、内緒にしておくんだ。
結構狡いな、僕。
今夜は泊まるけど、明日にはまた騎士団は帰って行くらしい。
僕らと行動を共にするのは、ヒューゴとユリアスが騎士団をちゃんと退団してパパに着いてきたと言っていた。
「さぁ、ラグノーツ様、温泉に行きましょう~」
アシッドが僕を恭しくエスコートしようとすると、パパがその手をチョップした。
「っ! 旦那様、でしたか」
「君は、私のラグとどういう関係だ?」
あぁ、そういえば、この家に着いてからアシッドを見かけていなかった。
「パパ、アシッドはセバスチャンの弟で、僕の護衛になってくれた人だよ」
「そうか、だが何も報告も挨拶も無かったな」
「旦那様、申し訳ありません。
愚弟アシッドは、暗部で表立って動くことが無いため、そう言ったマナーが出来ておりませんでした」
セバスチャンがすかさず非礼を詫びると、アシッドも同じように非礼を詫びた。
「ラグノーツ様という私の神の為に、この命を賭してお守りいたします。
以後お見知りおきを。
また、ラグノーツ様に不適切と判断した者は排除いたしますので、悪しからず」
パパは最初だけアシッドに敵意を向けていたのに、排除するって言葉を聞いた途端に、良く出来た弟だねとセバスチャンに笑いかけた。
これって、ゲオルグが不適切として排除対象になる可能性が出たんだろうか?
パパの笑顔が、ちょっと怖かった。
応援ありがとうございます!
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