モブですけど!

ビーバー父さん

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 ついでに、セバスチャンがやった耳や頬を治癒で治して、アシッドの体を確認した。

「大丈夫そうですね
 セバスとゲオルグはこれ、綺麗にしてよね?」

 にっこり笑って、リビングの惨状を指さした。
 もうね、辺り一面血が飛び散ってるし!

「あ、あぁ、すまん、ラグ」

「申し訳ありません」

 そして二人はまた、どちらが綺麗にするかで揉めていた。

「あ、ラグノーツ様は聖人なんですか?」

「違うよ、でも、他の人とも違うかも」

 戸惑い状況が掴めないアシッドに、人より魔力量が多くて、この国のカシリオスに狙われたと教えた。
 アシッドは鑑定魔法は持ってないんだ、と分かって少しホッとした。

 もし、上位の鑑定魔法が使えたなら、色々バレてはまずいものが書いてあるだろうしね。

「この、いや、こちらの犬? 
 喋る魔獣なんて聞いた事が無い」

 ミワが鼻面にシワを寄せて、不快感を露わにした。

「失礼な、魔獣と私を一緒にするな。
 私はラグ様を守護する聖獣、オオミワだ」

 グルッと唸った。

「聖、獣?」

「そうだ、貴様のような輩からラグ様を守るためにいる。
 貴様が寄越したリカルドとやらは、噛み殺しても良かったが、ラグ様のご意向を汲んでただの犬のふりをしたまでだ」

 そう言われて、アシッドは頭が追いついていないのがよく分かった。

「あの、先程の世界樹とは」
「アシッド様、そこは内緒です。
 知ってても良いことなんかないですよ」

 リビングは二人のおかげで綺麗になり、アシッドの腕は付いたし、僕はこれで色々終わった感満載だったんだけど。

「さぁ、アシッド?
 お前の判断でラグ様に刺客を差し向けますか?
 私が退けますけど、それでも良ければどうぞ?」

 セバスチャンが黒い笑顔で、ふふっと笑った。

「いいえ! 畏れ多い!
 ラグノーツ様は聖人なのですね!」

 え?

「私も、ラグノーツ様を守護する一人に加えて下さい!」

 あれ?

「私の今までの非礼、心からお詫び申し上げます!
 兄上の手足になって、ラグノーツ様を影からお守りしたい、是非!」

 おっと? 転がる方向が一周半くらい回った感じになってしまった。
 いつ、聖人になったんだよ!

「ラグ様、緑頭殿が今現在原因不明の異常があるなら、影の存在は必要不可欠かと。
 使える者は使った方が宜しいかと思います」

「兄上! 私にも漸く目標と言うか生き甲斐を見つけました!」

 生き甲斐はちょっと、どうなのよ。

「あの、アシッド様?」

「ラグノーツ様、アシッドと呼び捨て下さい。
 何なら、悪様に罵って頂いても!
 ああ、寧ろ蔑む様に踏んで下さい!」

 あ、この人ガチなやつだ。

「アシッド、ちょっと!
 ラグ様に変な事教えないで下さい!」

「ラグ、アレはダメだ、変態だ、見るんじゃ無い!!」

 ドMさんの変態仕様でしたか。
 今までの環境で、拠り所がそれになってしまってたんですね、きっと。
 
 はっ! もしかして!

「セバスは、ご褒美をあげてたの!?」

「!! ラグ!!」
「ラグ様! 違いますよ!」

 だって、指折ったり、耳飛ばしたり、頬っぺた削ぎ落としたり、そう言う痛いのが良いんでしょ?

「いいかラグ、こう言うのはプレイで、痛みとかそれもギリギリの快感を追うんだ。
 ただ痛いとか傷を作るものじゃなくて、愛情からするもので、」

「ゲオルグ、した事あるの?
 詳しいよね?」

「いや、大人の知識としてだな」
「いいよ、別に。
 僕は子供だし、大人のゲオルグに経験が無い方がおかしいんだから、気にしないよ?」

 本当はめっちゃ気になる!
 てか怒り出したいほどに気になる!

「ラグ、」
「だから、大丈夫だって!」

 これ以上は聞きたくなかった。
 痛みを快感で追えるくらい、深く繋がってた人がいたんだろうし、仕方ないよね。
 年齢は永遠に追いつけないんだから。

「ラグノーツ様、ゲオルグ先生はマルロイとその様なプレイをされていたという事かもしれませんね、調べますか?」

 アシッド、それアウト。

「ルール違反じゃないかな?
 アシッドはそう言う事に長けてるんだろうけど、僕は好きな人の過去の性事情は知りたくもないよ?」

 八つ当たりだけど、さ。
 すると、アシッドはそれがご褒美だったらしく、物凄く嬉しそうに頬を紅潮させて、うんうん、と頷いていた。

 こんな風にケンカとかしたい訳じゃない。

「ラグ、マルロイとは終わった事だ。
 それに、そんなプレイをした事も無ければ趣味じゃない!」

「うん、ゲオルグ、ありがとう
 でも、今はもう聞きたくないかな」

 笑えたと思う。

「アシッド、これからはこう言う事を口に出したりしないで欲しいんだ。
 僕は聞きたくない事や見たくない事をセレニアに散々やられたからね。
 分かってくれるよね?」

 アシッドは、ハラハラと泣きながら、すみませんと謝った。
 まだ、どこか精神が安定してないのかもしれないな。

「ラグ様、旦那様が到着する頃かと」

「うん、セバス。
 行くよ」

 僕はロッシの家に向かうことにした。
 報告義務を果たしに。

 アシッドを伴って、四人で向かう事になった。



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