モブですけど!

ビーバー父さん

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 ゲオルグが次男っていうのは聞いてた。
 有事の際に身代わりになるための存在だとも。
 髪の色は確かに一緒だけど、砂色に砂金を混ぜたような、確かに独特な色だと思ったのは今更だった。

 だって、こっちの世界って僕の前世の世界では有り得ない髪色に目の色をしてたりしてるから、皆んな独特過ぎてスルースキルを発動してたよ!

「カスターノ家の当主という事ですか?」

「正式にはまだ、だ」

 結婚とかが継ぐ条件とか?

「ここがカスターノ家縁の屋敷、という事ですか?」

 ニヤニヤ笑いながら、単純だな、と言われた。

 何コイツ! すげームカつくんだけど!!
 あれ、それなら僕がパパの息子だって知ってるって事?

「ゲオルグもどこでこんな子供拾ったんだか。
 小児性愛を持ってたとはなぁ」

 嫌な笑い方をする男だ。
 ゲオルグはこんな笑い方はしない。
 でも、拾ったって言い方なら僕がドアイス公爵の息子だとは知られていないのかも。

「失礼ですね、小児性愛って僕は十五歳ですから。
 貴方はこの国の騎士なんですよね?
 カスターノ家はドアイスの爵位を得て、ドアイスへの貢献をしなければいけない立場なのに、他国で騎士をしていたら家督は継げなくてあたりまえじゃないですか? 
 本当にゲオルグの兄弟ですか?」

 確かに似ている。
 でも身なりや言葉遣いのせいか、ゲオルグより大分年下に見えた。
 それに、カスターノ家は教育者を多く輩出して来た家柄で、こいつのような振る舞いはあり得ないだろ。
 二卵性のって所でうっかり信じかけたけど、こいつはゲオルグの兄弟じゃない、と僕の勘が言っていた。
 まぁ、ちょっと似てるだけで言われても気づかない程度だから、いくら二卵性でもねぇ。
 プッて笑ってやった。
 
「意外と賢いな坊主。
 俺は本当はゲオルグの従兄弟で母親同士が姉妹なんだ。
 リカルド・ティスタ、子爵家の次男だ」

 子爵ならロッシと同じだ。

「どういう事ですか?
 二卵性の双子でも何でも無いじゃないですか!
 それに、ゲオルグを呼び捨てするのは不敬ですよね?
 家格が違うしかも上の方を呼ぶには、いくら親戚でもそれは失礼すぎます」

 面白そうに馬鹿笑いしてるリカルドに、殊更腹が立った。

「あーらら、そこ言っちゃうか~。
 俺も、家督は継げるどうか分からないし、興味は無いから兄貴が継げばいいと思ってたんだけど。
 あのロッシ家のセレニアが、ゲオルグに似てるって理由で無理やり婚約を申し込んできてな。
 だったら、ゲオルグに申し込めってんだ! まぁ出来ないから俺んとこに来たんだろうけどな。
 お陰で、逃げて逃げ回って、この国に流れ着いてロッシ家のコネで騎士団に入り込んだのさ」

 コネってアンタ……、セレニアとの婚約がそんなに嫌って言っておきながらコネは使うんだ。

「ロッシ家との繋がりが欲しいなら、セレニアとうまくやれば良かったじゃないですか」

 それとこれは別だ、とか。

「ロッシとは実力で繋がりが欲しかっただけで、あの女は必要なかったんだ。
 それを、あのクソ女!」

 セレニアって、やらかし系の地雷だったか?
 確かに、あの時おかしい言動はしてたけど、精神支配でそうなってるんだって思い込んでいたのかもしれない。
 基本嫌いだから、どうでも良いって言えばどうでも良いんだけど。

「それ、僕に関係ないですよね?」

「あるぞ、お前をロッシ家が探していたから、恩を売るためにもここへ連れて来た。
 この国に来て大分経つけど、ゲオルグがこんなに長く滞在することは無かったし、見えない街騒動で騎士も警備兵も皆んな駆り出されてる時に、お前さんの噂を聞いたのさ。
 綺麗な顔をした銀髪で蒼眼のガキが、ギルドの受付嬢を見殺しにしたってな。
 しかも! あのゲオルグが恋人にしてるってんで、見たら探してる人物の特徴にぴったりだったってわけだ。
 そこの犬も一緒に手配されてるし、ホント丁度良かったわ。
 これでロッシとの繋がりも保証されたってわけだ」

 さっき迄のニヤニヤ笑いから、少し蔑む様な目つきをして吐き捨てた。

「あぁ、色々とちっさい男だってことだ。
 セレニアって僕も嫌いだったし、見殺しにしたかって言われれば気持ちの上では見殺しにしましたよ。
 でもね、僕に害を加えようとしなければ、今でも生きていたはずなんですよ。
 よりによって、ゲオルグに手を出したんですからね
 それでも再生させて貰って、諦めて貴方程度の男を掴んでおけば良かったのに、ね」

 僕はニッコリ笑って僕を殺そうとしたらですよ、と。
 心の底から、セレニアを憎いと思ったのは事実だから、見殺し、う~ん、微妙に違う気がするけど、周りから見てたらそんなもんか。

「面白おかしく伝わる噂なんてそんなもんですよね?
 貴方も、それに踊らされていてはロッシの配下を名乗る資格は無いと思いますよ?
 リカルド・ティスタ」

 リカルドにとっては、事実が何かなんてどうにでも良いんだ。





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