モブですけど!

ビーバー父さん

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 十五歳の誕生日の朝、ゲオルグと同じベッドで目覚める事が、凄く幸せだと感じた。

 前世でも恋人がいたのに、誕生日は一日前とか、後とか、軽くご飯に行くくらいで当日に祝って貰った事は無かった。
 ゲイだから、男同士だから手を繋ぐとか指輪とかそんなのも無いって諦めてたし、出来ないって思い込んでたから、特段どうと言う事はなかった。
 今にして思えば、彼女達へお金がかかるから、節約に使われていたんだろうなって今では分かる。
 だからこの幸せが、凄く貴重なものなんだって自分の中で思っていた。

 僕的に物足りないのは、僕が十八歳にならないと、ちゃんとしたセックスはしないって宣言されてる事。
 僕ばっかりが気持ちよくされて、ゲオルグはちゃんと服を脱ぐことさえしない。
 温泉で見た裸が最後だった気がする。
 いや、あれが最後だ!
 一緒に入ることもしないし、挿れないにしても手を使うとか口を使うとか、挟むだけ、とかその、やり方は色々あるじゃないか!
 段々体が大人になって来て、ゲオルグはあんまり興味が無いんじゃないだろうか?
 だって、子供の体の僕が好きだったのかもしれないし……、まさに変態だけどさ。
 やりたい盛りの猿の時期が来るのに、生殺しです。





「おはよう、ラグ
 誕生日おめでとう、今日で十五歳だな」

「おはよう、ゲオルグ
 そうだよ、大分体も大人になって来た」

 抱きしめてくれて、この辺の筋肉が締まってきたな、と言いながら脇腹をグッと掴んだ。

「ひゃっ!!
 あはは、や、やだ、くすぐったい!!」

「うむ、まだ子供だな」

 くそ~! 大分大人ですぅ!

 かなり大きいベッドで、二人でゴロゴロとひっくり返ったりしながらふざけていたら、そろそろ時間だと言ってゲオルグは起きだして洗面所へ行ってしまった。

「ちぇ、ゲオルグは小さい子供の僕しか興味が無いんだ…」

 そう思うと、早く年を重ねたいって思っていた自分が、今はゆっくり、もっとゆっくり大きくなれば良いのにと考える様になっていた。
 大人になってしまったら、ゲオルグは興味を失うかもしれない、そうなったら僕は今度こそ壊れてしまう気がした。
 大人にならない魔法でもかけてしまおうかって。
 でも体が成長しないと、魔力が暴走したとき体への負担が大きいらしく、緑頭が言うには耐えられる体じゃないと壊れてしまうから成長しないといけないそうだ。
 珍しく、緑頭が真面目な事を言っていた。

「ラグ、今日はどこかへ食事に行くか?」

「ううん、御馳走作って待ってるよ」

 本当は一緒にクエストに出たいけど、僕を狙う冒険者はまだ沢山いるらしくて、あまり外出もしていなかった。
 いつもゲオルグが一緒に買い物とかしてくれるけど、それだと今日みたいな日の特別メニューは難しいから、見送ったらミワなんかと買い出しに行くつもりだ。

「分かった、急いで終わらせて帰る」

「うん、行ってらっしゃい」

 出がけのキスにしては重い、本格的なキスをして、ゲオルグは出て行った。







 朝の市場は新鮮な魚介が沢山並んでいて、その中でも僕の好きな貝類が凄くあった。

 ながらみに似た貝を見つけたときは凄く嬉しくて、そこにあったのを全部買った。
 これ塩ゆでにして千枚通しみたいなので刺して取り出すと、肝まで美味しいんだよね。
 貝殻は中身のわりに硬くて、碁石みたいな音と重さがする。
 これ多分間違いなく、ながらみだ!!

「お兄ちゃんはお家の手伝いかい?
 その貝って食べにくいし、あんまり売れないから、半額でいいよ」

「ほんと!!?」

 好みだから仕方無いとは思うけど、これ食べ始めると僕はずっと食べ続けられるのに、勿体ない。

「ありがとう!」

 他の魚はお刺身というかお寿司が前提だけど、ゲオルグに鑑定してもらってからじゃないとちょっと怖いんだよね。
 前にサバの昆布巻きの時はもう煮ちゃってたからいなかったけど、買い物しながらゲオルグが鑑定すると、寄生虫の棲み処って出るらしいから。

 棲み処って!

 なので、足が速いって日本でも言われてる魚とか、殆どがいる前提のサバとかは、ゲオルグ同伴じゃないと買えなかった。

 マグロが食べたいなぁって思ってたら、種類が一緒ってわけじゃないけど、びんちょうマグロっぽいのとか、キハダマグロみたいな小さめのがいて、これは買うしかないでしょう!と。
 あとはカニ! 今夜はカニも食べちゃうもんね!

 それに初のスポンジケーキに挑戦してみることにしたんだ。
 蒸しパンみたいなのでもって思ってたけど、せっかくバニラがあるんだし、失敗したら生クリームで適当にデコって食べようって思ってるんだ。
 
 なんて色々メニューを考えながら市場を回っていたら、お約束みたいにガラの悪そうな冒険者たちから絡まれてしまった。

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