モブですけど!

ビーバー父さん

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 訓練場にはギルドの中にいた冒険者が全員集まって来たようだった。

「さて、ここにいるラグノーツ対希望者全員と一斉に戦う。
 ルールはない!
 全てクエストとおなじだが、報奨だけは違ってゲオルグだ。
 お前らはラグを倒せ、ラグはコイツらを倒せ、それだけだ!」

 これだけの人数を倒す? 殺す? したら冒険者いなくなるんじゃないかな?

「あの!」さん

「なんだ、ラグノーツ?」

「これだけ、と言うか全員殺したら冒険者の数が足りなくならないですか?」

「ぶはっ!!
 確かに!
 では、ラグノーツは手加減してやってくれ。
 うっかり死んでもそれは仕方ない、冒険者だからな!」

 ギルマスはゲラゲラ笑いながら、確かにいないと俺たちに掛かって来て面倒だな、と言った。

「兄さん!! ムカつくこのクソガキ!」

 倒すって殺すじゃないのか、戦闘不能? でもそれじゃあ納得しないか。

「さあ、スタートだ!」

 考え事をしていたら、始まってしまったので、取り敢えず自分の周りに物理的な結界を張っておいて、身体強化を掛けた。

 一斉に魔法や武器で襲い掛かって来られたので、風魔法でまず地に足がついてる人の足を落とした。
 これで、ほとんどの人が戦闘不能だけど、まだ弓とか魔法を使おうとする人がいるので腕を爆発させた。
 これはシュタインが使ったトルネードの結界玉じゃ無くて、それぞれの腕にトルネードを巻き付けた改良版で首なら即死だ。
 あのマイナはちょっとムカつくので、トルネードで髪も切り落とした。
 髪留めが必要ないようにね。

 うん、僕も大概、意地悪だな。

 腕も、足も落ちてその痛みでぎゃあぎゃあと煩いから、口もついでに縫いつけた。
 魔法も詠唱出来ないし、無詠唱でくる魔法使いには、その人だけまとめて結界玉に入れて水で満たした。

「終わったかな?」

「あー、うん、圧勝だな。
 どうにもならんな、こりゃ。
 ゲオルグ、怖い嫁さん貰ったな」

「最高だろ? 私のラグは」

 ゲオルグが満面の笑みを湛えた。

 ギルマスは冒険者たちに向かって異議のある奴はいるか? と聞くと、マイナが落とした足を投げつけて来た。
 だけど結界があるので、大分手前で落ちた。

「では、首を落としましょう」

 トルネードを首に巻いた。

「んー!!!、んー!」

「異議があるんでしょう?」

 ギルマスが止めるかと思ってたのに、止めないし。

「仕方ない、それで反省してください」

 首に巻いたトルネードを少しずつ上に上げて、顔も髪も舐めるように剃刀のような鋭利さを持たせて剃り上げた。

「はっはっは!!
 マイナ、喧嘩を売った相手の技量もわからない奴は、二流もいい所だ!
 その程度じゃ、冒険者としても二流だな」

 ギルマスは結構マイナに怒っていたのか、やり過ぎとも言われず、丸坊主にしたマイナを笑った。

「どうする? ゲオルグ、これ治した方がいいよね?」

「ギルマス的にはどうなんだ?」

 採択はギルマスに任せた。

「そういや、朝のごめんなさいをしてないよな、コイツら」

 あ、そう言えば。

「なら、手足は戻して、皆んな坊主にしましょうか。
 反省は坊主って決まってますからね」

 全員、剃刀トルネードで毛を刈らせて頂きました。
 はい、眉毛もまつ毛まで全部ね。
 
 あー、全員スケキヨさんに見える。
 湖だか滝壺だかで逆さになってる人いたら、何とかの一族っぽいな。

「口は反省した人だけ外れるようになってますから」
 
 そう言ってすぐに外れたのは半分くらいで、マイナは当然外れなかった。
 
 こりゃ、うん、もう外れなくていいんじゃね?

「あ、マイナさん、反省しようがしなかろうが、貴方の髪は一生生えない、それで良いですよね?
 だって、僕、貴方が気持ち悪くて嫌いだから」

 ギョッとした顔をギルマスも、他の冒険者もして、縫い付けられた口が外れた人も更に増えた。

「あー、そりゃそうだが、女にそれは」

「え? 女だと、クエストも手を抜いてくれるんですか?
 女だと、僕のゲオルグに体を押しつけて子供を産むとか言っていいんですか?
 それ、何の呪文ですか?」

 ギルマスは、しまった、と言う顔をした。

「あぁ、そうだったな。
 何度も離れろとも、約束も無ければ、何も無いと言ってもしつこかったな」

「不愉快って意味知ってます?」

 ゲオルグと二人で、ギルマスとマイナを追い詰めた。

「俺も悪かった!」

「煩い!」

 ギルマスの口も縫いつけた。

「お稚児さんになれとか、ミワを殴るし、卑怯な足止めをするわ、ギルマスにも反省して貰わないと」

「それだ、お稚児さんな!
 私がラグを探してるのを知ったうえでお稚児さんとして他の者に与えようとか、見えない街の結界にやろうとしたのは、お前のこの妹の為なんだろ?」

 あ、そうだったんだ。
 魔力量も高いし、世界樹の土地も何とか出来るし、結界に入れちゃえばゲオルグには見つけられないし、妹も喜ぶじゃん! って考えたのか。

「益々、兄妹そろって、つるっ禿げでいいですよね?
 はげマス、良いじゃないですか!」

 うん、語呂もいいじゃん、冒険者をハゲマスギルマス!

「いっそ、禿げギルドにしたら?」

「そうだな、私が隣に冒険者ギルドを作るか」

 え? ギルドって簡単に作れるの?

「ギルドは本来なら街に一つですが、不祥事があったり、不正があれば他に作ることが認められています。
 この二人は不正を働いていましたので、全てのギルドに報告済みです。
 ですからゲオルグ様がギルマスになられても問題はありません」

 カウンターのお姉さんが現れて、淡々と告げた。

「いや、恨み買いそう」

「そうだな、殺しとくか」

「ちなみに不正って?」

「ランクです。
 本来なら、昇格すべき方を昇格させず、このマイナの様な者を昇格させたり、更には報奨金を少なく提示したり、です」

 兄妹揃って、バカだったわ
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