モブですけど!

ビーバー父さん

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 連れて行かれた所は、ゲオルグが冒険者をしていた時の常宿だと言われた。
 簡素な寝泊まりするだけの部屋、そのベッドの上に座らされた。

「どうして一人で出て行った?」

 真実の口を使われたら意味がない。

「……」

「ダンマリか、真実の口は最初の時以外使用していない。
 ラグ自身の口からちゃんと聞きたいと思ったからだ」
 
 僕の肩を掴んで、抱き寄せられてその行為が何を意味してるか理解して、体を硬くした。

「私が憎い、か?」

 何で?

「そんな!」

 そんな訳ない、そう答える様に体の力を抜いて、ゲオルグの胸に凭れ掛かった。

「こんなオッサンが何を言ってるんだろうなぁ、自分でもビックリしてる」
 
「先生は、オッサンじゃないです、よ?」

 僕はゲオルグの顔を見上げた。

「愛してる、私のものになれ」

「僕が、蒼月の瞳でも、ですか?」

 真実の口で知っていた情報を、ゲオルグは一度も追及して来なかった。
 何度も、それこそ懇願する様に、頼ってくれと言い続けてくれていた。

「蒼月の情報が無さ過ぎて、私にはよく分からないが、ラグが何者であろうが、変わる事は無い」

 力強くその言葉を聞かされて、僕は嬉しかった。

「蒼月の瞳は、世界樹を再生する者らしいです。
 それは各国の王族や上位貴族にしか知らされていない、奇跡の力を持つ伝説の人という事で、守護する二人が付いてるんです」

 僕は笑って話した。
 ゲームのシナリオなんか関係ないって神様も言ってたのに、何でかなぁ、蒼月フラグを折っても折っても、事あるごとに立つんだよなぁ。

「あぁ、あまりにも物足りない守護者がな」

 脇で、ミワも緑頭も弱くない!と猛抗議をしていたけど、ゲオルグはスルーした。

「だから何だ?
 ラグは蒼月の瞳の力を使って世界樹を再生させたら死ぬとかなのか?」

 あれ? そういや、使うとどうなるの? 僕。

「世界樹の意思が決める」

 緑頭が話しを続けた。

「再生した世界樹は我らと同じ様に、学習しなければならない。
 その為に、多分、ラグを取り込む筈だ」

 そうなんだ。
 なあんだ、僕、誰かと同じお墓に入るんじゃなくて、世界樹の一部になっちゃうのか。

「僕は、いなくなるって事なんだ。
 なあんだ、好きな人と最期は同じお墓にって思ってたのになぁ。
 ゲオルグ先生、一緒のお墓は無理そうですよ?」

「墓に入るなら私が先だろう?」

「不老長寿とかないですか?
 魔法で時間を止めるとか?」

「お前、まだ十四だろ?」

「そうなんですけど、何だかんだで十五歳にあと数ヶ月でなっちゃいます」

 現実逃避なのか、現実を再確認してるのか分からないけど、そうか、蒼月の瞳って結構酷いな。

「おい、お前ら、暫くどっか行っとけ。
 いいな?」

 ゲオルグが急に凄んで来て、ミワも緑頭もうんうん、と頷いて消えた。

「よし、行ったな」

 そう言うと、結界を張ったのが分かった。
 多重結界? 

「あの?」

「ラグ、さっき一緒のお墓には入れそうも無いと言ったよな?」

「はい、蒼月の瞳が世界樹に取り込まれるなんてしらなかったので」

「お墓は好きな人と入りたいんだよな?」

「はい、一生一緒にいて、同じお墓に入りたいです!」

「私に一緒のお墓に入れない、は好きな人である私と入れないって事だよな?」

 あ、れ?

「無意識の方が、素直だな」

「え、いや、ゲオルグ先生の事じゃないですよ~」

 違う、違うけど、本当は違くない。
 だって、家族みたいなセバスチャン以外に、キスもそれ以上も許したのは、ゲオルグだけなんだ。

「諦めろ、私はもうラグの気持ちを知ってしまった」

「まだ、何も言ってません!」

「なら、言ってくれ」

「……ズルいです、よ」

 俯く僕の頭に、ゲオルグがキスをした。

「まだ、何も言ってないのに」

「なら早く言って」

 この銀縁メガネの奥にある瞳が、笑いながら催促する、言ってしまえば楽になるって。

「私はもう何度も告げた、お前を本気で愛してるんだ」

「知ってます、何度も聞いたから」

「なら言えるよな?」
 
 もう!ズルい!

「嫌いじゃないです」

「不合格だ」

「好き!
 もう、嫌いなぐらい好きですよ!!」

 瞬間、後頭部を支えられて深くキスをされた。
 息も何もかも全てを飲み込んで、僕の不安さえも取り上げてしまう様に。

「はあー、やっとだ。
 やっとこの腕にいる」

「あの?」

「お前、私がどれだけ不安と焦りで追いかけて来たか分かってないだろ?!
 その顔を隠していても、あの頼りない奴らがいたとしても、ラグ自身が誰かを好きになっていたら、と思うと生きた心地がしなかった」

「大袈裟ですよ」

 もう一度、きつく抱きしめられて、僕の肩に顔を埋めるゲオルグが可愛いと思ってしまった。



 
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