96 / 219
95
しおりを挟む連れて行かれた所は、ゲオルグが冒険者をしていた時の常宿だと言われた。
簡素な寝泊まりするだけの部屋、そのベッドの上に座らされた。
「どうして一人で出て行った?」
真実の口を使われたら意味がない。
「……」
「ダンマリか、真実の口は最初の時以外使用していない。
ラグ自身の口からちゃんと聞きたいと思ったからだ」
僕の肩を掴んで、抱き寄せられてその行為が何を意味してるか理解して、体を硬くした。
「私が憎い、か?」
何で?
「そんな!」
そんな訳ない、そう答える様に体の力を抜いて、ゲオルグの胸に凭れ掛かった。
「こんなオッサンが何を言ってるんだろうなぁ、自分でもビックリしてる」
「先生は、オッサンじゃないです、よ?」
僕はゲオルグの顔を見上げた。
「愛してる、私のものになれ」
「僕が、蒼月の瞳でも、ですか?」
真実の口で知っていた情報を、ゲオルグは一度も追及して来なかった。
何度も、それこそ懇願する様に、頼ってくれと言い続けてくれていた。
「蒼月の情報が無さ過ぎて、私にはよく分からないが、ラグが何者であろうが、変わる事は無い」
力強くその言葉を聞かされて、僕は嬉しかった。
「蒼月の瞳は、世界樹を再生する者らしいです。
それは各国の王族や上位貴族にしか知らされていない、奇跡の力を持つ伝説の人という事で、守護する二人が付いてるんです」
僕は笑って話した。
ゲームのシナリオなんか関係ないって神様も言ってたのに、何でかなぁ、蒼月フラグを折っても折っても、事あるごとに立つんだよなぁ。
「あぁ、あまりにも物足りない守護者がな」
脇で、ミワも緑頭も弱くない!と猛抗議をしていたけど、ゲオルグはスルーした。
「だから何だ?
ラグは蒼月の瞳の力を使って世界樹を再生させたら死ぬとかなのか?」
あれ? そういや、使うとどうなるの? 僕。
「世界樹の意思が決める」
緑頭が話しを続けた。
「再生した世界樹は我らと同じ様に、学習しなければならない。
その為に、多分、ラグを取り込む筈だ」
そうなんだ。
なあんだ、僕、誰かと同じお墓に入るんじゃなくて、世界樹の一部になっちゃうのか。
「僕は、いなくなるって事なんだ。
なあんだ、好きな人と最期は同じお墓にって思ってたのになぁ。
ゲオルグ先生、一緒のお墓は無理そうですよ?」
「墓に入るなら私が先だろう?」
「不老長寿とかないですか?
魔法で時間を止めるとか?」
「お前、まだ十四だろ?」
「そうなんですけど、何だかんだで十五歳にあと数ヶ月でなっちゃいます」
現実逃避なのか、現実を再確認してるのか分からないけど、そうか、蒼月の瞳って結構酷いな。
「おい、お前ら、暫くどっか行っとけ。
いいな?」
ゲオルグが急に凄んで来て、ミワも緑頭もうんうん、と頷いて消えた。
「よし、行ったな」
そう言うと、結界を張ったのが分かった。
多重結界?
「あの?」
「ラグ、さっき一緒のお墓には入れそうも無いと言ったよな?」
「はい、蒼月の瞳が世界樹に取り込まれるなんてしらなかったので」
「お墓は好きな人と入りたいんだよな?」
「はい、一生一緒にいて、同じお墓に入りたいです!」
「私に一緒のお墓に入れない、は好きな人である私と入れないって事だよな?」
あ、れ?
「無意識の方が、素直だな」
「え、いや、ゲオルグ先生の事じゃないですよ~」
違う、違うけど、本当は違くない。
だって、家族みたいなセバスチャン以外に、キスもそれ以上も許したのは、ゲオルグだけなんだ。
「諦めろ、私はもうラグの気持ちを知ってしまった」
「まだ、何も言ってません!」
「なら、言ってくれ」
「……ズルいです、よ」
俯く僕の頭に、ゲオルグがキスをした。
「まだ、何も言ってないのに」
「なら早く言って」
この銀縁メガネの奥にある瞳が、笑いながら催促する、言ってしまえば楽になるって。
「私はもう何度も告げた、お前を本気で愛してるんだ」
「知ってます、何度も聞いたから」
「なら言えるよな?」
もう!ズルい!
「嫌いじゃないです」
「不合格だ」
「好き!
もう、嫌いなぐらい好きですよ!!」
瞬間、後頭部を支えられて深くキスをされた。
息も何もかも全てを飲み込んで、僕の不安さえも取り上げてしまう様に。
「はあー、やっとだ。
やっとこの腕にいる」
「あの?」
「お前、私がどれだけ不安と焦りで追いかけて来たか分かってないだろ?!
その顔を隠していても、あの頼りない奴らがいたとしても、ラグ自身が誰かを好きになっていたら、と思うと生きた心地がしなかった」
「大袈裟ですよ」
もう一度、きつく抱きしめられて、僕の肩に顔を埋めるゲオルグが可愛いと思ってしまった。
1
お気に入りに追加
2,336
あなたにおすすめの小説
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる