95 / 219
94
しおりを挟む「ラグノーツ、あと、もう一つ言い忘れたことがあるんだけどな」
この期に及んで何を言うんだ?
「何ですか?」
「んふふ、えーっと、この子の口から離してくれたら、教えるよ」
「それは聞いてから僕が決めます」
「そう? じゃぁ言わないでおいても良いんだけど。
ゲオルグってさぁ、結構、いやかなり執着してるよなぁ?」
何でゲオルグの名前がギルマスから?
「何ですか?それ」
ギルマスを睨みつけても、まぁ向こうはもっさり髪で全く見えて無いだろうけど、一応全身全霊で睨んでみた。
「教えな~い」
何なんだよ、このオッサン!!
「ミワ、噛んで良いよ」
ミワが牙を立てた瞬間、その横っ面にギルマスの拳が入った。
「ミワ!!!」
そして体を反転させて、その牙から外れた。
「ふぃ~、ヤバかった、いや、マジで死ぬと思ったわ」
腐ってもギルマスかよ!
ミワが体勢を立て直して、グルルルル、と低い唸り声を上げて威嚇した。
「ミワ、大丈夫?」
「ウォン!!」
「ギルマス、ミワを殴ったのは許せないです」
「え、だって噛んで良いって言われたら抵抗するでしょ?」
「その前に、無理矢理引き留めようとしましたよね?」
「それは、まぁ、ね。
でもほら、ラグノーツが強いの知ってたし」
だからモジモジすんな、オッサン!!!
「ゲオルグの名前が出るのは何でですか?」
「冒険者なら皆んな知ってるぞ、SSランクのゲオルグ・カスターノ、虐殺の魔闘士とも言われてる元筆頭教官ゲオルグ。
二年前、いや、三年?前に冒険者になってあっという間にランクはSSだ。
そんな有名な奴が冒険者になってまで探していたのはラグノーツ、当時十二歳の子供だ。
しかも、世界中のギルドと言うギルド、職に隔てなく捜索依頼が出てんだわ」
は? は? 何だそれ?
カスターノって、侯爵家にいた気がする。
「それが僕とは限りませんよ」
ラグノーツなんて名前はいくらでもいる、そう思わないと怖い。
「十二歳で学校免除資格保持者は、お前しかいないな。
さっき照合が済んだって言ったろ?
ゲオルグに見せて確認したさ」
「見せ、た?」
「あぁ、ギルドには緊急事態に備えて、世界中に通信できるように魔道具が整備されている。
さらに、空間移動を使用禁止されているのは、世界が混乱しないように、だがギルドは緊急性のある情報が想定される為に、その権限を与えられているのが、ギルドマスターなんだ。
そして、ギルドに登録したランクプレートを通じて冒険者と連絡を取ることが出来る、この意味が分かるか?
坊主はもう、ゲオルグに見つかってんだよ、せっかく足止めしてたんだもう少し待ってたらアイツが来て、お前を虐殺するのかもなぁ」
クソ!!
「緑頭!!」
「ラグ、すまん」
緑頭を見ると、ゲオルグに捕まっていた。
おい、精霊王のくせに捕まってんなよ。
「ラグ様、お乗り下さい!
突破します!」
「ミワ!」
その体を普段の二倍以上にして、僕をその背に乗せてくれた。
「ラグ!!! 待て! 待つんだ!!!」
待てるわけないだろ!!
外へミワが駆けだそうとした時に、ゲオルグに僕は足を掴まれてその背から引き摺り下ろされてしまった。
バランスを崩して、大きなミワの背から落ちると思ったら、ゲオルグの腕に抱き留められて捕まった。
「ラグ、ラグ!」
その力強い腕は、僕をしっかり抱きしめてキスをされた。
「ぁ!」
皆んなの前で!!
噛みつくように口を塞がれて、今までとは違う舌を絡めて根元を吸い上げて、僕の劣情を誘った。
「や、ぁ!」
「ラグ、ラグ……、愛してるんだ」
今までも本気だとずっと言われていたけど、こんなに焦ってるゲオルグは初めて見た。
「ゲオル、グ、先生」
ゲオルグは僕の腕を掴んで、冒険者ギルドの連中に金貨を投げつけて、依頼は達成したと言いながら連れ出した。
その後ろでは金貨を受け取ったギルマスが、呆然と見送っていた。
「貴様! ラグ様を放せ!!」
ミワが唸りと共にゲオルグに襲い掛かった。
「やめろ、ミワ!
私はラグを傷つけるつもりはない!」
「だが、ラグは嫌がっているではないか!」
緑頭も拘束を解かれて、僕たちを追いかけて来た。
「ゲオルグ先生!!」
「ゲオルグだ、何度も言ってる!」
だって、ゲオルグって呼んじゃったら、もう、僕は。
「離して!」
「離さない!」
緑頭も、ミワも、ゲオルグを止めようと必死に挑むけど、今まで一緒にいた仲間にその牙や、攻撃をするのに躊躇いがあった。
「お前が何かを抱えているのは分かっている。
だからこそ、私を頼って欲しい、頼むから、頼ってくれ」
「分からない、ですよ」
「分かっている、お前と再会した時に記憶操作をした理由を聞いた、あの時に真実の口を使った。
だから、ある程度は分かってるつもりだ」
まさか、そう、か……、何度か聞き返されていた。
「どこまで、分かってるんですか?」
「態と狂信者を演じて、魔力の秘密を知ろうとした時に、蒼月という単語をひた隠しにしようとしていた」
蒼月、それで精霊王と聖獣がって言ったのか。
1
お気に入りに追加
2,336
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる