モブですけど!

ビーバー父さん

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「ラグノーツ、あと、もう一つ言い忘れたことがあるんだけどな」

 この期に及んで何を言うんだ?

「何ですか?」

「んふふ、えーっと、この子の口から離してくれたら、教えるよ」
 
「それは聞いてから僕が決めます」

「そう? じゃぁ言わないでおいても良いんだけど。
 ゲオルグってさぁ、結構、いやかなり執着してるよなぁ?」

 何でゲオルグの名前がギルマスから?

「何ですか?それ」

 ギルマスを睨みつけても、まぁ向こうはもっさり髪で全く見えて無いだろうけど、一応全身全霊で睨んでみた。

「教えな~い」

 何なんだよ、このオッサン!!

「ミワ、噛んで良いよ」

 ミワが牙を立てた瞬間、その横っ面にギルマスの拳が入った。

「ミワ!!!」

 そして体を反転させて、その牙から外れた。

「ふぃ~、ヤバかった、いや、マジで死ぬと思ったわ」

 腐ってもギルマスかよ!
 ミワが体勢を立て直して、グルルルル、と低い唸り声を上げて威嚇した。

「ミワ、大丈夫?」
「ウォン!!」

「ギルマス、ミワを殴ったのは許せないです」

「え、だって噛んで良いって言われたら抵抗するでしょ?」

「その前に、無理矢理引き留めようとしましたよね?」

「それは、まぁ、ね。
 でもほら、ラグノーツが強いの知ってたし」

 だからモジモジすんな、オッサン!!!

「ゲオルグの名前が出るのは何でですか?」

「冒険者なら皆んな知ってるぞ、SSランクのゲオルグ・カスターノ、虐殺の魔闘士とも言われてる元筆頭教官ゲオルグ。
 二年前、いや、三年?前に冒険者になってあっという間にランクはSSだ。
 そんな有名な奴が冒険者になってまで探していたのはラグノーツ、当時十二歳の子供だ。
 しかも、世界中のギルドと言うギルド、職に隔てなく捜索依頼が出てんだわ」

 は? は? 何だそれ?
 カスターノって、侯爵家にいた気がする。

「それが僕とは限りませんよ」

 ラグノーツなんて名前はいくらでもいる、そう思わないと怖い。

「十二歳で学校免除資格保持者は、お前しかいないな。
 さっき照合が済んだって言ったろ?
 ゲオルグに見せて確認したさ」

「見せ、た?」

「あぁ、ギルドには緊急事態に備えて、世界中に通信できるように魔道具が整備されている。
 さらに、空間移動を使用禁止されているのは、世界が混乱しないように、だがギルドは緊急性のある情報が想定される為に、その権限を与えられているのが、ギルドマスターなんだ。
 そして、ギルドに登録したランクプレートを通じて冒険者と連絡を取ることが出来る、この意味が分かるか?
 坊主はもう、ゲオルグに見つかってんだよ、せっかく足止めしてたんだもう少し待ってたらアイツが来て、お前を虐殺するのかもなぁ」

 クソ!!

「緑頭!!」

「ラグ、すまん」

 緑頭を見ると、ゲオルグに捕まっていた。
 おい、精霊王のくせに捕まってんなよ。

「ラグ様、お乗り下さい!
 突破します!」

「ミワ!」

 その体を普段の二倍以上にして、僕をその背に乗せてくれた。

「ラグ!!! 待て! 待つんだ!!!」

 待てるわけないだろ!!

 外へミワが駆けだそうとした時に、ゲオルグに僕は足を掴まれてその背から引き摺り下ろされてしまった。
 バランスを崩して、大きなミワの背から落ちると思ったら、ゲオルグの腕に抱き留められて捕まった。

「ラグ、ラグ!」

 その力強い腕は、僕をしっかり抱きしめてキスをされた。

「ぁ!」

 皆んなの前で!!
 噛みつくように口を塞がれて、今までとは違う舌を絡めて根元を吸い上げて、僕の劣情を誘った。

「や、ぁ!」

「ラグ、ラグ……、愛してるんだ」

 今までも本気だとずっと言われていたけど、こんなに焦ってるゲオルグは初めて見た。

「ゲオル、グ、先生」

 ゲオルグは僕の腕を掴んで、冒険者ギルドの連中に金貨を投げつけて、依頼は達成したと言いながら連れ出した。
 その後ろでは金貨を受け取ったギルマスが、呆然と見送っていた。

「貴様! ラグ様を放せ!!」

 ミワが唸りと共にゲオルグに襲い掛かった。

「やめろ、ミワ!
 私はラグを傷つけるつもりはない!」

「だが、ラグは嫌がっているではないか!」

 緑頭も拘束を解かれて、僕たちを追いかけて来た。

「ゲオルグ先生!!」

「ゲオルグだ、何度も言ってる!」

 だって、ゲオルグって呼んじゃったら、もう、僕は。

「離して!」

「離さない!」

 緑頭も、ミワも、ゲオルグを止めようと必死に挑むけど、今まで一緒にいた仲間にその牙や、攻撃をするのに躊躇いがあった。

「お前が何かを抱えているのは分かっている。
 だからこそ、私を頼って欲しい、頼むから、頼ってくれ」

「分からない、ですよ」

「分かっている、お前と再会した時に記憶操作をした理由を聞いた、あの時に真実の口を使った。
 だから、ある程度は分かってるつもりだ」

 まさか、そう、か……、何度か聞き返されていた。

「どこまで、分かってるんですか?」

「態と狂信者を演じて、魔力の秘密を知ろうとした時に、蒼月という単語をひた隠しにしようとしていた」

 蒼月、それで精霊王と聖獣がって言ったのか。
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