モブですけど!

ビーバー父さん

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 夜中、いや、明け方の国境では警備兵も夜勤が辛いらしく、嫌味を言われつつも学校免除資格は印籠の様に使えた。

 うん、凄いな!
 それに前みたいに止められる事が無かった。
 だって、年齢が追いついて来てるんだもーん!!

 成長っていいなぁ!!
 ここだけの話、薄っすらと生え揃ってきたんだよ!
 ただ、銀髪だからあんまり目立たない。
 こう、ガツンと男らしい感じじゃないんだよね。

「朝日が昇ってきたね!」

「はい、小さな村の様な町が見えますが、寄りますか?」

「そうだね、ちょっとだけ見たいな」 

 僕はミワから降りて、ゆっくり歩きながら町へと近づいた。




 近づくと緑色の稲が、キラキラと穂を揺らしていた。
 田んぼだ! 稲作だ! これ、もしかしたらお餅とか、山側に行けば蕎麦とかも採れるんじゃない?

「凄い! 綺麗だし懐かしい!」

「ラグ様は、この作物をご存知でしたか?」

「うん、前世でね」

 田んぼや畑のある生活なんか一度もした事なかったけど、懐かしいなあと日本人には馴染みのある風景なんだなあ、って感慨深くなっていた。

「ラグ様、人が来ます。
 私は消えた方が良いですか?」

「ううん、ちょっと体を小さくして大型犬くらいに、そう、そんな感じ」

 ミワが少しだけ小さくなれば、綺麗な白い神秘的な犬になった。

 ただの影にしか見えなかったものが、段々と近づいてくると、肌の色は浅黒く髪は僕と同じ銀髪で、綺麗な赤い瞳をした精悍な若者だった。
 自分の見た目は子供だけど、中身は二十六歳だからね。
 それよりも若く感じたんだ。

「よお、こんな町へどうしたんだ?
 坊主の親はどうした?」

「おはようございます。
 独り立ちして、職を探しにこの国へ来たところです
 稲が凄く素敵で、見惚れていたんですよ」

「はあ、こんな朝早くから、いつ来たんだ?」

「夜明け前に国境を超えて来ました」

 もしかしたらこの田んぼは彼のかもしれないな。

「夜明け前でも、ここまでは数時間はかかるだろう?」

「僕、体が小さいのでこの子に乗せてもらい、ここまで来ました」

 ボルゾイの様な体躯の大型犬に見えるし、僕みたいな小さいのはすっぽり隠れてしまうくらいの大きさで、そんなに無理がある話でもない。

「すげーな、こりゃ
 坊主のか?」

「はい、家の子です」

「そうか、なかなか立派な従者だな」

 若者はニカッと笑うと、どこまで行くんだ?と聞かれた。

「取り敢えず、住み込みで働けるところを探して、働きます。
 お金を貯めたらまた、違う国へ行きます」

「一つのところには落ち着かないのか?」

「色んな国で美味しいものを食べたいと思ってるので」

 彼はそんなに小さい体だと、この辺りでは雇って貰えないだろう、と言われた。

「やっぱり王都へ行くしかないですね」

「王都は城下へ入るだけでも通行料がかかるぞ?
 お金はあるのか?」

「少しなら。
 あとは働きながら、考えます」

「そうか。
 じゃあ、王都で会うかもしれないな」

 このお米やらを卸してるのかな?

「僕はラグノーツです
 王都で会ったら、よろしくお願いします」

「ああ、俺はキアヌート・カシリオス
 キアラでいい」

 家名があるなら、貴族で自分の領の見回りだったのかな? 
 貴族なら離れるに越したことはない。

「失礼いたしました。
 カシリオス様、知らなかった事とは言え、無礼な行い、心から謝罪致します」

「ラグノーツ、君は貴族の元で働いた事があるのか?」

「少しだけ、厨房で働いた事があります」

 嘘ではないし。
 て言うか、貴族が野良作業みたいな格好で田んぼの畦道歩いてるなよ!

「なら、王都でもやって行けるな」

「ありがとうございます。
 では、先を急ぎますので」

 僕はもっさりした髪の隙間から、口角を上げて会釈をした。
 ミワに乗ると普通の犬程度の速さで、キアヌートから離れた。

 後ろを振り返らずに、とにかくこの長閑な町を抜けて、轍のある道へと出ると脇の草むらへ入り、周りに人がいないのを確認してからミワの体を大きくした。

 そうか、この先人に会うたびにミワの体の大きさを変えさせてこんな風にするのか。

「ラグ様、先ほどよりもう少し大きければ、乗せていても問題ないかと思われます。
 大型犬の育ちすぎで説明しては如何でしょう?」

 ミワってほんと賢い!
 見た事ないって言われても、世界には魔獣がいるんだし、そこまで変には思われないだろう。

「そうだね、それで行こう! 
 お昼までには王都に着きたいね。
 それで美味しいもの食べたいなぁ~」

 あ、住むとこが先か。

 和食っぽいのがあるといいな、特にお刺身系!!
 
 城下町へ入るための門で、同じように身分証明書を提示させられて、通行料に銀貨一枚!! も取られた!!
 ミワの分はその半分で、首輪を付けさせられた。
 これは仕方ないかな? とは思うけど。
 これ住んでる人は小銅貨一枚なんだって!
 なんで?
 出る時にもお金がかかるって事?

 なんか、納得いかない。

「坊主、この辺は凶暴な魔獣が多くて、討伐しないといけなかったりするから、その為の安心料なんだよ。
 この門はそれらを入れない為の城壁だ」

「出入りには時間制限もあるんですか?」

「そうだ、朝は日の出から、閉まる時間は夕刻だ」

 随分ざっくりした時間だな。

「早く閉まる時もある?って事ですか?」

「天気が悪ければ、開かない事もある」

 天候にも左右されるのか。
 ならあの小さな町は?

「ここへ来る途中、作物が沢山ある町を通りました。
 あそこは大丈夫なのですか?」

「あそこを通れたのか?」

「はい、キアヌート様と仰る方がいらして……」

「マジか!?
 あそこは結界があって、普通は入れないんだ。
 作物を育てる為の町で、魔獣や悪い物、それに余所者は町の存在すら分からなくされてるはずなんだ。」

 え、何それ。
 ヤバい?僕。

 




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