モブですけど!

ビーバー父さん

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「証拠や現状のすり合わせに時間が掛かってしまい、申し訳なかった。
 そこのシュタインはソロレートと養子縁組をひそかに行っていた。
 しかも、辺境伯が襲われる直前に! 王弟が処刑されると踏んで、次を見つけていたんだ!
 彼が王位に就けば、ソロレートに益々権力を与えてしまう事になる!」

「あぁ、それで、今夜、ソロレートが王弟殿下に面会を申し込まれていたのですね?
 その場で殺すか……何にせよ、自死を促してお手伝いするように、ですかね?」

 良かったのか悪かったのか、証人が出てきてしまいました。
 先走ったかもと思ったけど、やっぱり、と言うか思ったより最悪だった。
 認知した父親にも知られずに養子縁組って、成人してるならそこは確かに自由だし、爵位が無ければただの平民を変わらない。
 それこそ自由だから。

「地位を欲しがるのは分らなくもないんだが……、王位ってなると違うのではないかな?
 爵位があればかなり都合がいい方向へと動くだろうが、果たして君が思う様に人は動くだろうか?
 第一、王族の教育も受けていないのに、諸侯たちが黙って君を王位に就けるとは思えないのだが。
 だから当初私たちは、王弟殿下を処刑してシュタイン君を王位にと言う計画でしたが、蓋を開けたら大分違っていた。
 私の間諜では数年に及ぶ確執までは調べられなかったようです。
 人の感情は時として、強く人を縛ってしまう物ですよね、テリアナ公爵バインリフト宰相」

 パパが冷静に、バインリフトに確認を取りつつ、シュタインに疑問を投げていた。

「私たちは外国人だから、君らの国政に口を出すことは出来ないけど、既に大分被害に遭ったからその為の謝罪は欲しいかな?
 王弟殿下は落籍と言う処分で今は平民と同様だ。
 シュタイン君も爵位を頂いていないと言う事と、既に平民と養子縁組をしてしまっていることで新たに爵位を授かることは難しいだろう。
 では、どちらの罪が重いか?
 それは国民に対してではなく、私や息子に対しで、と考えたらおのずと答えは出ますよね?」

 にっこり笑うパパに、バインリフトもテリアナも、ハッとした。

「辺境伯様の腕が落とされたのは、王弟殿下の指示によるもの、と聞いてますよ、私は。
 私のトルネード結界が盗まれたのです」

「王弟殿下は指示をしていたのですか?」

「私は、ソロレートの一味の者から、ご子息を襲ったと聞き、辺境伯も後を追わせたと聞かされた。
 だが、殺しが成功したと言う報告が無かったので、無事だったのではと確信をもって、探りに行きました。
 大袈裟に騒いで、私が処罰されればこのように名前を使われることも無くなると」

 確かに、おかしな騒ぎ方をしていた。

「片や、私にその結界玉を渡してきたのは、シュタイン君が殺したんですよね?」

「はい、辺境伯の腕を落としたと聞いて許せなくて」

 ゲオルグがそこで、魔法を展開させた。
 何で?

「真実と大分違うようだ」

 その場に流れたのは、シュタインの心の声?の様だった。
 本心って事?

『失敗してこっちまで逃げて来たら、足がつくじゃないか』
『殺したのは一人じゃないに決まってるだろ、ずっと、ソロレートに囲われてたんだから』
『暗殺する前に金品は取り上げて、逃亡したように見せかけておいたさ』
『殺した経験も無い奴が、なんておめでたい事言ってるんだ』
『こいつが辺境伯の息子で、殺し損ねたガキだったのか』
『俺がずっと先にゲオルグ先生が好きだって言ってたのに、こんなもっさりした奴のどこが可愛いんだよ!』

 これだけのことが、パラパラと降りかかる紙吹雪の様に、部屋にいた全員の頭上で発動された。

 コレ何の魔法?
 ゲオルグって、本当に凄い。

「だから、私は確認したぞ。
 本当に一人だけなのか、何をさせられていたのか、ともな」

「くそ、その時に真実の口を使ったんですね」

「あぁ、生徒が良く嘘をつくので、大抵の教官は確認する際に使う」

 繰り返し確認する事で、蓄積されていくらしい。
 学校の先生って大変だったんだな。
 シュタインはがっくりと肩を落とし、バインリフトに向かって、ソロレートへ行かされる俺を守って欲しかった、とだけ告げてセバスチャンに拘束された。

「ラグの警戒心が足りないとは、こういう事だ。
 今回は美味く王弟が捕まったり、話の真実が聞けたりしたから良かったが、常識に疎いと言う事が良く分かった」

 あー、確かに、僕はちょっと偉そうにしてました、はい。
 恥ずかしい事に、自分が言ってる事カッコいいくらいに思ってましたよ。
 事実が違う何てこと頭にも無かったし、表面的な状況ばかり追ってました。

「ゲオルグ先生、すみませんでした」

「大丈夫だ、私が守れば良い事だ」

 えっと、それは、また……。

「さて、色々露呈して話が変わってしまったが、諸侯たちにも話して国民の意志を問うてみるのも良いかもしれないな」

 ここから先は自分たちは関与しないと宣言して、宰相に公爵は帰し王弟殿下にはこの先の国の産業を考えてもらう為に食事に招待した。
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