モブですけど!

ビーバー父さん

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「テリアナ公爵殿、如何なされた?」  

「いえ、失礼いたしました。
 我が家へお越し頂くためには、どの様にすれば宜しいでしょうか?」

 態度が軟化した?

「行きませんよ。
 いま、ここで召し上がりませんか?」

 パパ!?

「しかし、あまり」
「昼餐ですよ、変わりありません。
 どうぞお座りください」

 僕は急いで、パパの前に席を作った。
 
「いえ、そんな」

「さて、貴方の奥方の話しを聞きましょうか」

 テリアナ公爵は、顔色を変えた。

「妻の話しとは、面白い。
 流石は他国の方だ」

 紙のように笑顔を貼り付けたテリアナ公爵が、怒りとも憎しみとも思えない様な声音で返した。

「奥方と国王の関係、もしくは貴方と国王の関係、と言った方がよろしいか?」

「なっ!」

「貴方がたの国にも優秀な間諜がいるでしょうが、うちのはもっと優秀でね
 貴方が隠しておきたい事も調べてくるのですよ」

 セバスチャンがパパには報告してあったんだ。

「何を仰っているのか分かりません」

 テリアナ公爵の前にカレーとラッシーのグラスを置いた。

「王弟殿下は貴方の奥方の腹を借りたに過ぎない、という事ですよ。
 国王の子が欲しかったのでしょ?
 男同士、しかも国王とではひた隠しにするしか無かったでしょうし。
 借り腹の為に誰も奥方には逆らえないのですね
 ある意味、裏の女王と言うところですか」

 は? 国王とテリアナ公爵が恋人関係?

「ソロレート商会の頭目が奥方の兄上でしたか」

「そこまで……」

 ため息を吐いて、ポツリと話し始めた。

「国王陛下とはずっと関係があり、愛し合っていました。
 秘密の関係ですから、姿を偽り市井で逢瀬を重ねておりました。
 その時懇意にしたのがソロレート商会です。
 相手は誰か知らなかったと思います。
 だが、ある時、それはバレました。
 私の身分などどうでもいい、だが、国を統べるあの方には、と。
 ソロレート商会は、自分の妹を娶り取引をする様に要求して来ました。
 だが、大きい商会とはいえ平民、遠い親戚の養女にして、そこから娶ることにしました。
 その時すでに国王には女の子が生まれていましたが、お世継ぎに悩まれていました。
 私は彼との子が欲しい、彼はお世継ぎが欲しい、彼女はより強固な地盤が欲しい、利害は一致しました。
 たとえ女の子であっても、私が育てられる、もし男の子で有ればその子は、遅くに生まれた弟にすれば、継承権なども得られる、なので二人で彼女を抱いたのです。
 子を成すためだけに」

 気分が悪くなった。
 子供ってキーワードは僕にとって本当に嫌なワードだし、命を利用して自分を相手にとって一番にしたいだけじゃないか!

「王妃、側室以外から生まれた非嫡子など騒乱の種にしかなり得ませんしね。
 その頃はまだ、先代国王はご健在で?
 王族の中での密約でもあった、そんなところですか?」

「そうです。
 私はあの方を愛している。
 一人で生きて行く事も考えた、でも、諦めきれなかった」

 何言ってんの?
 好きなら何してもいいのか?!

「それは国民を巻き込んでまでする事でしたか?」

「私たちは愛し合っていたから、その選択しかなかった」

 そんな訳あるか!

「都合の良い愛ですねぇ」

 ハッと顔をあげ、パパを睨む様にテリアナ公爵は見つめた。

「貴方に何が分かる!?」

「分かりません。
 私は国の為に愛する妻と子供を犠牲にしましたから」

 にっこり笑ってテリアナ公爵をバカにした。

「私は三人、王弟殿下の子を育て、爵位も領地も、全て引き継がせるためだけに存在しました。
 それが妻と一緒になれる条件でしたからね。
 そしてたった一人だけ、子を成す事を許されましたが、面白く思わない連中から妻も暗殺され、子も毒を盛られたり、事故に見せかけ傷ものにされたりと、まあ、潰しても良いと思うくらいには国のためにして来ましたよ?
 貴方は何をしましたか?
 貴族の力で、何を成しましたか?
 愛だの恋だのを国民の犠牲の元に貫くのが美談だとでも?」

「そんな、ただ」

「ただ?
 貴方は私人ではない!
 公人だろうが!!
 世継ぎにかこつけただけの、自分の存在を主張したかっただけだろうが!!」

 パパは違う立場だけど、王族に沢山のものを犠牲にさせられたんだ。

「貴方に何が分かるんだ!
 愛する者と一緒にいられたんだ!
 私は!」

「私がいつ、いられたと言った?
 十四年、我が子を抱きしめることも、撫でることも、優しく声を掛けることもできず、敵の見張りがいる中での生活で、死なせない様に動くことしか出来ない苦しみが貴様に分かるか!
 自由にあのようなバカを作り上げ、国民を苦しめ、果ては生ゴミを食べさせる様な、そんな物は苦しみでは無い!自業自得だ!」

 パパは拳をテーブルな叩きつけていた。
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