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しおりを挟む一通り聞いて、とりあえずの部分は分かったので、今回は解散にした。
アグナがいう言葉を信じるなら、長い時間の接触はあまりよろしく無いし、何より、僕らが信用していなかった。
「裏が取れるのはすぐだから、そっちも宰相と話しをする場を設けて貰えるかな?」
パパがアグナに言って、それを了承した。
僕達はアグナには見張りをつける事にした。
緑頭の眷属の何かで使えるのを聞くと、見張らせるなら、虫が最適だと言われた。
僕の嫌いな虫だけど!! と思っていたら、小さな羽を持つ、本当に虫みたいに小さな妖精だった。
緑頭が言うには、妖精と精霊は違うんだって。
こんな風に小さくて、実体を持つ子達は妖精、スピリチュアルな存在が精霊で力が強くなると緑頭みたいに、実体を持つ子もいるんだって。
有名な所でドライアドは精霊の上位らしい。
眷属の虫、は本当の虫なんだけど実際に緑頭が使うのはこの妖精だって。
だから、緑頭の言う虫は妖精の方だから問題ないとか勝手に言ってたな。
ふーん、て聞いて、まあ、虫の形してなきゃ大丈夫だ。
アグナは食べ物の味に飢えていて、アイスが気になって仕方ないみたいだったから、手持ちにあった飴をあげて、宰相との会談の段取りがついたら、アイスを持って来ると約束した。
「アグナを家に入れるのは、まだ信用出来ないし嫌だなぁ。
緑頭のちびっちょは、どんな感じ?」
「ラグともリンクしているんだから、自分で聞いてやれ
あ奴らは、蒼月の」
「あー、そうだったね!
僕から聞いてみるね!」
すぐ、緑頭は蒼月って言っちゃうし、もう少し黙っておく様に言わなきゃ。
<あー、ラグしゃま、このアグナって凄く弱虫でしゅよ>
「まぁ、弱虫なのは分かってるけど、不審な動きはない?」
<見張ってる人、いましゅよ? どうしましゅ?>
「アグナを見張ってるって事?」
<はい、そうでしゅ>
「どんな人なんだろう……」
<精霊王しゃまを通せば、見れましゅよね?>
おい、緑頭、そんな説明してないよな?
なんか手を抜いてって言うか、ここから自分は動きたくないって感じがしてしょうがないんだけど?
「水の玉を作るから、そこに映せ」
<はい、精霊王しゃま、この人が見はってましゅ。 ずーっとアグナにくっついてましゅ>
妖精が映した人物は、テリアナから晩餐の招待を持ってきた使用人だった。
「こいつ、あの時の……?」
「間違いないですね。
テリアナの使用人を名乗った者です」
セバスチャンが確認をした。
「なんで、テリアナの使用人がアグナの家に入り込んでんだ?」
僕たちに接触したのを知っているから?
「テリアナとここの父親に兄貴が繋がってるんだろ?
で、こいつが俺たちに絡んだって事は伝わってるんだろうし、確認するだろうな。
結界魔法も使ったし、外から探れなかったんだろうから」
ユリアスがあの時の状況を思い出しながら言った。
当然、扉の外で中を伺うだろうし。
「うまく、誤魔化して伝えられると良いけど」
<会話も繋ぎましゅか?>
「是非!!」
<はい、ちょっと聞こえにくいでしゅけど>
『どこまで探れたんだ?』
『襲撃犯を捕まえると言ってました』
直接的に言うのはそれだけ長く、この家とテリアナの癒着が深いという事だろう。
しかも、使用人風情が貴族の子息にこの口のききようは……。
『私は、疎まれているから襲われても仕方ないと言ってやりました。
それに、臭くて不細工な奴が作る料理なんて碌なものじゃないとも』
言われたな、確かに。
『そうか、あのガキが作るものは見たのか?』
『見れて無いです』
この力関係に違和感しかなかった。
「セバス、この使用人がテリアナの当主だと思うんだが?」
この違和感を使用人じゃないという事は、ここにいる全員が感じていたが、当主だとは思いつかなかった。
パパがあの時言ったのは、『テリアナ公爵様ですか?』だ。
「え? だってパパも使用人に言っても無駄だって」
「そこまで確信があったわけじゃないんだが、この映像と会話を聞けばご本人としか思えないだろう?」
確かに不遜な物言いではあった。
それだけで、パパは公爵本人だと気づいたのか。
『何を話した?』
『王弟殿下の処罰は、この国にある、とは言ってました』
『ふむ』
テリアナ公爵は逡巡すると、明日にでももう一度晩餐に招待するか、と呟いてアグナの部屋を出て行った。
「明日また、誘われちゃうみたいですけど、どうします?」
ホーク達がニヤニヤ笑いながら、指示を待っていた。
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