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しおりを挟むひとつだけ安心したのは、ホーク達は爆発に巻き込まれてなかった。
犯人に、シュタインに繋がる手掛かりを追ってたけど、多分、使用人も無理じゃ無いかって思ってる。
あの試験の時に見ただけでも、シュタインの魔法は凄かったんだ。
「ヒューゴ、ホーク達では追えないと思う」
「そうだな。
シュタインが使った使用人なら、処分されてておかしくないからな」
ゲオルグの意見も同じだった。
この王宮にどのくらい今回の事件の関係者がいて、どのくらい間諜がいるのか……。
「とにかく、もうすぐ戻ると思いますよ」
「そうだね、ヒューゴ」
セバスチャンも部屋を片付け終えた事だし、お昼の準備に取り掛かった。
この部屋用の厨房で、用意しておいたパスタの生地を伸ばし薄くしたら、三、四センチ角にマス目を作るように切って、一枚、一枚、真ん中をつまんでギャザーを寄せてくっつく様に握ってリボンの様な、蝶の様なパスタを作った。
空間魔法でパスタソースの鍋を取り出して火にかけると、焦げない様にゲオルグに混ぜさせた。
いつもなら、セバスチャンか緑頭なんだけどね。
空間魔法だと時間も止まるんだけど、料理は匂いも大事だから、一々火にかけたり仕上げはここでやる様にしている。
大鍋にお湯を沸かして、適当に塩を入れて沸点を高くするのと、パスタに塩味を軽くつける目的で少し多めの塩で茹でる。
グラグラと沸騰したとこに、生パスタを入れて浮かび上がってから、ギャザーが出来ている辺りの色が変わったらザルに引き上げて、ソースと和えて、最後に彩のスナップエンドウを乗っけて出来上がりだ。
飲み物はサッパリとレモン水を冷たくしたシンプルな物と、フルーツ。
そろそろ匂いに釣られてホーク達、帰ってこないかな?と考えていたら、ドヤドヤと気配がするから、戻ってきた様だった。
「只今、戻りました。」
ホークの声がして、部屋の入り口を覗きに行くと、三人が戻って来ていた。
「お帰りなさい、ホーク、ロメオ、コーニッシュ」
「ラグ! もう飯の時間か、忘れてたわ」
時間的な部分が抜け落ちるくらい、必死になってくれていたという事だろう。
「食べながら、報告を聞こう」
パパの指示で皆んながテーブルの席に着いた。
「生パスタ、フルーツ、レモン水です。
疲れた時に、クエン酸は必須ですからね」
「クエン酸?」
「ああ、レモンの酸っぱいのが、疲れた体を癒すんですよ」
クエン酸なんて言っても分からないよな。
「熱いうちに食べてくださいね」
其々に行き渡ると、食事の挨拶で始まった。
「イタダキマス!」
鶏肉とパスタを突き刺して一緒に食べる人と、スプーンで掬って食べる人と分かれたけど、最終的にはソースも全て掬って食べてた。
「美味い、なんでこんなに美味いんだ!
この小さなリボンみたいなのも、コシがあって更にソースがしっかり絡んでるし、鶏肉についてる少し甘めな下味と、塩気をちゃんと出してるこのソース、それに時々口に当たる甘い何かが、丁度マッチしてて、物凄く次が食べたくなる!」
「中の甘いのは栗という木の実を茹でて剥いたものを、砂糖で煮たシロップ漬けです。
食感も残すために、敢えて砕けるままにして、刻んだりはしてないので、好みの方は大きい栗が入っていたら、アタリですよ」
皆んなが、アタリの大きさを競っている中で、コーニッシがポツリと呟いた。
「この国はこんな美味い食材もあるのに、な」
ユリアスも同じ様に感じたらしく、その言葉を拾った。
「地位とお金が先になると、美味いものが食べられないなんて」
残念だよな。
チーズと味噌って凄く合うし、発酵食品だから、体にも良いのに。
クリームチーズの味噌漬けも作ろうっと。
「特別な何か、じゃなくて、誰かと食べたり楽しく食べることが一番なのに」
僕は楽しい時間になれば、食べる物なんて正直なんでも良いんだけどな。
シンプルに剥いただけのグレープフルーツ、木苺に手を出す頃、ホークが口を開いた。
「追いついた使用人は、何者かに殺された。
ドアイス様と同じ様に、引き裂かれた様に、だが今回は確実に首を狙って殺された。
あの近く、もしくは見える場所からの遠隔で放たれた魔法かもしれない」
「シュタインなら遠隔も可能だろう。
見えてないと狙った場所を攻撃することは出来ないんだな?
ドアイス様の時はピンポイントのように、握った腕が切り落とされたが、実はそうでは無く規模の問題だったのかもしれないな」
目視できない分、あまり大きいとパパの部屋なり手なりに渡るまでに失敗する可能性が高いから、規模を小さくしたら狙うはずの部位までは届かなかったって所か。
「精度は、低いな」
ゲオルグが、ふっと笑いながら付け足した。
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