モブですけど!

ビーバー父さん

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 本来の治癒は欠損した物を再生は出来ない。あと病気も治せない。
 だけど、僕の治癒は前世の記憶とスキルで治癒というより、病院なんだ。
 外科だったり内科だったり整形だったり、だからこそ、理から外れている自覚があった。
 
 神の加護なんて聞こえは良いが、裏を返せば異端だ。 誰からも貰える羨望であり、疎まれて仕方ない物でもあるのだ。

「ラグ」

「シーッ、パパを治せるのは僕だけだからきっと騒がれちゃうけど、秘伝とか何とか誤魔化して、ね。」

 治癒は完璧だった。
 腕は再生しゲオルグの治療で、全ての傷は回復したんだ。

「ラグ、ラグノーツ、私は軽率だった。
 お前がどれだけ頑張って、今までの生活を守ってきたか、本当には理解していなかったんだな」

「パパ……」

 そんな事ないって言葉は出てこなかった。

「ドアイス様、大丈夫なようであれば部屋へお連れします。 ラグの美味しいご飯が待ってますからね」

 ヒューゴがその場の雰囲気を変えてくれて、傷は綺麗になってるので、この国の医学に貢献する必要はなかった。

「お、担ぎますか? 抱っこしますか?」
 
 揶揄うように言うと、歩ける!とパパは強く否定した。
 ホーク達が心配だとヒューゴに訴えていたら、殺しても死にやしないと言い、先に戻ろうとパパに言うから、BL目線で見てしまった。

 !これは! ヒューゴ×パパ? まさかの?
 ヒューゴになら、パパを任せても良いかもしれない。

 いや、無いな。多分。
 正解の恋愛なんてないし、恋愛だからこそ、変わるものだ。
 まして、ここはあのオネェ神様のBLの世界だしな。
 
「ゲオルグ、助かった」

「いいえ、点数稼ぎですからお気になさらず」

 クールな笑いを浮かべてゲオルグが、パパに負担にならない様に返事をしてた。
 こう言うとこ優しいんだよな。

「ヒューゴ、やっぱりホーク達が気になるよ!
 大体王宮の貴賓室で普通はこんな事ないでしょ?
 パパにこんな事して、許さないから!」

 昨日の今日で、こんな警備しかしないこんな国、あの王弟を育てただけあるわ

「ラグ、私もホーク達を見ていないし、気になっているんだ」

「パパも知らないのなら、絶対探す!」

 貴族と護衛では医療室が違うのは分かるけど、他国の護衛なのに。 

「ラグもドアイス様も落ち着いて、ユリアスがあの部屋で起きた事をトレースさせているから、どういう状況だったか分かるから」

 ヒューゴがユリアスのスキルを教えてくれた。
 状況を把握するために、その場で会った事なんかをトレースする事が出来るって教えてくれた。

「なら早く戻ろう」

「さっきから、そう言ってたんだけどなぁ」

 ヒューゴが肩をすくめるけど、そんなスキルがあるなんて聞いてなかったんだからしょうがないだろ!

「ラグ、私たちは護衛を彼らに任せたんだ。戦略とかそういった事は彼らがプロなんだから、そこは従うべきだったな」

「そうだね、パパ」

 焦り過ぎて、周りが見えて無かった。
 ヒューゴが先頭、僕とパパが歩いて後ろをゲオルグが歩いて、部屋へ戻った。

 
 爆発が起きたにしては小規模というか、ピンポイントだったのが冷静になってみたら分かった。
 パパの腕を飛ばしたのと切り裂かれたマント、それにパパの体の傷が風魔法を詰め込んだ何かを破裂させたようだというのが、ゲオルグの見解だった。
 実際、ユリアスがトレースしたのもそうだった。
 簡単に数十秒を可視化されていたけど、セバスチャンが扉を開けて使用人からトレイに乗った水晶玉のような物を受け取って、それをパパに見せて手を伸ばして掴んだ瞬間爆発したようだった。
 ちゃんと爆発する相手を選んだような、掴んだからなのか。

「風魔法を詰め込んでる。ナイフの様に鋭くしたトルネードが水晶玉のように小さな結界に入れられて渡されたんだ」

 ゲオルグが見ただけで分析してくれた。
 さすが教官だよね。

「出来なくはないが、難しいな。」

 この魔法、見た事ある。
 もっと規模が大きいあの試験の時に。

「ラグも思い当たったか」

「はい、見た事あります」

 紫色の頭がやってた。

「シュタインはこの国の人間だったな、確か」

 ドアイスが一目置かれてる理由も、全世界で資格証が通用する理由も、全てはあの学校システムなんだ。
 世界の貴族の子女や才能が認められた者が、あの学校に行くことでエリートとみなされる。
 それ程の教育機関なのに十二歳から十八歳までのわずか六年の間しか、チャンスが与えられない。
 こぞって貴族の子女をあの学校へやりたがり、才能のある子供を探し出して送り込むことが、どこの国でもステータスであった。

 留年は許されないから、単位が取れないという事は退学しかなく、その後は普通の学校へ通うことになる。
 それが貴族なら、実質、平民となったようなものだった。
 普通学校は平民が行き、ドロップアウト組は通って卒業しても、爵位も無ければ家督も継げなくなるから、ロッシ家のような影の仕事を請け負うになるのが一般的だった。

 ロッシ家はこういった影社会の頂点で、ドロップアウトしたような影は、当然雇われる事はない。
 ドアイスの学校を上位の成績で出たようなエリートが、ロッシに雇ってもらおうと必死になる。
 影社会ではロッシがステータスだから。
 二流、三流の影は大抵ドロップアウト組だと言っても過言ではないくらい、ロッシ家の信用度は不変だった。

「シュタインは平民でドアイスへ才能を見出されてきた者だったが、卒業後はこの国へ帰って職に就いてるはずだが……」

「紫色ってそうだったんだ」

「あの魔法は、シュタインが作った、と考えて間違いないだろう。
 卒業から二年、ずいぶん上達してるな」

 現場で鍛えられてるって事か。

「ホーク達は?」

「これを持ってきた使用人を追ったようだ」

 セバスチャンがいるからって事だろうけど、ロメオもコーニッシュも行くなんて。

「コーニッシュは足跡を追えるんだよ、ロメオは目が良い。
 ホークは力任せに捕まえて来るさ」

「でも、相手はあの紫なら、難しいかもしれない」

「捕まえられても、使用人だけだろうな」

「それなら、俺が使用人の記憶をトレースすればいい」

 そっか、トレースってすごいスキルだな。




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