モブですけど!

ビーバー父さん

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「最初っから、パパって言ってます!」

「え?だってお前、ロッシ家の落胤だろ?」

「あの家はロッシ家の物ですけど、僕はパパの子です」

「え?
 ラグって、公爵の隠し子?」

 そうなったか。
 学校免除試験の時は既に平民って言ってたし、今だって、パパは辺境伯になったけど、僕は平民だしね。

「ラグは自分から平民になったのだよ。
 ボンクラ王子と婚約破棄をしてな」

「ボンクラと婚約…
 あ、あぁ、そりゃ逃げるわ」

 なんか茫然としてるけど、これでちゃんと理解してくれたよね。

「学校免除資格は、平民になってもちゃんと働けるように取りました。
 嘘はついてないですから」

「ラグ、すまなかった。
 私は、どこかで平民だからと思っていたところがあったと思う。
 君の過去など考えずに行動した私が全面的に悪い。」

 潔く深々と頭を下げるゲオルグに、大丈夫ですよ、と。

「公爵、非礼の数々をお許し願いたい」

「貴方が誤解していた、と言う事でその謝罪を受け入れました」

 良かった、二人とも大人だ。

「改めて、ラグを娶りたい」

「いえいえ、ラグは大事な息子です。 
 私も将来は平民になり、親子で慎ましく暮らしていくつもりですので」

「では、私がその生活も支えましょう
 伴侶として」

 この攻防は埒が開かないし、取り敢えずセバスチャンに家の内装を変えた事を報告しておかないと。
 
「セバス、ダイニング広すぎたから、カウンターキッチンを併設したんだ。
 そこで鉄板料理が出来るようになったから、早く帰ってきてね」

「ラグ様、それは構いませんが、ゲオルグ先輩と住むと言う事ですか?」

「建物って事ならそうなるけど、あの人は緑頭とミワがしっかり一緒の部屋で監視してるよ」

 そう、それに結構仲良しなんだよな、あの三人。

「そうですか、ミワなら安心ですね。
 ミワ、これからもちゃんと監視して下さいね」

「任せてくれ。
 ラグ様を守るのが私の使命だ」

 この毛並みのいいモフモフがまた、真面目で凄く可愛い。
 昨日なんか、照り焼き食べて、凄い涎なのにちょっとずつ食べるんだよ?
 勿体ないから少しでも長く味わいたいって。
 可愛くて、今までが可哀そう過ぎて、沢山追加で焼いてあげたくらいだよ。

「ミワは僕の大事な子だからね!」

「ラグ様!!」

 ぎゅーって抱きしめてあげた。
 うふふきゃっきゃで、ミワとじゃれてたら、昨日と同じ音が騒がしく近づいてきた。

 バターン!!!

「ドアイス辺境伯!
 今日こそ私の料理人の料理を召し上がっていただこう!
 貴方の料理人は不幸な事故で亡くなってるのだから!」

 あぁ、言っちゃった。
 何となくそこまで言うなら隠れようかな、と思ったら、セバスチャンが僕を後ろに隠した。
 ミワは聖獣らしく、ちゃんと姿を消したよ。
 そんな事出来たんだね。

「おや、どうなされた?
 料理人の一人が死んだかもしれないが、そう沈まないでくれ」

「王弟殿下、私も我慢の限界なので、国王にお願いしてきましょう」

 バカって共通点がバカなんだな。
 パパの怒りが凄すぎて、誰も口を出せなかった。

「旦那様、足がつかめたと報告が入りました。」
 
 ロッシ家の影がゲオルグの情報を元に、全部の証拠集めをしたようだった。
 ここにドリンキングバードがいるくらいだから、部屋なんか探すの楽だっただろうなぁ。

「そうか、ラグおいで」

 パパが呼ぶから近くに行くと、ひょーいって感じで抱き上げられて膝に乗せられた。

「な!!!
 なんでこの餓鬼がここに!!」

「えぇ、いますね。
 うちの子に何をしたんでしたっけ?」

 にこにこ笑う目が、怖い。

「そのような料理人は、排除して」
「うちの子に、何を、したんでしたっけ?」

 これはもう、誰も止められないな。
 ゲオルグですら黙ってるし。

「私の料理人の料理を交易として流通させたいのだ」

「だから?」

「食べて頂ければ、分かる」

 昨日食べたじゃん。
 それにさ、僕を襲わせた連中から成功したかしてないかの報告も来てないだろうに、何で死んだって思ったんだよ?
 失敗するって考えは無いのかよ?

「確か、死んだって王弟殿下は仰ってましたよね?
 何故そのような話に?」

 パパって多分、ドアイスでも宰相くらいの事やらされてたんじゃないのか?

「え、あ、いや
 勘違いをしたのだ」

「貴方は昨日も今日もですが、王族として外交で訪れた私をとことんバカにしてるんですか?
 貴方の国の者では無いですが、外交としてドアイス国を代表して来てるのですよ?
 お分かりか?
 教養もない貴方より、この子の方が貴方より上位ですよ。
 そんなこともお分かりではないんですね」

 僕が学校免除資格者だ、と言う事を知らないとはいえ、既に働いていると言う事も含めて貴族のいるこの場に出入り出来ると言う事を全く理解できていなかったんだ。

「セバス、国王に謁見の申し込みを」

 セバスが頭を下げて、その場を退席して行った。

「辺境伯、何を言っておるのだ?」

「この子は十四歳です。」

「まぁ、そのくらいの子供だろう?」

「既に料理人として働いています。」

「ふふん、大した料理の腕でも無い癖にな」

「ふーっ。
 貴族の、この王宮の、この部屋に、出入りを許されている者です」

「それは辺境伯が許可したからだろう?」

「通行証を取るうえで、身分を証明する物が必要となります。」

「平民に身分証明などある訳無かろう」

「国境を越えても有効な身分証明書をご存じないのですか?」

「それは学校免除資格しかないではないか」

「良かった、ご存じでしたか。」

 バカって、バカなのが幸せなんだな。
 そう思って哀れな気持ちで見ていたら、謁見が通ったと言う連絡がセバスチャンから齎された。

「では、行こうか。
 国王の元へ」

 パパは僕を抱っこしたまま、悠々と廊下を歩きだした。
 その後にセバスチャン、ゲオルグが並んで続いて、最後に頭を?マークで一杯にした王弟殿下が続いた。
 
 
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