モブですけど!

ビーバー父さん

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 パパの部屋に通されて、すぐに抱きしめられた。

「おはよう、ラグ」

「おはよう、パパ」

 おでこや頬にちゅうってされて、僕もちゅうって返した。
 それを見たゲオルグが、?マークから段々、赤くなり、最後はちょっと青くなってた。

「こちらはどなたかな?」

「はい、学校で免除試験教官だったゲオルグ先生です。
 昨日、ここからの帰路で暴漢に襲われて九死に一生を得ました。
 治癒魔法で、救ってくださったんです。
 守護者の二人も健闘したのですが、隙をつかれて、背後から刺されました。
 その刃は、内臓まで達していて、死んでもおかしくなかったので。」

 そこまで話して、パパとセバスチャンは蒼白になった。

 よし、これで、一応ゲオルグが命の恩人で通せるはず!

「ラグ様を襲ったのは、王弟殿下の息がかかった奴らでした。
 それをゲオルグ殿が加勢をしてくださりましたが、ラグ様に不埒な真似もされたので、そこは減点かと思われます」

 ノー!!ミワ!!
 そこ言っちゃダメ、言っちゃった、聞いちゃったよね。
 真面目、うん、ミワは間違ってない!!

「ゲオルグ殿、お久しぶりですね。
 うちのラグがお世話になったようですが。」

「レイラント公爵様、ご無沙汰しております。」

 あれ、パパとゲオルグって知り合い?
 と言う事は、セバスチャンも知り合いなんじゃないの?
 そして、さっきのは牽制?

「セバスチャン殿も久しぶりですね」

「ゲオルグ先輩も、お元気そうで」

 やっぱり。

「で、私のラグを助けて下さったとか。」

 怖い!! 
 長身イケメンが美形な顔を突き合わせて、お互いに青筋立てて怒ってる!!
 しかも全員属性が違うイケメン!!
 これ何でもないときに見てたら眼福だったろうけど、今の僕の心中は神に祈るポーズだよ。

「私のラグとは?」

 さっきまで青くなってたゲオルグなのに、なんで対抗意識もやすんだよ~!!!

「不埒な真似とは?」

 セバスチャンまでが参戦しちゃったよ。

「えっと、あのね、聞いて!
 まずはご飯食べて!!!」

 二人はお腹が減ってるから怒りっぽくなるんだ。

「ブランチに、白パン、自家製ソーセージ、ミニオムレツ、サラダ、ジャガイモのポタージュスープ、パパたちには小さなカップに作ったムースもだよ
 白パンは沢山用意したから、好きなだけ食べてね」

 テーブルに並べて行くと、やっと嬉しそうな顔になって、スープを一口飲んだ。
 
「うん、暖かくて優しい味だ。
 ラグ、今日も美味しいな」

「でしょ?
 でね、白パンに野菜とシーセージを挟んで、もう一つの白パンにはオムレツと野菜を挟むの。
 そうすると食べやすいし、もっと美味しいよ?」

 ご機嫌取りのためには必死です。
 パンをバターナイフで割りながら切って、マヨドレで和えたサラダを入れ、その上にソーセージをどんと挟んだ。
 同じように、オムレツを野菜と挟んで、パパのプレートに置いてあげた。

「これは街で食べた変な味のサンドより、断然美味いな」

「もちろん、僕が作ったんだから!」

 何とか話しが反れたけど、結局話さなきゃいけない事だから、後回しになっただけなんだよね。

 僕は給仕をして、ゲオルグもそれを手伝ってくれた。
 お皿を下げるときに魔法でちゃんと洗浄して乾燥魔法を使う。
 ほーって思ってみてたら、僕にも普段からちゃんと使いなさいって言われた。
 こういう所、先生なんだよね。

「このムース、夜はもっと大きいので欲しい」
 
 パパ、まるで緑頭だよ、それ。

「夜はシューにしようと思ってたんだけど、ムースが良いなら」
「シューって?!」

 まるっきり、緑頭です!

「カスタードクリームを、シューと言う皮に詰めたお菓子です。」

「じゃ、それも」

「太るよ?」

「え?」

「結構カロリー高いし、太ります。」

「太った私は嫌いか?」

「嫌いじゃないけど、体が心配。」

「う~ん、う~ん、なら、シューで!!」

 なんでその断腸の思いみたいな表情なんだよ。
 
「ラグ、昨日の報告内容、ミワが言ってる事はどういうことなのかな?」

 うっ、来たか。

「帰路で、王弟殿下の手の者から襲われました。
 正し、守護者たちが確信してるだけで、証拠は有りません」

 テーブルに出していたパパの拳に力が入った。

「ラグ様が刺されて死にかけた時、ゲオルグ殿が助けて下さいました。
 その後」
「ミワ、順を追うから、ちょっと待って」

 端折りすぎだから、その前に魔力暴走とかあったからね?

「証拠が無ければ作ればいい、違うか?」

 黒い、パパが黒い。

「そうだな、その勘違いしたドリンキングバードの変異種みたいなのがやったのは確かなんだろうから、毒の入手先なんかを調べたら芋づる式じゃないか?」

「毒!?」

「ああ、昨日ラグを刺したナイフに、毒が塗られていた。
 解毒と治癒と回復を同時に掛けないと、死ぬくらいの猛毒だ。
 解析は済んでる。
 毒蛙テンドレスの猛毒だ。
 特殊過ぎるから、入手経路もすぐに分かるだろう」

 さすが先生。
 参謀が加わった感じで頼もしかった。

「ところで、その後の不埒な行いとは?」

「ラグ様を無理矢理、手籠めにしようとしたり、本気で殺しにかかったり、本気で戦うと言う事を教えてくださったりもしました」

 ミワ、黙ろうか。

「んん?
 ラグ、意味が分からないんだが?」

「はい、魔力暴走を熾しまして、ゲオルグ先生に抑えて頂きました。
 その後にちょっとありまして、まぁ、あの、」
「私が求婚した。
 手っ取り早く、自分の物にするために、取り敢えず抱き潰しておけば誰にも渡らないと思って襲った」

 あの、ゲオルグさん、こうオブラートに包んで、説明しようとしてる努力を無かった事にしないで!

「ほぅ、私のラグに求婚とは」

「レイラント公爵様も再婚をお考えで?」

「は? 
 再婚など考えたことも無いわ!」

 再婚?

「ならば、私がラグに求婚しようと関係ないではありませんか?」

「私のラグに何を言っておる!」

「ですから、貴方は再婚の意思も無く、愛人にするならば、私がラグを娶る、と言ってるんですよ?」

 ん?

「あの、そもそも」
「ラグは黙ってなさい!!
 ゲオルグ殿、ラグに求婚など、私が許しません!!!」

「再婚の意志が無いなら、平等に権利があるじゃないですか!!」

 いや、ここでその白熱をされても、肝心なところがズレてます!!!

「あの!!!
 先生もパパも、落ち着いてください!!」

「ラグこれが落ち着けるか!」

「え?!パパ?パパって、パパ?」

 はい、やっと気づいていただけましたか。

「えぇ!!、僕のパパです!」


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