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しおりを挟む「ほう、セバスの別宅は世界中にあるのだな。」
父、パパは、…慣れない。
パ、パ、は家の中を見渡した。
「ラグ、ここで二年も頑張ったんだな。」
「はい。
あ、の、やはりパパは、絵面的にもどうかと思います。」
気持ち悪いだろ、と訴えてみた。
「いえ、最高かと。」
は?セバスチャン?
「ああ、最高かよ!と言いたいよな」
二人とも、腐り過ぎでは?
「周りだって気持ち悪いと思うよ!?」
「無いな」
「無いですね」
意気投合し過ぎじゃね?
もう、この話題は避けるしか無い。
だがしかし!パパ呼びしない訳にはいかないってことか!
「パパ」
呼んでみたら、物凄く嬉しそうな顔をして返事をしたのを見て、これは勝てないと諦めた。
僕だって、その、父上よりパパの方がより近く感じるし、凄く、好きだと思った。
「明日は陸路、海路どちらを行きますか?」
セバスチャンは国を決める前に、先ずはこの国を出る事を選択するのは分かっていたようだ。
「ラグはどこへ行くつもりだったんだ?」
酪農が盛んな国がいいなぁ、と思って大体決めていたのは、ここから、もっと北上した国ジョーハンだった。
「北上してジョーハン国へ向かいたい。
酪農が盛んな国だと聞いています。」
ジョーハンは人口より牛や羊が多いらしいし、チーズがあれば美味しいものが作れる。
いずれは、カシリスに行きたいけど、先にチーズだ!
カシリスの調味料が和食系だと分かったから、それなら、まだ知らない国に行きたいし。
「ラグが美味しい物を作ってくれるなら、どこでも構わないさ。
私が辺境伯として、外交をやる一つの手段にもなるからな。」
僕の料理を外交にって、結構、いやかなり、親バカだよ、パパ。
「旦那様、ボンクラが騒がないと良いのですが、明日は早馬を手配しております。
ラグ様とお二人で先にご出立下さい。
私は後始末をしてから行きますので、ジョーハンに着いたら、ロッシの別宅へ向かって下さい。
話しはしておきますので。」
「分かった。
頼むぞ、セバス。」
後始末って何をするつもりだろうか?と考えて、少し怖い所に思考が辿り着いた。
「一人残して行くのは」
「いいえ、ラグ様、この後始末は私しか出来ませんから。
それに、駄犬を使いますから安心して下さい。」
駄犬?
「あ、兄上か!」
「はい」
凄く綺麗な笑顔で、駄犬、ゲフン、兄上をどう使うんだか分からないけど、怖いとしか思えなかった。
どうせ緑頭も着いてくる気満々だし、それならセバスチャンの手伝いをしてから来て貰った方が余程トラブル回避ができるんじゃ無いだろうか、と考えた。
「おーい、いるかー?」
「ん?ラグ誰を呼んで」
「ラグ!!
呼んだか!?」
緑頭が尻尾を千切れんばかりに振っている様に見えて来た。
精霊王の威厳もないな。
「セバスの手伝いをして。
僕は、パパ、と先に行くから。」
パパに必要以上の力が入ってしまう。
「何をすればいいのだ?」
「ラグ様、精霊王を?」
「ああ、あの薔薇の飴も使ってないしな。
それを使って回避出来る事があるなら、盛大に使ってしまえ」
「畏まりました。」
「精霊王、名前を今まで聞かなかったが、あるのか?」
僕的には緑頭で十分だけど、セバスチャンの手伝いをさせるなら、緑頭じゃダメだろうと思って聞いてみた。
「私に名は無い。
精霊王として、世界樹から生まれ落ちた、そのままだ。」
「そうか、なら、緑頭でいっか。」
「ん?
ラグ、さすがに可哀想じゃないか?」
パパが可哀想と言うから、再考してみる。
「名前考えるの苦手なんで、セバスが考えてよ」
緑頭で良くない?だめ?
「緑頭でいいんじゃないですか?」
「緑頭で決まりだな。」
すると、緑頭の額に金の輪が現れて、精霊王らしくなった。
金の輪が緑頭で記憶したって事だよな?
うわー、精霊王緑頭って、字面みたらその下にもやしって付きそうじゃん。
緑豆もやし、あ、豆か、あれ。
変わらない気がするけどな。
「本人が良いなら、パパは何も言えないけど。
ちょっと気になったので聞くけど、精霊王が何でラグのそばに居るのかな?
さっきも聞きそびれたんだけどさ?」
そこですよねー。
精霊王なんて、普通はその辺にいるわけないですよねー。
僕はセバスチャンの方を見て、それから今までの事を話した。
前世の記憶や、スキルの事、そして蒼月の瞳が自分である事。
だから、精霊王が僕の守護をすると言って居座ってる事、更に、実は餌付けされてここに居て、もっさりが嫌だと言っていた事。
そこまで話したら、パパは、静かに言った。
「引き取って頂きなさい。
ラグがもっさりだとか、餌付けされてるからだとか、そんなのなら、必要ない。
私のラグに、もっさりと言った段階で消滅させたら良かったんだ。
セバス、何故しなかった?」
え、精霊王だよ?
精霊王を消滅って、無理じゃない?
いや、その前に世界の均衡が崩れちゃうよね?
「ん?私はラグが好きだぞ。
もっさりだろうが、何だろうが、ラグの魔力も気持ちいいからな。」
あっけらかんと、緑頭は言い放った。
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