モブですけど!

ビーバー父さん

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「ラグ、シチューだぁ!!
 腹ペコだったんだよなぁ」

 残さず食べてくれるから、作り甲斐もあるよな。
 ここの連中は朝からガーリックだろうが気にしないし、これからも頑張って欲しいと心から思ったよ。

 トレーに乗っかるパウンドケーキを見て、何かを察して押し黙る人が殆どだった。
 王族から嫌がらせをされると言う事がどういう事か、分かってるからだ。
 前の王子は既に降下させられてたけど、王女は政略結婚とか世継ぎに入らないからそのまま嫁いだ先の爵位なり王妃なりになるから、今回は分が悪かったんだと思われていた。

「今までありがとうございました。
 このままでは騎士団に迷惑をかけてしまうので、今日で最後にします。
 どうか、お元気でいてくださいね。」

 別れを告げていると、外が騒がしくなった。
 一番騒ぎそうな分隊長の五人がいないと言う事は、あの騒ぎはそう言う事だろう。



「俺たちの死活問題をどうしてくれるんだ!!」

 ホーク、王族にそんな口聞いちゃダメですよ。
 そう思っていたら、昨日の文官だった。
 文官ならまぁいいか。

「厨房の奴らが素直に王女が求める物を渡せばこんな事にはならなかったんですよ?
 それに、ホーク騎士隊長が彼らを雇用したのでしょう?
 貴方にも責任があると思いますよ?」

「なんだと、貴様!
 ラグやセバスが何をした!!
 あいつらが作った物を、自分が作ったと嘘をついたのが問題なんだろうが!!
 それをした張本人が、俺たちの食事を取り上げたんだよな?
 王女の命令で、こんな事になったんだよな?」

 物凄い剣幕で、怒りをぶつけるホークを僕は止めた。

「ホーク様、ダメですよ。
 それ以上は、ホーク様の爵位にも影響が出てしまいますよ?
 それに騎士団全体の問題になってしまいます。
 僕たちは今日でこの厨房を辞めますので、今度はどこかのお店で食べて下されば嬉しいです」

 この国かどうかは分からないけどね。
 
「ラグ!
 どうにもならないのか?」

「えぇ、申し訳ありません。
 ですが、僕たちの事は心配しないでください。」

 早く王女様自身で行動してくれないかなぁ。

 そこで、やっと、王女が登場してきたようだった。
 エスコートしてるのはボンクラ(ロシアス)だった。
 
 ん?んん?
 蒼月って青いんじゃないの?
 彼女どう見てもふっつーの茶色だけど。

 コレでどうやって蒼月認定?カラコンとかあるのか?
 疑問が沸きまくった。

「おどきなさい!
 ここの者が勝手に私が作った物を提供してると聞いて参りましたの。
 あぁ、貴方ね?
 小さい子供のする事なので許してあげますが、今後この様な事がない様に、提供する前に私に確認を求める事にして下さらないかしら?
 ちゃんと、私が作った物と同じなら提供するのを許して差し上げるわ!!」

 ん、そだね。

「申し訳ございません。
 二度と王女様が作られた物を提供致しませんのでお許しください。」

「えぇ、もちろん!
 私は寛大ですからね。
 子供の浅知恵でやった事に罰を下したりしないわ!」

「本当ですか!?
 ありがとうございます!
 では、これで、お暇しますね。」

 態とらしく頭をペコペコ下げて、厨房を出て行った所で、待ったをかけられた。

「お待ちなさい!
 今日、勝手に提供した物を出しなさい!」

「あの、もう、無いです。
 すみません。」

「なら作りなさい。
 ちゃんと出来てるかみてあげますから!」

「そうですか、分かりました。」

 僕達は厨房に戻り、水で小麦粉を薄く溶いて、火を入れると少しとろみがついた所に塩を入れて出した。

 これ障子を貼り替える時に使うノリなんだけどね。
 いや、ちゃんと料理すればとろみのあるスープも作れるんだよ。
 知らないだろうけどね。

 これを見ていた騎士達は、下を向いて肩を揺らしていた。
 うん、笑ってるね。

「こちらです。
 勝手に王女様が作られた物を提供した事お詫びいたします。
 如何でしょうか?」

 これで、違うと言えば僕達のオリジナルだし、そうだと言えばバカ舌だ。

「いただくわ」

 スプーンで一口、まあ、微妙な顔をした。

「あの、これは何かしら?」

「王女様が作られたスープです。」

「これは私の作った物とは程遠いのでは無いかしら?」

 よし!

「では、王女様、本当の物を伝授頂けませんか?
 教えていただければ、今日でお暇しなくて済みますから。」

「な、んですって?」

「はい、お許し頂きましたが、勝手に提供した責任を取って、辞職しますので。」

 王女は青ざめた。
 当たり前だ。
 自分で作った物では無いのだから。

「私が許してるのですよ?!」

「ええ、有難い事です。
 ですが、この様なものしか作れませんから」

 段々と騎士達がニヤニヤ笑いに変わっていった。
 バレるから!

「それに蒼月の瞳の持ち主で有らせられる方が、王女様のお作りになられた物を勝手に提供したとして、圧力を受けていて食材も買えない有様ですから。
 僕達が辞めないと、騎士様達のご飯が無くなってしまうのです。」

 だろ?騎士達!

 皆んなが、うんうん、と頷き、酷い話だと呟きあっていた。

 ノリ始めた騎士達は次々に、蒼月の瞳は聖なる方では無かったのか?
 伝説の方は王宮で匿われているなら、王女様のお力で、とか。
 まあ、秘匿事項の蒼月の瞳の話しがこんな風に漏れてる事自体あり得ないけど。

「王女様?」

 コテンと首を傾げて見せた。
 さあ、どうする?

 ワクワクが止まらないわ。
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