38 / 219
37
しおりを挟む「ラグ、シチューだぁ!!
腹ペコだったんだよなぁ」
残さず食べてくれるから、作り甲斐もあるよな。
ここの連中は朝からガーリックだろうが気にしないし、これからも頑張って欲しいと心から思ったよ。
トレーに乗っかるパウンドケーキを見て、何かを察して押し黙る人が殆どだった。
王族から嫌がらせをされると言う事がどういう事か、分かってるからだ。
前の王子は既に降下させられてたけど、王女は政略結婚とか世継ぎに入らないからそのまま嫁いだ先の爵位なり王妃なりになるから、今回は分が悪かったんだと思われていた。
「今までありがとうございました。
このままでは騎士団に迷惑をかけてしまうので、今日で最後にします。
どうか、お元気でいてくださいね。」
別れを告げていると、外が騒がしくなった。
一番騒ぎそうな分隊長の五人がいないと言う事は、あの騒ぎはそう言う事だろう。
「俺たちの死活問題をどうしてくれるんだ!!」
ホーク、王族にそんな口聞いちゃダメですよ。
そう思っていたら、昨日の文官だった。
文官ならまぁいいか。
「厨房の奴らが素直に王女が求める物を渡せばこんな事にはならなかったんですよ?
それに、ホーク騎士隊長が彼らを雇用したのでしょう?
貴方にも責任があると思いますよ?」
「なんだと、貴様!
ラグやセバスが何をした!!
あいつらが作った物を、自分が作ったと嘘をついたのが問題なんだろうが!!
それをした張本人が、俺たちの食事を取り上げたんだよな?
王女の命令で、こんな事になったんだよな?」
物凄い剣幕で、怒りをぶつけるホークを僕は止めた。
「ホーク様、ダメですよ。
それ以上は、ホーク様の爵位にも影響が出てしまいますよ?
それに騎士団全体の問題になってしまいます。
僕たちは今日でこの厨房を辞めますので、今度はどこかのお店で食べて下されば嬉しいです」
この国かどうかは分からないけどね。
「ラグ!
どうにもならないのか?」
「えぇ、申し訳ありません。
ですが、僕たちの事は心配しないでください。」
早く王女様自身で行動してくれないかなぁ。
そこで、やっと、王女が登場してきたようだった。
エスコートしてるのはボンクラ(ロシアス)だった。
ん?んん?
蒼月って青いんじゃないの?
彼女どう見てもふっつーの茶色だけど。
コレでどうやって蒼月認定?カラコンとかあるのか?
疑問が沸きまくった。
「おどきなさい!
ここの者が勝手に私が作った物を提供してると聞いて参りましたの。
あぁ、貴方ね?
小さい子供のする事なので許してあげますが、今後この様な事がない様に、提供する前に私に確認を求める事にして下さらないかしら?
ちゃんと、私が作った物と同じなら提供するのを許して差し上げるわ!!」
ん、そだね。
「申し訳ございません。
二度と王女様が作られた物を提供致しませんのでお許しください。」
「えぇ、もちろん!
私は寛大ですからね。
子供の浅知恵でやった事に罰を下したりしないわ!」
「本当ですか!?
ありがとうございます!
では、これで、お暇しますね。」
態とらしく頭をペコペコ下げて、厨房を出て行った所で、待ったをかけられた。
「お待ちなさい!
今日、勝手に提供した物を出しなさい!」
「あの、もう、無いです。
すみません。」
「なら作りなさい。
ちゃんと出来てるかみてあげますから!」
「そうですか、分かりました。」
僕達は厨房に戻り、水で小麦粉を薄く溶いて、火を入れると少しとろみがついた所に塩を入れて出した。
これ障子を貼り替える時に使うノリなんだけどね。
いや、ちゃんと料理すればとろみのあるスープも作れるんだよ。
知らないだろうけどね。
これを見ていた騎士達は、下を向いて肩を揺らしていた。
うん、笑ってるね。
「こちらです。
勝手に王女様が作られた物を提供した事お詫びいたします。
如何でしょうか?」
これで、違うと言えば僕達のオリジナルだし、そうだと言えばバカ舌だ。
「いただくわ」
スプーンで一口、まあ、微妙な顔をした。
「あの、これは何かしら?」
「王女様が作られたスープです。」
「これは私の作った物とは程遠いのでは無いかしら?」
よし!
「では、王女様、本当の物を伝授頂けませんか?
教えていただければ、今日でお暇しなくて済みますから。」
「な、んですって?」
「はい、お許し頂きましたが、勝手に提供した責任を取って、辞職しますので。」
王女は青ざめた。
当たり前だ。
自分で作った物では無いのだから。
「私が許してるのですよ?!」
「ええ、有難い事です。
ですが、この様なものしか作れませんから」
段々と騎士達がニヤニヤ笑いに変わっていった。
バレるから!
「それに蒼月の瞳の持ち主で有らせられる方が、王女様のお作りになられた物を勝手に提供したとして、圧力を受けていて食材も買えない有様ですから。
僕達が辞めないと、騎士様達のご飯が無くなってしまうのです。」
だろ?騎士達!
皆んなが、うんうん、と頷き、酷い話だと呟きあっていた。
ノリ始めた騎士達は次々に、蒼月の瞳は聖なる方では無かったのか?
伝説の方は王宮で匿われているなら、王女様のお力で、とか。
まあ、秘匿事項の蒼月の瞳の話しがこんな風に漏れてる事自体あり得ないけど。
「王女様?」
コテンと首を傾げて見せた。
さあ、どうする?
ワクワクが止まらないわ。
26
お気に入りに追加
2,336
あなたにおすすめの小説
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる