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しおりを挟むどんなに荒らされていても、騎士団の一日は始まっていて、自国を守るためにひいては王族の盾になる為に彼らは毎日血のにじむ様な訓練をしているのに、僕らを直接狙うならまだしも、騎士団をこうやって巻き込むのは許せなかった。
前のバカ王子の時も、出来上がった料理を駄目にされて僕が激高したから緑頭がやらかした。
だから前回はキャッチアンドリリースを教えた。
でもね、今回はそうもいかない。
もう、この国を出るって決めてるから、王女様に責任を取って頂きましょう。
フラグを引き継いでもらうつもりだったけど、怒りが収まらないからね。
食べ物を粗末にしたり、国の要になる騎士団を巻き込んだり、個の意志を尊重する王族は死んでもいい。
これが僕の答えだよ、オウジョサマ。
大体の事を予想して、空間魔法で今日一日分の食材や、料理は保管しておいたから、暖め直したりして出した。
今朝は朝ラーメン予定だったから、麺を冷凍しておいたのを保管庫から出されていて丁度良かった。
茹で時間短縮出来たよ。
これを捨てられてたら、多分、僕はキレて王宮を破壊してたな、うん。
前回に続いて加担した誰かが、さすがに捨てたりは出来なかったのかもしれない。
鶏ガラと魚介類の出汁を使った塩ラーメン。
麺はかんすいを使って打ちました。
手打ち麺。
骨付き肉にガーリックをがっつりまぶして蒸したものを乗せて、好みでレモンの輪切りを数枚。
塩とガーリック、そして出汁が意外と重厚だからさっぱりするのにレモンを乗せた。
凄い、美味い。
自分で言うのもなんだけど、美味かった。
レモンはキワモノかと思ったんだけど、合うんだよ。
あの、塩レモンサワーって感じ。
どんな感じだよ!と思った方は、濃いめの塩らーめにレモンを一枚乗っけてみてね。
「これ、初めて食べる料理だな!」
「ええ、皆さんが箸を使いこなしているので、頑張ってみました。
塩ラーメンです。
お代わりは替え玉って言って、麺だけを入れますからスープはまだ飲み干さない方が良いですよ」
結構色んなところから、えー!っという叫びが聞こえた。
こりゃ、既に飲み干してましたか。
朝の戦場を終えて、昼の支度にすぐ入った。
「そういやセバス、夜にくれるはずだったプレゼントって何?」
「あー、その、まぁ、、後で分かるかもですが…
ボンクラ王子にお目付け役として、旦那様が同行されていまして…
昨夜、家へ来る予定だったんですよ。
ですが、この一件で、多分怒りながら奔走されてるので、来れなくなってしまったので…。」
父上が来てくれる予定だったのか。
「事の顛末は、父上に伝わっているって事か?」
「厨房の私たちに無理難題を言って、嫌がらせをしてると言う事は確実に伝わっておりますね。」
それって、僕がここで料理を作ってって知ってるって事だよね。
「セバスは父上と連絡を取ってるの?」
所在なさげに、目をそらした。
「定期報告は入れさせていただいてます。
ラグ様はまだ未成年ですから。
私が後見人にはなっておりますが、旦那様はラグ様の成長をとても楽しみにされておりますし、先日の旦那様のお誕生日にはラグ様の絵姿をお送りしたらとても喜ばれて、ラグ様に会いたくて来てしまったようです」
未成年なのは認めるけど、それだけで来るって…。
僕がいた時の威厳はどこへいったんだよ。
「想像もつかないな。
屋敷にいた頃は、父上と顔を合わすことなど殆ど無かったのに。
大体、色んな事を誤解していたし、こんなに父上が親バカだったとは思いもしなかった。」
父上が来てると思うと、それだけで心が暖かい気持ちになった。
親離れが出来ないな、と少しだけ嬉しくて笑ってしまった。
「今日のお昼はクリームシチューだ!
セバスは、バケットを切ってガーリックトーストにしておいて」
「はい、ではサラダも準備しますね」
「助かる」
最近はセバスチャンが付け合わせや献立を考えることもあるので、凄く助かっててそれだけここで沢山の料理をして来たんだなって感慨深くもあった。
ホワイトソースを作るのに一番簡単な方法は大量のバターにちょっとの小麦粉を熱を入れながら混ぜることだ。
粉に油が回ってお団子状態になったら、また少し小麦粉を加える。
状態としては油多めのお団子を作ると、今度は同じ鍋でそれにミルクを入れて伸ばすだけだ。
伸ばすときは少しずつ、しっかり伸ばす。
ミルクが温まると、自然とクリーム状に伸びるから、途中で入れないでクリーム状になってダマダマが無くなるまで混ぜるを繰り返してると、良く知ってるホワイトソースが出来上がる。
このホワイトソースを使ってシチューの中にスパイスを入れて行くんだけど、これは好みで、ローレル、ナツメグ、グローブ、ガーリックとかね。
肉や野菜を煮込む時にブーケガルニを作って一緒に煮込むと風味は良くなる気がする。
仕上げにはちみつとか塩コショウで味を見て、火から離した。
今日で最後だろうから、特別にケーキも焼いた。
大量に焼けて、切り分けも簡単なパウンドケーキを。
一人一本持って行ってと言う感じで、焼いた。
パウンドケーキはラッピングして昨日みたいに袋に入れてそれぞれに渡るようにした。
後はボンクラ王子とワガママ王女が自滅してくれるのを待つだけだ。
髪の毛の間にいる緑頭には、文字通り飴と鞭で躾をしておいた。
そして、昼の戦場が始まった。
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