モブですけど!

ビーバー父さん

文字の大きさ
上 下
37 / 219

36

しおりを挟む



 どんなに荒らされていても、騎士団の一日は始まっていて、自国を守るためにひいては王族の盾になる為に彼らは毎日血のにじむ様な訓練をしているのに、僕らを直接狙うならまだしも、騎士団をこうやって巻き込むのは許せなかった。
 前のバカ王子の時も、出来上がった料理を駄目にされて僕が激高したから緑頭がやらかした。
 だから前回はキャッチアンドリリースを教えた。

 でもね、今回はそうもいかない。
 もう、この国を出るって決めてるから、王女様に責任を取って頂きましょう。
 フラグを引き継いでもらうつもりだったけど、怒りが収まらないからね。

 食べ物を粗末にしたり、国の要になる騎士団を巻き込んだり、個の意志を尊重する王族は死んでもいい。
 これが僕の答えだよ、オウジョサマ。


 大体の事を予想して、空間魔法で今日一日分の食材や、料理は保管しておいたから、暖め直したりして出した。
 今朝は朝ラーメン予定だったから、麺を冷凍しておいたのを保管庫から出されていて丁度良かった。
 茹で時間短縮出来たよ。
 これを捨てられてたら、多分、僕はキレて王宮を破壊してたな、うん。
 前回に続いて加担した誰かが、さすがに捨てたりは出来なかったのかもしれない。

 鶏ガラと魚介類の出汁を使った塩ラーメン。
 麺はかんすいを使って打ちました。
 手打ち麺。
 骨付き肉にガーリックをがっつりまぶして蒸したものを乗せて、好みでレモンの輪切りを数枚。
 塩とガーリック、そして出汁が意外と重厚だからさっぱりするのにレモンを乗せた。
 凄い、美味い。
 自分で言うのもなんだけど、美味かった。
 レモンはキワモノかと思ったんだけど、合うんだよ。
 あの、塩レモンサワーって感じ。
 どんな感じだよ!と思った方は、濃いめの塩らーめにレモンを一枚乗っけてみてね。
 
「これ、初めて食べる料理だな!」

「ええ、皆さんが箸を使いこなしているので、頑張ってみました。
 塩ラーメンです。
 お代わりは替え玉って言って、麺だけを入れますからスープはまだ飲み干さない方が良いですよ」

 結構色んなところから、えー!っという叫びが聞こえた。
 こりゃ、既に飲み干してましたか。




 朝の戦場を終えて、昼の支度にすぐ入った。

「そういやセバス、夜にくれるはずだったプレゼントって何?」

「あー、その、まぁ、、後で分かるかもですが…
 ボンクラ王子にお目付け役として、旦那様が同行されていまして…
 昨夜、家へ来る予定だったんですよ。
 ですが、この一件で、多分怒りながら奔走されてるので、来れなくなってしまったので…。」

 父上が来てくれる予定だったのか。

「事の顛末は、父上に伝わっているって事か?」

「厨房の私たちに無理難題を言って、嫌がらせをしてると言う事は確実に伝わっておりますね。」

 それって、僕がここで料理を作ってって知ってるって事だよね。

「セバスは父上と連絡を取ってるの?」

 所在なさげに、目をそらした。

「定期報告は入れさせていただいてます。
 ラグ様はまだ未成年ですから。
 私が後見人にはなっておりますが、旦那様はラグ様の成長をとても楽しみにされておりますし、先日の旦那様のお誕生日にはラグ様の絵姿をお送りしたらとても喜ばれて、ラグ様に会いたくて来てしまったようです」

 未成年なのは認めるけど、それだけで来るって…。
 僕がいた時の威厳はどこへいったんだよ。

「想像もつかないな。
 屋敷にいた頃は、父上と顔を合わすことなど殆ど無かったのに。
 大体、色んな事を誤解していたし、こんなに父上が親バカだったとは思いもしなかった。」

 父上が来てると思うと、それだけで心が暖かい気持ちになった。
 親離れが出来ないな、と少しだけ嬉しくて笑ってしまった。

「今日のお昼はクリームシチューだ!
 セバスは、バケットを切ってガーリックトーストにしておいて」

「はい、ではサラダも準備しますね」

「助かる」

 最近はセバスチャンが付け合わせや献立を考えることもあるので、凄く助かっててそれだけここで沢山の料理をして来たんだなって感慨深くもあった。



 ホワイトソースを作るのに一番簡単な方法は大量のバターにちょっとの小麦粉を熱を入れながら混ぜることだ。
 粉に油が回ってお団子状態になったら、また少し小麦粉を加える。
 状態としては油多めのお団子を作ると、今度は同じ鍋でそれにミルクを入れて伸ばすだけだ。
 伸ばすときは少しずつ、しっかり伸ばす。
 ミルクが温まると、自然とクリーム状に伸びるから、途中で入れないでクリーム状になってダマダマが無くなるまで混ぜるを繰り返してると、良く知ってるホワイトソースが出来上がる。
 このホワイトソースを使ってシチューの中にスパイスを入れて行くんだけど、これは好みで、ローレル、ナツメグ、グローブ、ガーリックとかね。
 肉や野菜を煮込む時にブーケガルニを作って一緒に煮込むと風味は良くなる気がする。
 仕上げにはちみつとか塩コショウで味を見て、火から離した。

 今日で最後だろうから、特別にケーキも焼いた。
 大量に焼けて、切り分けも簡単なパウンドケーキを。
 一人一本持って行ってと言う感じで、焼いた。
 パウンドケーキはラッピングして昨日みたいに袋に入れてそれぞれに渡るようにした。

 後はボンクラ王子とワガママ王女が自滅してくれるのを待つだけだ。

 髪の毛の間にいる緑頭には、文字通り飴と鞭で躾をしておいた。
 そして、昼の戦場が始まった。
しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

処理中です...