モブですけど!

ビーバー父さん

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 自分が求めていたことだけど、もっさりだからって言われるとちょっと傷つくのは気にしないでおこう。



「ではイルサーク様、他言無用でお願いしますね」

「ああ、だが、金は払うから飯を食わせて貰えないだろうか?」

 え?家で誰か作ってくれないのかよ。

「お店が出せたら、お知らせしますよ。
 まだ、ここの食材とかに慣れてないので」

「もう、他の店のは……
 あんな味は、無理だ」

「では、試作する時はお声がけしますから、お金は良いですよ」

 だかしかし、そろそろ稼ぎを考えないとな。

「そうだ、お弁当を作りますよ。
 お昼に届けるので、ワンコインでどうでしょう?」

「オベントウ?」

「携帯食というか、携帯出来る食事?かな」

 お弁当って機能が無いなら、僕はお弁当の宅配をしばらくやって、お金を貯めたら他の国へ行こう。

「ワンコイン、金貨一枚でいいか?」

「いやいや、何で金貨なんですか!」

 この世界の金貨一枚って一万円の価値じゃん!
 銀貨が五千円、小銀貨が、一千円、大銅貨が五百円、銅貨が百円、半銅貨が五十円、小銅貨が十円なんだから。
 昨日の貴族御用達のお店が小銀貨三枚くらいだった筈だ。

「大銅貨一枚で!」

「安すぎだろ!」

 安いのに、キレんなよ。

「その位じゃないと、兵士さんや働いてる平民には厳しいですよ。
 お店で食べる様な熱々の物じゃなくて、冷えても美味しく食べられるのがお弁当ですから。
 だから、お店より少しやすいんですよ」

「そうか、そうだな。
 高いと俺も食べ続けられないしな。
 自分で言っておいて申し訳ないが、その申し出を有り難く受け入れさせてくれ」

 金貨一枚って豪語したけど、そりゃそうだ。
 勢いで言ってしまったんだろうしな。
 
「明日からご用意してお持ちしますよ。 
 入国管理局でいいですか?」

「俺は王宮の騎士団所属だから、王宮の騎士棟へお願いする」

 マジか……王宮に近づくつもり無かったのに。

「えーっと、では王宮の騎士棟への繋ぎをお願いしますね。
 いきなり不審者扱いは困るので」

「了解した。
 あ、小銀貨一枚にするから、大盛りにしてくれないか?」

 確かにヒューゴの体格ならお弁当の量では足りないかも。

「分かりました。
 イルサーク様だけに特別に、特盛弁当で出しますよ。
 金額は大銅貨一枚に、小銅貨三枚でお願いします」

 妥当な金額だと思うけど、どうかな?

「それで頼む。
 明日は、騎士棟の門兵に俺の名前を出せば通す様に話しておく。
 そして、通行証を準備しておくから、それで通る様にしてくれ」

「はい、分かりました」

 ヒューゴはお弁当契約をして、騎士棟へと帰って行った。





「セバス、昼間の市場へ行ってくるよ」

 昨日は急遽だったし、昼間の方が店舗も多いだろうから、色んな食材があるだろうしな。
 
「ラグ、私も一緒に行きます!」

「うーん、セバスが行くと、貴族と主従関係じゃなきゃ歩けないしな」

 精霊王も言ってたし、こんなもっさりな小僧には食指も動きませんから!

「大丈夫、明日のお弁当に合いそうな食材探すだけだから」

 セバスチャンと行動を共にすると、かたや貴族、かたや平民と言う階級差で、あまり良い事は無いと昨夜学んだからだ。

「分かりました。
 お気をつけて」

 意外とあっさり引き下がったな。
 昨日みたいなのはセバスチャンにも流石に堪えたのかもな。

 もっさりした平民の子供として、街へ足を運んだ。




 夜は交代で数店舗が開いてると言っていた通り、昨夜の店は昼間は閉店している様だった。
 
 活気のある露店とかもあって、野菜なんかは露店の方が新鮮だった。

「ピーマンあるじゃん!
 肉詰めより僕は生派なんだよねー
 つくねにピーマンで食べるの最高なんだけどなぁ」

 タレ作りたいから醤油ないかなぁ。
 米があるんだ、大豆がありそうだけどな。
 調味料とかスパイスを扱ってる露店のおばちゃんに、醤油の話しをして似た様な物が無いか聞いてみた。

「坊や、お使いかい?
 その黒い液体でしょっぱくて、豆から作ったのって、ランブルの事じゃないかねー?」

「ランブル?」

「そうだよ、向こうの通りにカシリス国から来る物を売ってる店に置いてるよ」

 カシリスって国は日本食ありそうだ。

「ありがとう。
 この、ピスカス?って緑の、30個頂戴」

「あいよ、銅貨4枚ね」

「はい、ありがとうございます」

「やだねー、買って貰ったこっちが、ありがとうだよ。
 坊や、オマケしちゃうよ」

 おばちゃんは、ピーマンを五個足してくれた。
 ピスカスって名前かぁ。
 醤油が有ればタレが作れるからね、つくねは決まりだ。
 教えて貰ったカシリス国の店に足を向けた。

 サテライトショップってとこか。
 中を覗くと、イメージしてた和食みたいなのはなくて、珍しい食材とか雑貨を扱ってる感じの店で方向性がよく分からない。
 何で靴とかそんなの横に醤油が置いてあるんだよ?
 最近TSUTA○○でも服と調味料に輸入菓子とか売ってたし、何屋か分からなくなってたな。
 醤油があるなら味噌もあるはず。
 探してみたら、味噌は簡易保冷庫に入っていた。
 やった、これで味噌汁も色々幅が広がるじゃん!!
 
 
 
 これで今日から試せる物が増えた。
 いよいよ、本格的にお弁当屋さんをする為に、容器を二、三種類買って、どのくらいの量が入るか、気密性はどうか確かめる事にした。

 家路へ急ぐ足が軽くてスキップしたい気分だった。
 他の露店を覗きながら、肉や魚を買い足して帰って扉を開けた瞬間、背後からガシッと拘束されて、そのまま家に入り込まれて僕は口を塞がれた。
 
 BL的な展開なら、唇でってとこだけど、しっかり布で猿ぐつわを咬まされた。
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