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しおりを挟む夜とか夢の中とか、これからは止めて貰いたいわ。
寝不足だし。
朝、一番鶏ならぬ、一番コカトリスの鳴き声で起こされた。
まだ空は薄っすら青とも紫ともつかない光に開き始めたばかりだった。
「眠い、眠いわ、クソ精霊王め!
フラグは折れたから良いけど、次来たらギッタギタにしてやる!」
悪態を吐けるだけ吐いて、イライラ発散に野菜を揉んだ。
塩ふって、水気を出して絞ったら、特製の浅漬けの液に漬けて保冷庫に入れた。
シジミを鍋に入れて水から煮て出汁を取ると、一度シジミを取り出してから味を整えた。
グルグル混ぜちゃうと開いた貝の身が落ちちゃうからね。
三つ葉の風味を持つ野菜を散らせる様にして準備をしておく。
そして米モドキを鍋で炊くんだけど、とりあえずは普通の水量にしてみようと思う。
秤がないから、鍋に米を入れて手のひらを漬けて手首のとこまで水を入れて火にかけた。
炊飯器派じゃない僕は前世でもこれで炊いていたから、やってみた。
鍋だし、うーん、あんまり冒険は出来ないから、最初から中火と弱火の間くらいで炊く事にした。
沸騰するまではしばらくあるし、その間に厚焼き卵を焼いて、最後に一夜干しの魚を焼いた。
米の鍋を気にしつつ、テーブルに一人一人用にお皿に盛り付けて出していると、酩酊状態のセバスチャンが起き上がってきた。
「ラグ、さま、
ウェップ」
「セバス、これ飲んで風呂に入ってこい」
昨日の説教をしようかと思ったけど、この状態では何を言っても無駄だろうと、少しでも酒を抜く様に風呂へ向かわせた。
飲ませたものは、ソルマッ○と同じやつだ。
前世ではかなりお世話になったので、効く事は身をもって知っているけど、先ずはあの味と匂いで吐き気との戦いをしなければならない。
それを超えると爽やかな空腹が訪れるのである。
さて、後の二人をどうするかな。
リビングで転がってる二人がご飯の匂いに釣られて、鼻をヒクヒクさせているのが面白くて、ちょっと見入ってしまった。
「おはようございます、朝ですよ?
お仕事は大丈夫ですかー?」
躊躇いがちに声を掛けてみると、二人は勢いよく起き上がった。
さすが兵士。
訓練されてるんだな。
「イルサーク様、ヨセフ様、お仕事は大丈夫ですか?
お休みとかなら良いんですけど……」
「やべぇ!
俺仕事だ!」
ヨセフが焦るから、とりあえず食事をするか聞いて時間が無いという事だから、急いでお弁当箱に詰めて、それにおにぎりを作った。
準備に時間はかからないけど、シジミの潮汁だけ飲ませて、お弁当を持たせて見送った。
「バタバタしたな。
イルサーク様はお休みですか?」
「ああ、俺は非番だ」
「体調はどうですか?
二日酔いとか大丈夫ですか?」
寝起きは不機嫌タイプなのだろうか?
「ラグノーツ、昨日は済まなかった」
「ああ、酔い潰れただけですし、大丈夫ですよ。
僕も飲ませすぎましたね」
「いや、その、鑑定をして貴族から平民などと傲慢だと思って、侮辱した事を心から詫びる。
申し訳なかった」
ヒューゴは男らしく、頭を下げて謝罪した。
例えそれが餌付けに成功した結果だとしても、味方についてくれるなら、騎士隊長という地位は頼りになるしね。
「公爵だったのだな」
「元、ですよ。
今は平民ですから」
鑑定の事を聞く切っ掛けをありがとう!
だけど、酒臭過ぎて先にお風呂行ってもらおうか。
「イルサーク様、朝ご飯の準備は出来てますから、お風呂でお酒臭いのを洗い流して来てくださいよ」
確かに酷いな、と笑ってお風呂へと向かった。
ヒューゴと入れ替わる様にセバスチャンが上がって来て、行く前とはまた違った顔色を青くして、土下座をして来た。
「ラグノーツ様!
大変申し訳ありません!!」
「記憶、あるんだ」
「はい!
本当にごめんなさい!」
冷ややかに見下ろした。
もっさり前髪で全く効果は無いけど、雰囲気ね、雰囲気。
「記憶操作を二人には掛けた。
僕の顔や公爵家の事を二度というなよ?
様も止めろ。
分かったよな?」
「はい!
肝に銘じます!」
「なら良い」
「ラグ、ありがとうございます」
セバスチャンは僕からの許しを得て、顔色も態度も復活していた。
「朝ご飯の支度は済んでるから、イルサーク様が風呂から上がったら食べよう。
ヨセフ様は仕事だと言って、もう出られたから」
「はい、手伝います!」
シジミの潮汁を温め直しながら、ヒューゴが鑑定した事を謝罪してくれたとセバスチャンに教えた。
セバスチャンも大分、主従関係から家族みたいな距離感になって行ってるな、と笑いながら話せた。
ただし、昨日の顔を晒したのはガッツリ怒ったけどね。
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