17 / 219
17
しおりを挟む潰してやった!
記憶操作で僕の顔をボカシておく。
潰すまでが大変だった。
とにかく飲ます為にすぐに出来るツマミを片っ端から出して、飲ませた。
ガーリックを刻んだものとナッツ類を軽く炒めて、邪魔にならない程度の砂糖と塩を熱いうちに振って絡めた物を出すと、冷えた辺りから溶けた糖分がカラメル状にナッツを包んで触感と味が面白い上に、塩とガーリックがツマミに合うんだ。
そう言うものから、定番のポテトフライとか、マヨにマスタードを混ぜたものを野菜スティックで食べるように出したりと、どれもこれもあっという間に完食された。
飲ませて、飲ませて、食べさせて、飲ませた。
そして、やっと潰れてくれたんだ。
潰れた奴らをどうするか考えたけど、頭来たから、その辺に転がす事にした。
不本意だけど、二人を泊まらせて明日の朝確かめる事にして、僕は明日の朝ご飯の仕込みをする事にした。
市場で米に似たものを見つけたから、試してみようと思って買ってみたから、土鍋があるといいなぁ、とか思ってみたものの、無い物は無いのでいつか作ろうと思っている。
シジミの潮汁にするので、砂抜きをしておこう。
魚は内臓を取って開いて、塩を振って外に軽く干しておく。
卵は定番だけど僕は甘い厚焼き玉子が好きだから、明日はそれにする。
こいつらが二日酔いで食べられるかは分からないけどね。
お米は鍋で炊くことにして、僕はベッドで休む事にした。
「ふぃ~、疲れた。
明日は何時起きかなぁ。
二人が仕事じゃないと良いけど」
結局どういう鑑定だったのか聞く前に違う方向でセバスチャンがやらかしてくれたしなぁ。
誓約魔法を使ってでも、僕の事を公言しないことや二度と鑑定しない事を強制しないと。
もう、お願いなんて言ってられないし、明日は彼らより早く起きないと……。
「ふぁぁぁ、おやすみ、なさい」
誰に言うわけでもなかったけど、習慣だった。
「ん、あ、」
なんだ、これ。
体が動かない、起きないと!!
金縛り?幽霊ってこの世界でもいるの?
「ん、や、ヤダ!!!
やだー!!!」
思いっきり叫んで、自分の声で目が覚めた。
これはお約束のアレか!!?
まさか、ヒューゴかヨセフ、はたまたセバスチャンが夜這いとかじゃないよな?
目を開けてキョロキョロしたら、暗闇の中に見えたのは薄く体が発光した、幽霊!!!か?
「オマエ、なんでこんな所にいる?」
「は?」
「その瞳は、蒼月ダロ」
僕はその言葉で体を固くして、警戒した。
大体居場所なんて僕の自由だろうが。
「僕はそんな瞳は持ってないよ。
ただ青いだけだよ?」
何も知らないし人違いだと思わせたい。
「それよりも、不法侵入だよ。
警備兵を呼ぶ?」
普通に考えてこの世に発光するような人間はいないだろう。
魔法があるんだ、人外の何かがいてもおかしくない。
こんな事なら、あいつらを潰すんじゃなかった。
ここで何かがあると目立つし、せっかくあいつらの記憶操作したのに意味がなくなる。
「ワタシハ、精霊王
オマエを守護する者」
ファンタジーの世界来ましたー!!
でも若干、嫌そうなのは気のせいだろうか?
やっぱりイケメンだけど、緑の髪はちょっと好みじゃないんだよな~。
「守護って、言われても僕は違いますよ」
「違わない」
精霊王とかそういうのも面倒なフラグにしか思えないし、早々にお引き取りして頂きたい。
「はいはい、分かった。
僕が蒼月だけど、それやる気ないから。
モブに徹して、一生平和に生きていきたいんだけど。
それに、自由恋愛で好きな人と愛し愛され、最期は同じお墓に入りたいんだよ」
守護者なら、僕の幸せを祈ってくれよ。
それに、蒼月だからってトラブルない方がお互いのためじゃん。
それに、貴方、嫌そうじゃない?
「ワタシハ、蒼月を守護するために来た」
「で?」
「まさか、こんな残念な子供だとは……
聞いてた蒼月は、類稀なる美しさを持った子だと言われていた」
何だよ、さっきまで片言だったのに、急に流暢に話しやがって。
「そう、僕ってもっさりなんで、守護の必要は無いかと思いますよ?
蒼月ってバレなければ、こんなのは狙われませんから」
少しだけ逡巡したあと、精霊王はそうだなって納得してた。
いよっしゃー!!
「私も、綺麗な子なら守護のしがいもあったんだが、お前なら問題ないだろ。
これでお役御免だ、良かった、良かった」
「随分、最初と雰囲気変わりましたけど?」
「雰囲気とかシチュエーションとか大事だろ?
お前もそんなもっさりしてなかったら、蒼月ってだけでもモテた人生だったと思うが、残念だったな。
宝の持ち腐れだろうし、この世界が荒れないでくれるのは助かるしな。
まぁ、せいぜい平和に生きてくれ。
一応、精霊界は中立って事で確認した」
大分失礼な奴だな。
苦笑いしながら蒼月ってものが何かだけでも聞いておこうと尋ねると、この世界の聖なる力を発動する人物だとか。
聖なる力って、そんなに必要な物でも無さそうだけどな。
「じゃ、元気で」
「守護とか言ってんのは精霊王だけ?
もし他にもいるんだったら、こんなもっさりな小僧だから必要ないって伝えといてな」
「あぁ、そうだな。
聖獣も守護者だし、あと、敵は魔王か」
え?ここそんな人物設定無いよね?
「魔王なんていないですよ~」
「蒼月が美しければ、その人物を欲した者が武力を駆使するかで魔王にもなる。
だが、これでは食指も動かんだろう。
魔王は出現しない事がはっきりしたな。
ある意味、お前は平和に貢献したぞ」
ちょっと、大分失礼だよね、アンタ。
まぁ、これで蒼月のフラグが折れるなら、それに越したことはないしね。
さぁ、お引き取りして頂こう。
「あ、じゃぁご足労いただいてしまって申し訳なかったから、これお土産にどうぞ」
あいつらに出したツマミ仕様とは別に、おやつとしてガーリックを抜いたナッツの砂糖掛けを作っておいたから、それを渡した。
「ん?」
「あ、気が向いたら食べてみてください」
「あぁ、ありがとう。
ではもう会うこともないだろうが、幸せにな」
そう言って精霊王は消えて行った。
ふ~、やった。
これで蒼月フラグ回避できただろう。
安眠を妨げられたけど、その程度の犠牲で僕の人生が明るくなったんなら、安いものだと布団に入り直して眠りに落ちた。
28
お気に入りに追加
2,336
あなたにおすすめの小説
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる