モブですけど!

ビーバー父さん

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「ラグの可愛い成長も確認できましたし、さぁ、お昼寝しましょう」

 可愛い言うな!
 でも温泉に入って、疲れがどっと出て瞼はくっつきそうだった。

「セバス、寝るよ」

「はい、ラグ
 お休みなさい」

「んん、ダメ、一緒にお昼寝しないと、ダメ
 セバスだって寝てないんだから、もう、は、やく…
 すぅ、すぅ」

 途中でセバスチャンの袖口を掴んだまま眠りに落ちてしまった。




「ちょっと、ねぇちょっと!!」

 このパターンって、もしかしなくてもオネェ神様だな。

「寝かせてくれ、呼んでない」

「ひっどーい!!」

「もう、何ですかね?」

 なんかオネェはモジモジしながら、あのね、と続けた。

「これはね、その、スキルを与えたあたしの責任でもあるから加護として教えるんだけどね。
 千尋ったら記憶操作しちゃったでしょ?
 それで、齟齬が出て、いわゆるバグね、それで、その、色々辻褄合わせようとしたんだけど、魔力の強いあの教官の記憶が戻っちゃってね。
 でもでも安心して! 
 彼、千尋の事を国に報告してないから!
 ただ、個人的に探し回ってるだけなのよ」

「個人的にって、まさか、攻略対象?」

「う~ん、設定にはいなかったけど、千尋の魔力とか頭脳に惚れちゃった?感じ?」

「頭脳も魔力もスキルじゃん!」

「そうなのよね~」

 マッチョなオネェ、しかも胸毛付きがコテンとか首を傾げても…。
 んん、言っちゃいけない言葉だ。
 
「容姿じゃなくて心底ほっとしたわ。
 魔力は隠す、頭脳は自分の店の為に使うから知らん!
 僕より頭のいい奴(ちゃんと素がね)なんて一杯いるし。
 二十歳過ぎれば普通の子って諺があるんだ、適当に流すよ」

「そぉ?
 そう言えば千尋ったら、イケメンとお風呂でイチャイチャしちゃってぇ~」

 ちょっと!!どこで見てんの、どこで!!

「してないよ、だってそういう事した後に捨てられるの怖いもん」

「あ、ごめんね。
 そっかー、じゃぁ、そのトラウマ克服と言うか
 少しでも留飲を下げるために教えてあげる。
 千尋の元カレのアレ、自分の子供じゃなかったのよ。
 彼女の浮気現場に遭遇しちゃって発覚したの。
 托卵ってやつよ。
 自業自得ね」

 あれだけ自分の子供がって言ってた奴だし、ショックだっただろうな。

「そっか、そうだったんだ。
 まぁ、今となっちゃどうでもいいし。
 それに、父上の為に店を成功させてやらなきゃいけないんだ。
 いつか、店に食べに来てもらって、美味いって言わせたいんだよ」

「千尋っていい子よね~。
 ちょっと抜けてるけどね。
 まぁ、頑張んなさい」

「ありがとう、神様」

「いいのよん、千尋の為だもん」

 語尾のハートが紫色から真っ赤なハートに見えて来たわ。




 神様が夢に出てくると、どうしてもぐったりと疲れてしまう。
 ふと、覚醒しそうな感じで寝返りを打とうとしたら、目の前にセバスチャンの寝顔が!!!
 お約束だけどさ!!
 まつ毛長!!
 そして、しっかり抱きしめられて寝てました。
 これもお約束だな。

 ありがとう、BLゲーム設定!!

 セバスチャンの髪とか触った事無かったな。
 いつもどんな時もしっかりセットされて、隙の無い執事だったし。
 柔らかい黒髪で、もっと堅い髪質なのかと思っていたのに、意外と猫っ毛だった。

 きっと凄いスキルを持ってるんだろうな。
 いつでもサッと熟してるし、お風呂で見た時の体は綺麗な筋肉で腹筋はシックスパックだったし。
 胸なんか程よく隆起していて、ドキドキした。
 今までいるのが当たり前で、セバスチャンはセバスチャンだって感じで深く知ろうとしなかったかもしれない。
 BLゲーム設定の美形に僕はすっかり魅了されて、セバスチャンの寝顔と寝姿を堪能したんだ。

「ラグ、もう充分ですか?」

「へっ!?」

「もっと触って良いんですよ?」

 まさか、最初からバレてた?!
 凄い間近で見つめられて、眩暈がしそうだった。
 セバスチャンの瞳は黄色だと思ってたんだけど、どちらかと言うと金に近いような感じで、今更魅入ってしまって恥ずかしくなった。

「セバス、いつからだ?」

「最初からですよ?」

「起きてたなら、言ってくれ
 凄く恥ずかしい事をしたじゃないか」

 真っ赤になるし嫌な汗をかいて、しどろもどろになった。

「寝るときに、ラグが袖を掴んで離さないから
 抱きしめてあげました」

「あ、あ、あ、それは、その、すまなかった
 ちゃんと、寝れなかったよな、ごめん」

「素晴らしく幸せな時間でした。
 こんなに愛しい子と一緒に寝られて、可愛い寝顔に抱きついてくる体の感触、もう昇天しそうでした」

 はぁはぁ言ってる。
 そうだ、こいつはちょっと変態だった。

「そ、そうか、良かった。
 じゃぁ、起きて街の食堂のリサーチでも行くか?」

「お体は大丈夫ですか?」

「あぁ、寝たらスッキリした」

 神様に邪魔された睡眠だけど、心が軽くなってたからいいさ。
 
 起きて僕はもっさりしたモブの支度をすると、セバスチャンは貴族然とした服装に着替えていた。

 やべ、かっこいい。

 

 
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