モブですけど!

ビーバー父さん

文字の大きさ
上 下
12 / 219

12

しおりを挟む

「ラグの可愛い成長も確認できましたし、さぁ、お昼寝しましょう」

 可愛い言うな!
 でも温泉に入って、疲れがどっと出て瞼はくっつきそうだった。

「セバス、寝るよ」

「はい、ラグ
 お休みなさい」

「んん、ダメ、一緒にお昼寝しないと、ダメ
 セバスだって寝てないんだから、もう、は、やく…
 すぅ、すぅ」

 途中でセバスチャンの袖口を掴んだまま眠りに落ちてしまった。




「ちょっと、ねぇちょっと!!」

 このパターンって、もしかしなくてもオネェ神様だな。

「寝かせてくれ、呼んでない」

「ひっどーい!!」

「もう、何ですかね?」

 なんかオネェはモジモジしながら、あのね、と続けた。

「これはね、その、スキルを与えたあたしの責任でもあるから加護として教えるんだけどね。
 千尋ったら記憶操作しちゃったでしょ?
 それで、齟齬が出て、いわゆるバグね、それで、その、色々辻褄合わせようとしたんだけど、魔力の強いあの教官の記憶が戻っちゃってね。
 でもでも安心して! 
 彼、千尋の事を国に報告してないから!
 ただ、個人的に探し回ってるだけなのよ」

「個人的にって、まさか、攻略対象?」

「う~ん、設定にはいなかったけど、千尋の魔力とか頭脳に惚れちゃった?感じ?」

「頭脳も魔力もスキルじゃん!」

「そうなのよね~」

 マッチョなオネェ、しかも胸毛付きがコテンとか首を傾げても…。
 んん、言っちゃいけない言葉だ。
 
「容姿じゃなくて心底ほっとしたわ。
 魔力は隠す、頭脳は自分の店の為に使うから知らん!
 僕より頭のいい奴(ちゃんと素がね)なんて一杯いるし。
 二十歳過ぎれば普通の子って諺があるんだ、適当に流すよ」

「そぉ?
 そう言えば千尋ったら、イケメンとお風呂でイチャイチャしちゃってぇ~」

 ちょっと!!どこで見てんの、どこで!!

「してないよ、だってそういう事した後に捨てられるの怖いもん」

「あ、ごめんね。
 そっかー、じゃぁ、そのトラウマ克服と言うか
 少しでも留飲を下げるために教えてあげる。
 千尋の元カレのアレ、自分の子供じゃなかったのよ。
 彼女の浮気現場に遭遇しちゃって発覚したの。
 托卵ってやつよ。
 自業自得ね」

 あれだけ自分の子供がって言ってた奴だし、ショックだっただろうな。

「そっか、そうだったんだ。
 まぁ、今となっちゃどうでもいいし。
 それに、父上の為に店を成功させてやらなきゃいけないんだ。
 いつか、店に食べに来てもらって、美味いって言わせたいんだよ」

「千尋っていい子よね~。
 ちょっと抜けてるけどね。
 まぁ、頑張んなさい」

「ありがとう、神様」

「いいのよん、千尋の為だもん」

 語尾のハートが紫色から真っ赤なハートに見えて来たわ。




 神様が夢に出てくると、どうしてもぐったりと疲れてしまう。
 ふと、覚醒しそうな感じで寝返りを打とうとしたら、目の前にセバスチャンの寝顔が!!!
 お約束だけどさ!!
 まつ毛長!!
 そして、しっかり抱きしめられて寝てました。
 これもお約束だな。

 ありがとう、BLゲーム設定!!

 セバスチャンの髪とか触った事無かったな。
 いつもどんな時もしっかりセットされて、隙の無い執事だったし。
 柔らかい黒髪で、もっと堅い髪質なのかと思っていたのに、意外と猫っ毛だった。

 きっと凄いスキルを持ってるんだろうな。
 いつでもサッと熟してるし、お風呂で見た時の体は綺麗な筋肉で腹筋はシックスパックだったし。
 胸なんか程よく隆起していて、ドキドキした。
 今までいるのが当たり前で、セバスチャンはセバスチャンだって感じで深く知ろうとしなかったかもしれない。
 BLゲーム設定の美形に僕はすっかり魅了されて、セバスチャンの寝顔と寝姿を堪能したんだ。

「ラグ、もう充分ですか?」

「へっ!?」

「もっと触って良いんですよ?」

 まさか、最初からバレてた?!
 凄い間近で見つめられて、眩暈がしそうだった。
 セバスチャンの瞳は黄色だと思ってたんだけど、どちらかと言うと金に近いような感じで、今更魅入ってしまって恥ずかしくなった。

「セバス、いつからだ?」

「最初からですよ?」

「起きてたなら、言ってくれ
 凄く恥ずかしい事をしたじゃないか」

 真っ赤になるし嫌な汗をかいて、しどろもどろになった。

「寝るときに、ラグが袖を掴んで離さないから
 抱きしめてあげました」

「あ、あ、あ、それは、その、すまなかった
 ちゃんと、寝れなかったよな、ごめん」

「素晴らしく幸せな時間でした。
 こんなに愛しい子と一緒に寝られて、可愛い寝顔に抱きついてくる体の感触、もう昇天しそうでした」

 はぁはぁ言ってる。
 そうだ、こいつはちょっと変態だった。

「そ、そうか、良かった。
 じゃぁ、起きて街の食堂のリサーチでも行くか?」

「お体は大丈夫ですか?」

「あぁ、寝たらスッキリした」

 神様に邪魔された睡眠だけど、心が軽くなってたからいいさ。
 
 起きて僕はもっさりしたモブの支度をすると、セバスチャンは貴族然とした服装に着替えていた。

 やべ、かっこいい。

 

 
しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...