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しおりを挟む僕はこの世界をゲームとしか見ていなかったんだ。
父上の分かりにくい思い遣りとか、気持ちとかより自由恋愛の堂々と同性結婚が出来るとか、そんな事にしか目を向けていなかったんだ。
オネェ神様も言っていた。
生きている人の感情や考え方まで左右出来ないって。
なのに、僕はなんて事をしてしまっていたんだろう。
「ラグノーツ様、気に病むことは無いですよ?
旦那様、ラグノーツ様が店を出したらフランチャイズにするって言ってましたし。
そこはホラ、旦那様ですからねー?」
セバスチャンはニコニコしながら、父上の計画を暴露してくれた。
「なんだよ、それ!」
擦りすぎて腫れ、開かなくなった目を細めて、僕は笑った。
なら、絶対に成功させなきゃ、って腹に力を込めた。
「今日は着いたばかりですし、ゆっくりお休みください」
平民になったのだから、執事ではおかしいとセバスチャンに言うと、正式に自分が後見人として登録されているからと、少し斜め上の答えが返って来た。
「後見人なら尚更、僕のお世話はおかしいよ。
逆に、僕がしなきゃいけない立場だ」
「ふふ、そうですね。
でも、そのお顔を見たら、ぷぷ、お世話をせずにはいられませんよ」
泣きすぎて腫れた目は開かないし、擦りすぎて真っ赤になった目と鼻と頬は痛々しい程だった。
「なら、せめて様はやめてくれ。
ラグと呼んで欲しい」
「畏まりました。
ラグ」
結局、セバスチャンは呼び方を変えただけで、態度は執事のままだった。
「少しお昼寝して下さい。
船で、何やら興奮されていらっしゃったようですし、平民用の船室は広間の様な場所で雑魚寝でしたから、お疲れになっていますよ。
私も、あそこでラグを守るのに気を張りましたから」
え!?いつあの場所にいた?
守るのにって、三日は確実に寝てないじゃん!
「バカ!
セバスが寝ろ!」
「ラグを放っておけませんから、大丈夫ですよ」
もう、何で!
父上といい、セバスチャンといい、過保護すぎるんだよ!
「分かった、なら、僕に添い寝してくれないか?」
セバスチャンを寝かせて、僕も眠れて勝手に働かないようにするにはこれしかない。
前世なら下心満載だっただろうけど、今はまだそう言った事には余裕がないし、セバスチャンなら大丈夫だろ。
「ラグ、良い、のですか?」
「お互い、疲れたよな。
少しだけ、寝よ」
腫れた目を冷やさないと。
治癒魔法、使った方がいいかもしれない。
「ラグ、先ずはお風呂に行きましょう。
潮臭いですし、海風で髪もお肌も痛んでますしね」
あー、船では入ってないから臭いよな。
「先にセバスチャン入って来て。
僕はもう少しこれからの計画を考えるから」
「ラグより先には」
「もうさ、主従関係はやめようよ。
僕は平民としてこれから生きるし、父上とセバスのお陰で、食堂のノウハウは身につける事が出来たんだし、これからは……そうだ親戚みたいな感じで、付き合えたらと」
「親戚、ですか?」
「うん、従兄弟のお兄さんみたいな」
ずっと幼い頃の最初の記憶は既にセバスチャンがいて、物心ついた時に僕はセバスチャンが家族だと思っていた。
だから、従兄弟とかだと丁度良い気がしたんだ。
「分かりました。
では、一緒に入りましょうか。
従兄弟のお兄さんとしては、ちゃんとラグが一人で頭や体を洗えてるか気になりますからね」
「え?一緒はいいよ。
もう恥ずかしいし。
それにゆっくり入って、疲れを落としなよ?」
この世界、イケメンばかりで僕のすけべ心が騒ぐじゃないか!
まだ、ちょろっとしか下の毛が生えてなくて恥ずかしいし!
これって、チョロよりツルピカの方が恥ずかしくないと思うんだよね。
中途半端なこの時期は、思春期に入る微妙な男の子の大事な時だと思うしさ。
「ラグが赤ちゃんの時からお世話をして、小さなおちんちんも、全て知ってますから今更恥ずかしがらなくて良いですよ?」
「は?なにそれ、デリカシー無いよ!」
確かに赤ん坊の頃からって分かってるけど!
小さいとか言わないでよ!
まだ成長途中なんだから!
「ふふ、すみません。
でも、一緒に入っちゃった方が経済的ですよ?
これから、入り用になる事もありますし」
ぐっ、確かに正論だ。
ギリギリセーフ、なのか、これ?
いやいや、セーフも何も、家族みたいなものだしな。
「セバス、こんど小さいって言ったら口聞かないからな!」
「では、入りましょう!」
んん?何だか選択を誤った気がするのは、気のせいだろうか?
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