モブですけど!

ビーバー父さん

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 目覚めたらゲームの中の世界って……。
 しかもモブ。
 まぁ、元々断罪とか悪役とかいるゲームじゃなかったしな、モブはモブでこの世界観で生きていくのは良いんじゃないだろうか?
 自由恋愛、同性同士の結婚も認められていて、こんな良い世界またと無いじゃないか!
 前世ではクソ最低な涼みたいな奴と付き合ってバカだったけど、この人生では絶対好き合った相手と一生を共にするんだ!
 そう思ったら、ロシアスに捨てられる前にさっさと捨てないと!
 捨てられるなんて前世で十分だわ。

「ラグノーツ!すまなかった!
 私が未熟でお前の頭に木剣を!」

「私も教師でありながら、弾く方向を確認もせず、そのご尊顔に傷が残ってしまっては!」

 王子と教師の騎士が立て続けに謝罪を述べているけど、そんなのはどうでも良かった。
 自由に生きる為の布石を打とう。
 今十歳、中身は社会経験も豊富な成人男性なんだ。
 頭の傷って大げさに血が出るから、包帯でぐるぐるだし、傷がどの程度か分からないけどこれを利用しない手は無かった。

「あ、ぁ、僕、僕、こんな傷があっては、王子の婚約者にはなれません
 騎士様もこれが僕の運命だと思って、気にしないでください」

 これで婚約破棄をして頂きたい!
 モブでも名前が付いてて、可愛いというスキルがあって、最高じゃね?
 もしかしたらすごい傷が残るかもしれないけど。

「ラグノーツ!そんな!
 …私の責任だ!
 っ、婚約者としてちゃんと結婚しよう!」

 え!!困る、こんな傷、男なら大したことないんだし!
 大体、子供の頃の傷なんて薄くなるもんだ。
 それに、僕の姿を見て言い淀んだくらいだし、婚約破棄でいいじゃない!

「僕、ロシアス様の隣に並ぶと思うと、悲しくなります。
 だから、どうか、もっと素敵な方を見つけてください。
 お願い、お願いですから、こんな醜い僕を、どうか捨て置いてください!」

 アカデミー賞にノミネートされる自分をイメージした。

「ラグノーツ、そんな……」

「僕ではもう、王子の横に立つ伴侶には役不足です」

 声を殺して泣いてみた。
 もちろんウソ泣き。
 
「ラグノーツ様、では私が貴方をお嫁に頂きたい」

 騎士が余計な事を言うし、ちょっと待ってよ。
 この世界美形ばっかりなんだから、他に行こうよ、他に。

「いえ、僕は平民になって、独りで生きて行こうと思っていますから
 騎士様はお気になさらずに」

 貴族のままだと、何かとめんどくさい。
 平民になって庶民の自由恋愛を堪能したいんだって!

「ラグノーツ、この話は父上と公爵に許可を得てからしよう」

 そう、醜くなった僕は、王子にとって何の価値も無くなったんだから、それでいい。
 十歳の僕はこの先平民になるために、やるべきことがあるのだった。
 この世界のご飯は砂を噛む様なものばかりで、はっきり言って美味くない!
 これからは料理人になって胃袋を掴む人生を選ぶことにするには、食材探しとか他の国の調味料とかを探すために、語学の勉強や諸国の習慣や歴史を勉強しないといけないんだから、王子とかに構ってはいられないのだった。

「治療をありがとうございました」

 さて、帰って色々準備しないと。

「ま、待て、今、治癒師が来る。
 治癒魔法で傷を少しでも!」

 王子が引き留めた。
 何ですって?!
 この世界、魔法とかあるんかい!!
 いや、傷の事で婚約破棄なんだから、治さないよ!

「ラグノーツ様、治癒師は非常に希少ですから」

「僕ごときにそんなお力を使わせてはいけません!! 
 本当に必要な方に、そのお力を使うべきなんです」

 逃げるしかない!
 
「家で療養しますので、これで失礼します」

 公爵家の息子なのに、護衛一人ついてないなんて、そりゃぁこっちも四男だしな。
 モブもモブ。
 家から乗って来た馬車に乗り込んで、脱兎の如く逃げ出した。

 馬車の中で、今までの事を思い出しながら慎重にこれからの事を考えた。
 今、十歳ならあと二年で学校に行かないといけなくなる。
 貴族や富裕層の市民なんかが通う学校で、六年間もある。
 ただ、スキップも出来る。
 スキップする為には、それだけの頭を作らないといけない。
 モブとはいえ、生きてる以上はより良い自由恋愛の為に、努力はしないといけなかった。

「あと二年で、六年分の勉強をして学校に行かなくても良い様にしないと」

 それと言うのも、このゲームは第一期が学校での攻略がメインだからだ。
 当然、第二期、第三期と続いているようだけど、僕に関係あるのは学校生活だった。
 攻略対象との出会いは、殆どが学校内での事だからだ。

 僕はモブだし関係ないから、自分の人生の為にも、早々にこのステージから離脱したいのだ。
 そして、王子に捨てられるのも学校に入ってからだったはずだけど、いま、婚約破棄に持って行ってるから、シナリオのバックグラウンドよりは多少早いけど、僕にとっては死活問題だから、そんなの関係ねー!だ。

 大体、ゲームやってないしな!




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