【年の差男女】セーラー服の融解点

りつ

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セーラー服の融解点

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 彼女の唇は、菓子箱と同じ赤色をしていた。口元についたチョコレートを見せつけるように舐める。人工的な赤。
(勿体ないな)
 彼女くらいの年頃ならば、化粧など必要ないと思う。頬も、唇も、ありのままで朱を差したように色づいている。
 僕は誰よりもそれを言ってはならないのだろう。
「そんなに駆け足で、大人にならなくて良いんだよ」
 案の定、彼女は顰めっ面をする。
「やだ。あたし大人になる」
「嫌でも大人にはなる。子どもの時間は大事にしなくちゃ」
 彼女は頑なに首を横に振った。
「二度と、エンコーとか、言われたくない」
 僕が彼女のモラトリアムを早送りする。
(それは不本意で、だけど)
 もしかしたら彼女のなかで一生消えない傷になる。
 大人になった彼女に置いて行かれることを、大人の僕は想定する。拙いマニキュア、アイラインの滲み、はみ出した口紅にキスをした。子どものころ食べたポッキーの味がした。


(了)
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