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百合

1.すてて、すてて、きりすてて。

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すてて、すてて、きりすてて。こまかく刻んでしまいたい、そういうときは自炊を控える。玉ねぎをみじん切りにした端から指の先まで刻んでしまいそうになるから。丁寧に研いだ刃で、思いきりよく爪を、ダン。骨を、ぎちぎち。「どうしてご飯、作らないの」上手なのに。美味しいのに。あどけなく首を傾げる。「切って捨てたくなるんだよ」「なあにそれ」口に手を添えて、くすくす笑う。誰かのために整えられたその爪も、ダン。「いけない。時間だわ」襞の深いスカートが翻る。「今度は何か食べさせてよね」今度っていつさ、想像する。抱きそうになる期待をすてて、すてて、きりすてて。180803
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