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246.赤くなったところが見たい小話(ダーウィンの日)
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「湊」
ふと晴海が呼んだ声が真摯だった。湊は顔を上げ、耳を澄ます。晴海の黒くてつやつやとした瞳に湊が写っている。晴海はゆっくりと目を細め、口を開いた。
「オレ、湊のことスゲー好き」
(うわ)
極上の声と笑みで、晴海は告げた。「好き」という言葉は幾度となく交わしているしその全てが本当であると知っている。けれど湊の心臓の柔らかいところを狙い澄ましたような、覿面に刺さる発露の仕方というものはある。湊はじわじわと赤みを帯びる頬をどうにもできなかった。
「湊、かっっわいいことになってる」
「ずるいなあ……僕、鉄面皮で売ってるのに」
「そんなことあったか?」
「そう思うのは晴海だからだよ。……ね、どうしたの? すっごい照れる」
「ふふん。チャールズ・ダーウィンの著書に曰く」
――赤面の表情は、もっとも特有で、もっとも人間らしい感情表現である。
晴海は授業で教師が話していたという『人及び動物の表情について』の一説をそらんじる。その顔が見たかった、と満足げに笑った。
(了)220212
ふと晴海が呼んだ声が真摯だった。湊は顔を上げ、耳を澄ます。晴海の黒くてつやつやとした瞳に湊が写っている。晴海はゆっくりと目を細め、口を開いた。
「オレ、湊のことスゲー好き」
(うわ)
極上の声と笑みで、晴海は告げた。「好き」という言葉は幾度となく交わしているしその全てが本当であると知っている。けれど湊の心臓の柔らかいところを狙い澄ましたような、覿面に刺さる発露の仕方というものはある。湊はじわじわと赤みを帯びる頬をどうにもできなかった。
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「ずるいなあ……僕、鉄面皮で売ってるのに」
「そんなことあったか?」
「そう思うのは晴海だからだよ。……ね、どうしたの? すっごい照れる」
「ふふん。チャールズ・ダーウィンの著書に曰く」
――赤面の表情は、もっとも特有で、もっとも人間らしい感情表現である。
晴海は授業で教師が話していたという『人及び動物の表情について』の一説をそらんじる。その顔が見たかった、と満足げに笑った。
(了)220212
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